第25話 神饌前夜
府中刑務所から脱獄した囚人たちはアミュ真仙教のメンバーらによってアジトへ招かれた。
その中に伊龍の姿が見られる。
ずっと囚人服を着ている訳にはいかないということで、みんなビジネススーツを着ていて身なりが整っていた。
コンサートホールのような会場でそのステージに一人の男が立っていてスポットライトがその男に集まった。
まるで企業の入社内定式が行われるような雰囲気だ。
ステージに立っている男の髪型は長髪で虹色をしていて奇抜だった。
服装は高級なスーツを着ていた。
赤城「やあ諸君!アミュ真仙教へようこそ!」
赤城「私は神だ!」
伊龍「な!なんだあの男は?」
会場内はざわついた。
会場内にいる伊龍たちは犯罪歴もあり変わり者で集められた集団だが彼らの目の前に立つ男は凄まじいほど異彩を放っている。
赤城は自己紹介の時はいつも決まって自分は神だと言うそうだ。
「はは~アミュ様!!」
中にはアミュ様と言ってステージに立つ男を崇拝する者たちがいた。
伊龍「なんだよあいつら?サクラか?」
サクラとはあの桜ではイベントを盛り上げるための雰囲気作りをする者で偽客である。
伊龍「そういえばアミュ様ってあのおっさんが言ってたな。あの男がリーダー?」
茂田井との話を思い出し、ステージに立つ男がこの組織の首謀者であると気づいた。
アミュ様こと赤城真弥を崇拝する連中は蔵冨興業の殺害事件の犯人たちでありこの組織と深い関わりがあるのだ。
赤城「ここに集められた者たちは神に選ばしもの。神の眷属になるに相応しい者たちなのだ!」
赤城「檻に閉ざされし地獄の番犬解き放つ者よ神風とならん。」
赤城「君たちは神の意向によって救われたのだ。そして神は君たちにこう告ぐ!」
赤城「勇気ある者よ!神の名のもとに世界を正しき秩序に導かん!」
「何言ってんだ?」会場内の人たちは再びざわつく。
頭に浮かぶのは「?」の文字しかない。
赤城「君たちは事前に同胞たちから聞いているはずだ。」
「あ~そういうことね。」
アジトに来るまでの間にメンバーから組織の計画の協力することを約束している。
そのことを承知で伊龍たちはここに来ている。
しかし伊龍は
伊龍「もし断ったらどうなるの?」
伊龍(どうせ従わないのなら殺すとか言うんじゃないかな?)
何の返事が来るかわだいたい予想はしているが伊龍はこの男が組織の上に立つ者の器があるかどうか試している。
赤城「怖いのかい?確かに気持ちはわかるよ。」
赤城「逃げても構わないよ。我々が目指す道は決して緩やかで平坦ではない。地獄そのものだ。」
赤城「ここまでの間に多くの犠牲があった。」
赤城「きっと命の保証はないと思う。」
赤城「どうか!世界の平和と正しき秩序のために我々と共に尽力してほしい!頼む!」
赤城は会場にいる人たちの前で深くお辞儀した。
長い筆で一筆入魂するがごとく虹色の長髪がなびき垂れる。
それを見て唖然とする伊龍たちだがサクラたちは盛り上げようとする。
「お顔をお上げください!恐悦至極に存じます!」
「私共はアミュ様のご決断があったからこそ生きながらえたのです!」
「いついかなる時も我々はアミュ様と共にあります!」
「この命!アミュ様に捧げると誓います!」
「アミュ様!万歳!万歳!」
赤城「ああ…嬉しいぞ!!これほどまで私に賛同する者がいて…」
赤城「これも神から与えられた運命なのだな…」
「万歳!万歳!万歳!」赤城「万歳!万歳!」
赤城も万歳した。
勝手に話が進んでしまいそうだ。
面白みのない演説も興味関心のない話題でもこのようにサクラのようなものが強引に盛り上げさせることができる。
組織の勧誘または計画の参加を断ったらどうなるのかの返事に赤城は逃げても構わないと言ったのは驚きだ。
家入とは全く正反対の回答だった。
組織の勧誘において家入と伊龍たちとは性質が違う。
伊龍たちは元から犯罪者だからで警察に追われる身となっている今
断りアジトから出れば逃亡生活を強いられるデメリットがある。今度捕まれば死刑だろう。
