第18話 終わらない悲劇
東京都新宿歌舞伎町で火災が発生した。
この火災は事故ではなく人為的なものであり放火したとのはアミュ真仙教の構成員だったのだ。
彼が言い放つ呪文のような言葉は犯行計画そのものであり
「神宿るは、地獄の業火燃え盛らん」は新宿で大火災を起こすことであったのだ。
中二病じみていて大の大人が言っているのはとても痛々しいがそれでも言動は一致しておりそれを実行に移している。
日本軍が現場に到着し、日本軍とアミュ真仙教の構成員との戦闘が始まった。
政府もメディアもまだ彼らの実態を掴めていないためテロ組織として捉えた。
数も実力も日本軍が上であり数分でけりが付くと思われる。
やはりテレビニュースから既に何人かの実行犯を取り押さえたと報道された。
予想通りすぐに鎮静し彼らの野望が音を立てて崩れ始めてきていると家入は感じ、心の中で歓喜している。
だが家入の隣にいるメンバーの猿江と山本は冷静であった。
猿江と山本はまた何か呪文を唱えた。
「眠れぬ地に血をささげ今こそ眠れ!」っと。
これも彼らのアジトで聞いたことがある。
次は何をする気なのか。
アジトにいた時のことを思い返す。
血から連想するに殺人をするつもりなのか。
東京のどの区をどの町を狙うのかわからない。
眠らない町は東京でもあるためまさか東京都全域じゃないだろうかそう思った家入だった。
できればそうあってほしくはない。
しかしいったいこれから東京都内で何が起きてしまうのだろうか。
安田は補助の警察官と共に府中刑務所から脱獄した脱獄犯をパトカーで追っている。
現在国分寺方面を走っている。
安田「ん?なんだ?」
道端で何かを見つけ車を徐行しゆっくり近づいてみた。
安田「なに!!?」
すぐに安田と補助の警察官は車を降りた。
安田「おい!しっかりしろ!!大丈夫か!」
なんと道端で数人血を流し倒れていたのだ。
被害者「うっう…」
補助の警察官「まだ傷口が新しい」
補助の警察官「やられて間もないです。」
被害者は刃物のようなもので切り付けられ出血していて意識が朦朧していた。
深く刺された者もいて意識不明の重傷を負っていた。
襲われてから間もない状態であった。
すぐに安田と補助の警察官は警視庁に連絡し救急車を手配した。
二人は被害者の応急処置と止血を行った。
安田「ぐ!奴らめ!」
これをやったのは一連の事件を起こしたテロ組織だろう。
補助の警察官「これはもしかして足止めでしょうか?」
安田「ああ!そうじゃなくても罪のない人を襲うとは!許さねえ!」
脱獄犯を追う警察を足止めするための犯行であったかもしれないが
罪のない人々を襲うのは非道である。
これも赤城率いるアミュ真仙教の計画の一部に過ぎないのだ。
赤城は言うだろう、我々の計画の為の生贄となったのだと。
安田に連絡が入った。
被害は新宿と新たに起きた国分寺だけではなかった。
東京都各地に刃物襲撃が起きていた。
それが浅草、日本橋、銀座、目黒で起きた。
老若男女問わず無差別に刃物で襲っているそうだ。
目撃者の証言から渋谷事件と同様黒い恰好にガスマスクをつけていたらしい。
ガスマスクを外しているところを見かけたが遠くからだったので顔を確認することはできなかった。
もし近くで目撃していたら標的にされていたかもしれない。
彼らは単独でも集団でも行動しているらしい、集団で犯行した際はそれぞれ違うところに散って身を隠しながら移動していくそうである。
安田「どうなってるんだよ!どうすればいいんだ!」
テレビニュースでも東京都各地に人々が刃物で襲われる事件が報道され
それを見た住民たちはもちろんだが警察側も混乱してしまった。
「眠れぬ地に血をささげ今こそ眠れ!」とは東京都各地で刃物襲撃を行うことであった。