危険と隣り合わせの任務を行うこともデメリットにはなるが組織内で身を固められるのはメリットになる。
郷に入っては郷に従った方がましなのだ。
赤城はそれを知っていての受け答えだったのだ。
助けてくれたこともあり断る理由は一切ない。
犯罪者でも一応義理人情はあり恩を仇で返すような薄情なことはしないようだ。
部下「アミュ様準備ができました。」
赤城「ご苦労、つけてくれ」
赤城「さあ我々はこれからこの国に対し宣戦布告する!今その宣言をする!」
会場は暗くなりステージの壁にプロジェクターを直接投影した。
そこに映っているのは黒いフードをかけた男性だ。
その男は喋りだした。
「我々は『アミュ真仙教』である!」
「我々はアミュ神を信仰し、代弁者としてこの世に集いし者である!」
「この腐った世の中を正すため、我々は行動を起こす!」
「アミュ様はお怒りだ。これ以上犠牲者を出したくなければ50兆円を我々に捧げよ!」
「もしもアミュ様の怒りを鎮めることができなければ…」
映像が変わり天井に吊るされている人質たちが映った。
「アミュ様の神饌は東京タワーで行なう。50兆円を用意しておけ。さすれば人質を解放してやろう!」
そして再び男が映像に映り込む。
「ただし来るのは一人だけだ。」
「警視庁巡査、安田和朝だけ来い。他の誰かを連れてくれば彼らの命はない。」
そして映像を消え会場はまた明るくなった。
赤城「どうだい?すでに我々は政府に一石を投じている!」
赤城「今君たちの勇気を試される時がもうすぐやってくる!」
赤城「今こそ我々と共に失われた日本の誇りを取り戻そう!」
映像で犯行声明を出した役は林であった。
赤城(まさか警察一人を手玉に取るとは流石だ。滝川殿よくやった…)
赤城はとてもご満悦だった。
警察の林は人質がいるため従わざるを得なかったのだ。
明日50兆円を警察側が用意してこの取引は成立するのだろうか。
林が犯罪組織アミュ真仙教と繋がりがありメンバーであることが発覚し
彼と同じ所属の宇田川交番勤務に常駐する職員たちは連帯責任として招集された。
安田と吉永も彼らと一緒にいる。
警察が反社会的勢力と裏で繋がっていたのだから上はお怒りである。
疑いの念が熊谷たちに向けられるのは当然で業務遂行している傍らで彼の異変に誰一人も気づけなかったのだ。
警察庁長官の鬼頭は林の処遇について処分を下した。
鬼頭「本日をもって林秀人を懲戒処分とする。」
鬼頭「反社と関りがあったとして重要指名手配犯として取り扱う。」
熊谷「ちょっと待ってください!鬼頭上官!林は裏で組織と繋がってるなんてありえません!」
井上「私も同じく!林先輩は職務を全うし住民たちの声を真摯に耳を傾け親切に接する、警察として正しい行いをしておりました!」
井上「先輩は私にとって尊敬に値する手本となる警察です!」
井上「あの人が反社と繋がっているわけがありません!」
井上は林の後輩で彼のことを尊敬している。
他の職員の発言からも林は何も怪しい素振りなど一切しておらず仕事を真面目にこなす由緒正しき警察官であると話す。
そのため元から反社に加担していたことを否定している。
あんな林が警察ないし国に恨みを持つほどの動機は何一つ見つからないのだ。
林には功績もあり彼がいなければ解決できなかった事件もあった。
吉永「鬼頭上官!彼を処分するのは早計だと思われます。」
安田「吉永…」
吉永は氷魚の日記を出した。
鬼頭「なんだこれは?読めないな…」
鬼頭はペラペラと日記のページをめくるが字が読めない。
吉永「蔵冨興業殺害事件で殺された土屋氷魚の遺品です。」
吉永「これを署に出したのは林です。」
鬼頭「ふむ…なるほど。これが捜査に需要な物ということか。」
吉永「はい。これが今回の事件に関わる情報が書かれております。」
鬼頭「林は反社に加担していないという裏付けか?」
吉永「はい。その通りでございます」
そして途中ではあるが吉永と解読班が解読し要約した書類を提出した。
しっかり今回の事件と関与しているものが書き込まれていた。