またしても家入の予想は的中してしまった。
初めは眠らぬ地から眠らない町へと連想し
銀座や原宿など襲うかと思っていたが最終的には東京都全域を対象にするのではないかと思っていた。
予想すればするほど何もできない悔しさに押しつぶされてしまう。
思い通りになっていることで猿江と山本は隠しきれない笑顔を浮かべている。
昨日の渋谷の襲撃から今日の新宿の放火、そして東京都各地で無差別の刃物襲撃と
非道の限りを尽くしている。
家入「これ以上は…くう…」
彼らの犯行に止まる気配はない。
とうとう家入たちが住む宇田川町と神泉町で刃物襲撃が起きてしまった。
家入「そんな!林さん!」
林のことを心配する家入。
林は警察である以上避けて通れない。
宇田川町で起きた事件は林らが対応することになるだろう。
以前から接触はあったものの彼らが起こした事件と直接関わることになってしまった。
山本「話は聞いている。これからおもしろいことが起きるぞ。」
家入「どういうこと?」
彼らは住民だけでなく隙あれば警察も狙ってくる。
林が襲われるかもしれない。
家入には不安しかなかった。
林は午後から熊谷と交代し巡回警備していたが住民が刺されたという連絡があった。
熊谷から電話でのやり取りがあり注意してほしいとのことだった。
林「今までの事件とは違う。恐ろしいことが起きている。」
林「俺だって警察だ。あいつだって頑張っているんだ。国民の平和を守る!絶対に!」
林は闘志を燃やし現場へと向かっていった。
東京都各地で事件が多発しているこの未曽有の事態に国はJアラートを鳴らした。
Jアラートとは全国瞬時警報システムのことで
大災害やテロが起きた時などに緊急事態情報を国民に伝えるシステムだ。
外部スピーカーによってJアラートは鳴らされた。
内容は、テロ組織による犯罪が東京都各地で起きているとのことで
直ちに建物中に避難し戸締りを厳重にし事態が収束するまで外出は絶対にしないようにということだ。
東京都民全員を対象に外出禁止命令が出されるのは異例である。
住民たちは指示に従いコンビニ、スーパー、飲食店は店を閉めた。
他の業界もすべて営業を終了させた。
電車やバスなど公共交通機関も一時停止となった。
既に学校は下校時間ではあったが都内の学校の在校生を下校させず全員校内で待機することになった。
学校側がとった措置はJアラートが鳴る前から判断していた。
脱獄犯が脱獄した時に危険と判断し学校側が生徒たちを守る為にこのような措置を取った。
結果的にこの判断は正しかった。
千葉や埼玉など東京に隣接する県もその境を警察官らによって閉鎖された。
被害を拡大させないための措置ではあるが一秒でも早く犯人らを捕まえなけれならない。
川代「今度はなんだよ!いろいろ物騒なことが起きているじゃねえか!」
丸山「新宿ではテロ組織が火を起こしたってよ。」
川代「火災なら俺達消防の専売特許じゃないんすか?」
丸山「まあそうだが他は任せるとして、他でもやばいことが起きているらしいな。」
Jアラートは川代たちにも聞こえていた。
川代「作業は中止になりますかね?」
丸山「ああそうなるかもな…」
渋谷では昨日事件の爆撃で建物が損壊しその瓦礫撤去を消防がやっているのだが
Jアラートによって作業が中断されると思われた。
だが警視庁から撤去作業を続行するようにと指示が出た。
川代「は!?なんで?」
丸山「いや、知らねえけど。ここは狙ってこないって判断か?」
どうやら警視庁の指示で川代たちは渋谷事件の瓦礫撤去を中断せず続行することになった。
事件で使われた装置の破片などが見つかったことから1つでも多くの証拠を見つけてほしいからなのだろう。
また丸山が考えるに同じ場所は襲撃するのはあり得ないと判断したのだろう。