吉永がこれを提出した理由は林が裏切っていないことを証明するためそして林は今回も事件解決の糸口を示しているということを伝えるためだ。
鬼頭「この出所は?」
熊谷「土屋氷魚の遺族の土屋花という方が宇田川交番に伺いその日記を林が受け取りました。」
吉永「土屋花?あ!!彼女は今どこにいますか?」
井上「林先輩の住居に居候していると話では聞いております。」
井上「彼女は兄と二人暮らしだったことなので、それで先輩は見かねて…」
吉永「ということは今、林さんの住居に住んでいるのですね。」
安田「どうしたんだ吉永?」
吉永「氷魚の日記には彼女についてのことが書かれていました。」
鬼頭「それには何て書いてあったんだ?」
吉永「彼女はアミュ真仙教側についていました。内容ではアミュ真仙教は首謀者は赤城と書かれていました。」
吉永「彼女はその赤城という男に好意を持っておりました。」
アミュ真宣教の首謀者の名前は時点で赤城と決まったがまだ顔などはわからない。
安田「なんだと!そういうことは林は騙されていたってことか!」
井上「あの女が先輩のやさしさに付け込んだんですよ!きっと!そうに違いありません!林先輩は無実です!」
井上「人質を使って弱みを握られたんです!」
映像に映っていた人質たちは渋谷事件の瓦礫を撤去を担当していた神泉町の消防隊員だ。
その署の消防隊員の中に林の友人がいる。
鬼頭「だからといってあの男を放免するのは腑に落ちん。」
鬼頭「ここまで陥ってしまった事態を誰が責任を取る?」
鬼頭「人質の中にあの男の知人がいると聞いたがそれは情報を漏らしてしまったということだ!」
鬼頭「奴は犯行声明で安田を指名した。」
鬼頭「つまり警察が犯罪組織と関わりを持っていたと世間から知れ渡ってしまうのだぞ!」
安田「く!」
警察の林なら人質がいるため思うようにいかず組織の言いなりとなり人質の解放を条件に加担してしまった説もあるが
逆に最初から裏切るつもりで組織側にいたという見方もできる。
あの犯行声明の映像は警察庁本部だけでなく都内各所で放送されてしまっている。
アミュ真仙教のメンバーの中に警察と関わりがあると知られてしまう可能性がある。
マスメディアがそれに気づき押し寄せ言及してくるかもしれない。
鬼頭「いかなる理由があれど法を犯してはいけない!警察として面目がたたなくなるぞ!」
林の懲戒処分は揺るがない。
法に従い、法の下に業務遂行する警察が法律違反することは断じて容認することはできないのだ。
鬼頭も安田たちの話から林の活躍や人柄などどのような男か理解しているつもりである。
重い決断ではあるが個々人の感情に振り回されてはいけない。
その言及には回答は差し控えなければいけないだろう。
正直に言っても犯罪組織の方に情報が漏れてしまっていることは述べねばならないので
どちらにせよ発言は慎重に言葉を選ばなければ信用を大きく損ねてしまうだろう。
鬼頭「奴の住居を家宅捜索するよう手配した。」
鬼頭「奴が情報を隠し持っているかもしれないからな」
どうやら林の住居を家宅捜索するそうだ。
組織の情報を隠し持っているかどうか調べるということだ。
鬼頭「もう男の話はこれ以上せん。問題は明日のことだ。」
これ以上林の処遇を議論している場合ではない。
明日の取引をどうするかだ。
50兆円を明日の10時までに用意するのは不可能だ。
お金を製造して用意するにしても1日で最大150億円ぐらいしか製造できない。それではとても間に合わない。
税金など国が所有する財源を充てにしても明日までには間に合わないだろう。
金を取るのか人質の命を守るのか、この場合だと人質を守る選択が当然だろうが
50兆円は国に大きく影響を及ばす額だろう。
そもそもその金額を渡してしまえば国のインフラが機能するだけでなく組織側が大きく優位に立たれてしまう。
組織側の一方的な取引だが応じなければ人質を全員殺すだろう。
命とお金を天秤にかけることを取引にする彼らは非常に残虐極まりない。
さらにそれを先ほどのように映像を流して見せしめにする気だろう。
本気でこの国を乗っ取るつもりだ。
鬼頭「奴らの要求を呑んでも吞まなくても最悪になることは変わらない。」
要求に答えれば国は大混乱してしまうが人質を見捨てればなぜ助けなかったのかそのような批判は避けられない。
鬼頭「別の方法を考える必要がある。安田だけでは荷が重い」
安田一人だけが取引の条件の1つだが大型車を使っても50兆円を持ち運ぶことはできない。
安田以外の誰かが同行すれば人質の命はない。
明日の取引に向けて人質を救うための会議が開かれることになるだろう。
時刻は20時、林たちがいる廃墟の施設にて
猿江と山本と竹原その他の仲間は人質として拘束した川代たちの見張りをしながら休息をとっていた。
川代たちは宙吊りされていたが今は一旦降ろしてもらえている。
しかし縄で縛られ拘束されたままだ。
猿江たちは川代たちを組織の勧誘してくる。
その都度川代たちは首を横に振って拒否している。
川代「何度言ったらわかる!俺はお前たちの仲間になるつもりはない!」
猿江「明日死ぬつもりか?」
川代「死んでも構わん!」
猿江「そうか好きにしろ。でもお前はどこかで助けがきてくれて救われるの待ってるんだろ?」
川代「そうだ!悪いか!」
猿江「当然っちゃ当然か。まあそっちに賭けたいよな。」
いっそ殺されてしまうなら味方になって生存したほうがいいかもしれないが
助かる望みがあるならそっちに賭けたいのは当然だ。
彼らの今後の人生に大きく左右されるため犯罪組織の仲間にはなりたくないはずだ。
この一食のためだけに犯罪者になんかなりたくはないし不当な扱いを受けてしまうなら
これぞまさに最後の晩餐みたいなオチになる。
同じく丸山たちも同じ態度である。
猿江たちはおにぎりや菓子パンなど食べて食事しているがそれを川代たちに見せつけている。
グ~と川代のお腹が鳴る。
捕まってから何も食べていないのでお腹が空いているのだ。
猿江「おう腹が減っているのか?」
猿江「腹が減っては戦はできんな~どうだ食うか?」
川代をからかい食べ物で釣ろうとしている。
彼らに従い組織に入れば縄を解いてもらい食事にありつけれるはずだ。
だがそれだと救いようのない未来が待っている。
反社に加担したという罪は一生付きまとう。
川代「い!いらねえ!!」
後ろを向いて強く目をつむった。
空腹に耐えて助けてくれるのを願い消防隊員としての将来を守った方が無難だろう。
川代(林…あいつはあの女と一緒にいるのか?)
川代(信じていいんだよな?)
今の川代たちは林のことを信じるしかないだろう。
そんな林だが花と二人っきりで実験室のような場所にいた。
部屋の中は薄暗い。
天井の8本の蛍光灯が部屋全体の明かりなのだが現在は2本しかついていない。
そのうちの1本は消えかかり点滅を繰り返している。
6本の蛍光灯は寿命が尽きてしまったのだろう。
点滅している1本の蛍光灯ももうそろそろ寿命が尽きてしまいそうだ。
生か死かこの2つの蛍光灯が林たちの置かれている状況を表しているかのようだ。
テーブルには食料が置いてあるのだが林は一口も口にしていない。
花「秀人…食べないの?」
林「いらない…お腹空いていないし…」
明日の不安と恐怖でお腹いっぱいで食欲がないようだ。
置いてある食料は猿江たちと同じものでコンビニで買ったようなおにぎりと菓子パンばかりであった。
花「私の手料理が食べたいのかしら?」
林「ふふ…そうだねなんだか恋しいかも」
林「ごめんね…」
花「え…?」
林「何も気づいていられなくて…。ずっと苦しんでいたんだね。」
花「何を言ってるの?」
林「君自身がお兄さんを殺したじゃなくて誰かが殺したんだよね?」
花「いや私が兄を殺したのよ!」
林「そうじゃなかったらあんな涙は流さない!」
林「ずっと弱みを握られていたんだね。」
林はまだ勘違いしている。
本当に花は兄、土屋氷魚を殺したのだ。
風俗店で働いていたの時に男を口説くために培ったものであの涙は単なる演技なのだ。