次は自分が狙われるのではないかと住民たちは怯えていた。
家の中のライトを消して身を縮こませていた。
仕事中の人たちもオフィスのライト消して大人しくしていた。
建物中に避難していれば安心とは限らない。
武器を持っているため強引に扉をこじ開け侵入されることだってあり得なくはない。
最悪大勢の人を人質にとる可能性もあり不安と恐怖と危険が人々を襲う。
家入のそばにアミュ真仙教のメンバーである猿江と山本がいて見限られてしまえば殺されてしまうかもしれない。
命も弱みを握られた状態だが今のところ大人しくしていれば安心か。
危険と隣り合わせというのが妥当か。
新宿での日本軍とアミュ真仙教の構成員との戦いは終息に向かっていた。
やむを得ずであったか数人、日本軍の攻撃で殺されてしまった。
残りの構成員も身柄を拘束され軍用のコンテナに収容された。
それと同時に消火活動が行われ火は消えていった。
戦いは日本軍を勝利と言いたいが、勝負には勝ったが試合に負けたという結果に落ち着いてしまいそうだ。
多くの人々が火傷を負い、死者も多く出てきてしまっている。
負傷者と死者を合わせて百人以上いる。
歌舞伎町は焼け焦げ、多大な経済損失を生んでしまった。
もう二度とこんなことはあってはならない。
拘束した犯人たちを刑務所へ連行し計画や目的など洗いざらい吐かせるべきだ。
しかしまだ戦いは終わっていない。
東京都各地で起こっている刃物襲撃が残っている。
日本軍は犯罪組織らは拘束するべき東京都各地へ捜索を開始した。
ニュースでは新宿のテロ組織との戦いは日本軍が勝利しテロ組織のメンバー数人を拘束したと報じられた。
また消火活動が行われ完全に火も消えたそうだ。
猿江「さすがだな。そうこなくてはな。」
家入「仲間が捕まっちゃったんだよ。」
家入「殺された人もいるんだよ。」
山本「仲間のことを思ってくれるのか?」
猿江「あいつらは計画通りにやってくれた。」
猿江「こうなることは予想していた。」
猿江「そうなることは覚悟のうえであいつらはやったんだ。」
家入「どうしてそこまでするんだ。僕には考えられないよ…」
山本「これもアミュ様のためだ!」
猿江「どうしようもなかった俺達をアミュ様は拾ってくれたんだ!」
家入「いったいなにがあったの?」
彼らの過去のことを聞けば少しは彼らに同情する余地はあるかもしれない。
猿江「俺たちのことを聞いて何になる?」
家入「いや…何でもない…です…。」
猿江「もう俺達には後がないねえんだよ。前に進むしかねえんだよ!」
猿江「アミュ様の為ならたとえこの身が砕けようと命を失っても計画は必ず成功させて見せる。」
猿江らは赤城という男に信仰心を抱いている。
何かしら恩はあるとはいえ命を捧げるようなことまで言い張り完全に精神的に異常をきたしている。
おそらく赤城に洗脳されているのだろう。
猿江「さあここからが本番だぜ!山本準備しろ!」
山本「了解!」
家入「何をする気だ?」
猿江「お前も来い!」 家入「うわあ!!」
猿江に引っ張られ連れていかれた家入。
貨物車に乗せられ走っていった。
これからどこへ向かおうとしているのだろうか。
林「家さんは帰っているよな…」
林は家入のことを心配していた。
昨日事件に巻き込まれそうだったと本人は言っていた。
渋谷区内を新聞配達しているため
事件に遭ってしまうことはなくはないし事故が起きて巻き込まれることもある。
新聞配達に限った話ではなく、外へ出て仕事することは外で起きる危険に巻き込まれる可能性があるため注意しなければならない。
今日家入は、交番に来なかった。
熊谷が言うには神泉町の喫茶店でコーヒーを飲んでいたと聞いた。
林「時間帯的家さんは家にいると思うから大丈夫だ。」