お人好しな林に花の胸を大きく締め付ける。
花「あなたはお人好しね。人を疑ったことないの?警察には相応しくないね。」
林「そうだね。俺のせいで家さんと川代たちまで巻き込れてしまった。」
林「せめて家さん川代たちをそして花を救いたい!」
花「なんで私まで…」
根から犯罪組織の色に染まった花まで林は救おうとしている。
林はずっと花を信じていた。
林の目に映る花はおしとやかで優しく温かくておいしい手料理ができるそんな人であると。
兄と二人で生活し一緒に支え合ったのだと思っている。
花「どうしてそんなに私に優しくするの?」
林「俺は花のことが好きだから!」花「う…!やめて…」
裏切られたはずなのに林の心は揺るがず花のことが好きでいる。
警察としての人生を引き換えに人質の救出のため犯罪組織の仲間に入ったが救いたい人の中に花も含まれていた。
ただのお人好しとは言い切れないほど彼の心は広大な大地よりも広い。
花の両親は彼女のことを愛情持って育ててくれたが両親がいなくなってから借金していたことがわかりその愛情は借り物だったと知る。
だから今まで花は誰かにここまで優しくされたのは初めてである。
林「昨日の夜だったね。君が俺のことや仕事について知りたいとか支えになりたいとか言ってくれたのがとても嬉しかったんだ。」
林「将来君とこんな幸せな生活をしていくんだろうなって思っていたんだ~」
花「やめて…」
花「それはただ…あなたを騙すための…」
林「今俺と二人っきりだから言うとね」
林「お兄さんの日記渡してくれたでしょ?あの日記には捜査に重要な情報が書き残されていたんだ。」
花「え!!」(なんですって!?)
林「あれは英語の筆記体で書いてあってわざと汚くして読めないようにしたんだと思うんだ。」
林「君の兄さんは奴らの悪事を暴くためにそして君を守るために命がけでこの日記に真実を書き記していたんだよ。」
花は読めない落書きだと思っていたがそれは意図して書いてあったものだった。
花の兄、土屋氷魚は組織にとって不都合な存在であることは花自身も知っている。
借金の全額返済を報酬とし氷魚の殺害の依頼を受けたのは花本人で、妹自らの手で兄を殺害してしまったのだ。
それは事実である。
彼女は兄のことが嫌いだった。
学校で問題を起こしたとき兄は擁護してくれることはなく一方的に花を責め立てたのが兄妹に溝を生む結果となってしまった。
だが振り返ってみれば借金さえなければこんなことにはならなかったのだ。
花(借金なんかなかったら…本当に借金なんてあったのかしら?)
元から借金などなったのではないかと今更変な考えが頭に浮かんだ花。
両親と兄と四人で暮らしていた時は父は真面目に働いていて金に困るような生活はしていなかった。
兄の大学進学のための学費もあった。
まあ余裕があるときは遊園地に行くなど楽しい思い出もあった。
花(そうだったんだ…私…何やってたんだろう…)
花は自分も被害者であると思われようやくそのことがわかってきた。
しかし兄を殺してしまった。もう兄は生き返ることはない。
花「林さん…本当にごめんなさい!」
花はその場から立ち去った。
林「花!」(いや…放っておいておこう…下手に刺激しちゃダメだよね…)
彼女を追いかけようとしたが止めた。
外には出れないと思うのでアジトのどこへ行ったのだろう。
そして家入と滝原は会議室にいた。
滝原は何かを作っていてそれを家入は見ていた。
滝川が作っているものは何かすぐに察しがついた。
家入「何作ってる?まさか爆弾作ってるの?」
滝川「その通りですよ家入さん。」
小さなバッチのようなものだったでわかったが爆弾を作っているようだ。
家入も身に着けられたことから林にもこれを身に着けさせる気ではないだろうか。
家入「これを林さんに?」
滝川「……フフ」
不敵な笑みを浮かべた滝川。
家入(う!やっぱり!!)
果たして明日の取引はどうなるのか…
続く
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