家入の新聞配達は午前中で終わるため今回の事件には巻き込まれていないはずだと林は思った。
林「あ!花!花は大丈夫かな…」
花は神泉町のアミュレットでバイトしている。
時間帯的に退勤しているはずだ。
神泉町にも被害が起きていると聞いた。
林「鍵は持たせている。きっと大丈夫だ!」
林「今は自分の仕事に集中しなくては!」
彼女に合鍵を持たせているので無事に帰っていることは願うしかない。
宇田川町は静かで人気は全然ない。
店はすべてシャッターで締め切られていた。
Jアラートにより外出禁止となっている。
きっと住民たちは建物中で非難し恐怖に怯えながら身を隠しているのだろう。
宇田川町も新宿や銀座にも負けず劣らず渋谷を代表する繁華街なのだ。
そんな活気ある街がゴーストタウンに様変わりした。
彼らの計画通り眠らない町は眠ってしまった。
高度経済成長期を迎え特に東京は発展し人々が大勢移住や出稼ぎにいき
東京は日本経済の成長の一端を担うがごとく栄えるようになった。
高速ビルがいくつも建築され建物のライトが夜空を照らし町は光に包まれその中に人々入り乱れていく。
深夜でも喫茶店やスナックは営業続けるようになり東京は眠らない町となったのだ。
人々が大勢集まる大都市はテロ組織にとって格好の的なのだ。
宇田川町で被害があった場所に向かっている林だが
警視庁からも熊谷からも十分に注意してほしいと言われている。
今回は一筋縄ではいかない。
犯人の顔はわからない上に、彼らは隠れながら行動している。
林は見えない敵を相手にしているのだ。
林一人だけでは心許ない。
日本軍が加勢に入るそうなので頼もしい。
その間にできる限りのことはしたい。
林は銃を構え自分の身を守る行動をとりながら走っていく。
もし犯人らがこちらに襲ってきたらためらわず銃を使用しても構わないと指示されていた。
林は覚悟していた。人を殺すかもしれないと。
たとえ相手が邪悪に満ちた罪人でも人を殺すということは非常に責任が重くのしかかる行為だ。
現場付近に付いた林。
被害者が見つかり次第安否確認し直ちに応急措置そして救急車を呼び、状況連絡をしなければならない。
だがあたりを見渡したが何もない。
林「場所を間違えたいのかな?」
携帯や手持ちのメモを取り出し確認しようとポケット入れていたペンが落ちて転がった。
転がったペンを追って拾おうとした時、地面に血痕のような見つかった。
林「あ!これは!」
その血痕は点々と続いていた。
林「被害者を刺してそのまま誘拐したのか?」
林は血の跡を追ったが途中で途切れてしまった。
おそらくここから車などで連れ去ったのだろう。
林「遅かったか…」
林「これだけでもやっておこう…」
血の跡だけでも痕跡だけでも残しておこうと林は写真を撮った。
その時だった。
建物の物陰から人の気配を感じた。
林は銃を構えた。
林「隠れていないで出てこい!」
住民たちは建物の中に入って身を守っている。
つまり物陰に隠れているものは犯人しかいない。
林「え?…どうして?」
物陰に隠れていたのは花だった。
花「林さん…」
林「花!!!なんでここにいるんだ!!」
林は銃を下ろし花に近づいた。
花「林さんのことが心配で私…」
林「ここは危険だ。でも無事でよかった。」
花「本当に怖かったです…」
林は彼女を強く抱いた。
林「花、帰ろ…う!!!!!」
林は倒れた。
花「ごめんなさいね…」
林は後ろからスタンガンを当てられ全身が麻痺し気絶してしまった。
花だけでなく仲間を隠れていて林は彼女に気を取られ後ろを狙われてしまったのだ。
花らに拘束されてしまった林。
なんとテロ組織アミュ真仙教の魔の手が林にも…。
続く…
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