イエイリ

第1話 奇妙な事件

時は昭和の時代。
家入が新聞配達、川代が消防隊員で、林が警察をしていた。
川代が消防の本日仕事の終わりごろのこと。
川代「今日もいろいろあったな。1日の初めはごく小さな火事だったかな。郵便ポストが燃えているからその消火だろ。」
川代「ポストに煙が出てるって通報があって現場に行ってポストに水入れて消火したんだけっな。」
川代「だれがやったか知らねえが!バカがタバコ吸ってそん中かポイしやがって!」
郵便ポストが燃えた原因は、誰かがタバコをその中に入れていたようで、そのタバコの火が消えていなかったことで
手紙に燃え移ってしまったらしい。
川代「次は焼鳥だったな‥」
消防の世界では焼死体の事を焼鳥と言っている。
またしても火元はタバコにあったらしく、酒で酔っ払いタバコを吸ってそのまま地べたで寝てしまい
タバコの火がついたままであったため、それが服についてしまい火事になってしまった。
川代「まったくバカだよな~酔っぱらってそのまま棺桶の中でずっと寝る羽目になっちまったじゃねえか」
火事の原因は消防の方も調べるが発表するのは警察がする。
それでいつも関わるのが警察の林なのだ。
本日のしめは、どうもマグロ拾いの様だ。
マグロ拾いとは消防の隠語であるバラバラ遺体のかき集め。
当時の川代は神泉町の消防勤務なのだが、渋谷所からの要請で出動した。
大崎始発の山手線外回り渋谷駅を出てすぐ宮下公園付近での事故らしい。
川代「はあ~今日も大変だ~」
彼はぶつぶつと独り言していた。
新宿向面へ向かう山手通りの一車線はパトカー消防車両で埋まっていた。
しかしまだ朝早くの事だったので道路交通整理をするほどにはならずにいた。
通る車がまだまだ少ない時間だが交通整理するために近くの宇田川交番勤務の林も駆り出されていた。
川代「オー」林「ヨー」
二人は学生時代の同期でもあった。
オー、ヨー、オスで言葉字足らずでも通じるほど間柄である。
何よりも世田谷と渋谷に住んでいて近場というのもあった。
二人の会話が始まろうした時
家入「川代さん!林さん!まさか事故ですか?山手線がしばらく止まっているみたいなんですよ。」
新聞配達の家入がやってきた。
川代「変な所であったね。見ての通りだよ。家さんは配達の仕事の終わりぐらいかな?」
家入が新聞配達の仕事しているのを川代は知っていてだいたい彼の行動パターンを知っている。
家入「はい!店へ戻るところだったんです。」
家入「所でだいぶ前から電車が止まっていますがどうしたんですか?」
事件でもあったのかと思った家入は消防隊員である川代に聞いてみると
川代「あの止まっている電車が渋谷駅を出発してすぐ宮下公園の横上を通過しようした時、路線上に人が寝ていたとか」
川代「それで奇妙なのがその男が素っ裸だったんだ。」
川代「電車は原宿に向けて速度を上げて行く時だったが急ブレーキをかけたが間に合わず体はバラバラ」
川代「さっきからみんなでさがしてるんだ。首だげまだ見つかっていない。」
林「首のかわりに家さん見つけた。」家入「やっやめてくださいよ~」
川代「冗談言ってないで探すぞ!」林「いや悪いね~家さん」
家入は川代と林の後輩で、二人は家入を家さんと読んでいる。
学生時代は川代と林が新聞配達のアルバイトしていて、その時家入が新聞配達のアルバイトを始めたことで知り合ったのだ。
つまり家入にとって川代と林はアルバイトの先輩だったのだ。
そんな二人が今、川代が消防官で林が警察官と立派な役職についてこうして仕事をしている。
そろそろ交通も多くなってくるので混乱が生じないように今のうちに遺体を回収したい。
見落としたところがないか川代と林は見回りしようとしたところ家入が
家入「陸橋の下あたりを見ましたか?」
川代「イヤまだ見てない少し遠いだろう。」
林「とりあえず行ってみるよう。家入ありがとね!良かったら手伝う?」
川代「バカ!家入は一応一般人だぞ!」
家入「一応って‥遠慮しておきますんで。お先に失礼します。」
陸橋の方はということで行くことにした。
そして家入は専売所に戻っていった。
川代と林は陸橋についた。
川代「やはりないな‥。」 あたりを見ましたが何もなかった。
すると林の頭上に液体が一滴落ちてきた。
それに気づいた林は手で触ってると
林「血だ!」
二人は上を見上げた。
川代「あ!あれか!」林「ありましたね!!」
遺体の生首は陸橋に引っかかっていた。
見るも無残で目を伏せて逃げ出したいが彼らは国民の生活と安全を守る役職についている。
二人はそれを覚悟して公務員(警察官、消防官)になったのだ。
まさか陸橋に生首遺体が見つかるとは思いもしなかったが
川代と林は死者を弔い、指紋が付かないように手袋をはめて慎重に遺体を運ぼうとしたところその遺体の口から何かが零れ落ちた。
川代「ん何だこれは?」
古いコインの様だった。
川代「何て書いてあるんだ?林わかるか?」
林「はいどれどれ、富なんとかと書いてあるので多分富本銭だと思う。」
川代「富本銭?なんだそれ?」
林「それはともかくなんでその古いコインが口の中に?」
川代「まああとは警察官である林に任せたぞ。やっと首が出てきて遺体はそろったことだし。」
林「はい。任されました。何かの手掛かりにもなるのでこの富本銭も署に出して報告する。」
この後は二人はそれぞれ持ち場へ戻っていた。
その日の新聞夕刊三面記事に電車事故が載っていた。
新聞屋が転送という言葉が出てきた。
転送と言うのは、昔のスタートレックという映画があったが、人や物を別の場所へ瞬間移動するときに日本語で転送と言っていた。
その名残かどうかはわからないが新聞屋も転送という言葉を使っている。
新聞の記事の一面を読んだ家入。
家入「これって先輩たちが言っていた事件の事なのかな」
彼は新聞を自転車で配達するのだが部数が多く一度に全部つめることはできないので肩ひもで100部~200部を
縛って配達の途中に車で運ぶことにした。
いつも通り家入は新聞配達をするのであった。


事件が起きてから10日後、川代と林の二人は有給を使って家入が住むアパートに行った。
川代「よう家さん元気か?」
家入「はい、私は元気だけが取り柄ですからね。」
林「お茶飲みたくて来たんだよ。あれは絶品だからね。」
家入「いえいえ普通ですよ。」
川代「そういことなんだから素直に喜んでおけよ。」
家入「はいはいわかりましたよ。今お茶と菓子を持ってきます。」
家入は、川代と林にお茶菓子をもてなした。
家入「今日は貰い物の煎餅ととっておきの羊羹、よう噛んで食べてね。」
川代「くっだらねえシャレ!」
林「それが家さんですからね。」
家入はくだらない洒落も二人にもてなすのであった。
これが二人にとっては心の支えであり癒しでもあるのだ。
川代「林、今日俺ら休日だけどよ、家さんにもこの前のこと言っておこうぜ。」
林「あ、そうだね。この前の電車事故なんだけど。陸橋にあったんだよあの生首の遺体が。」
家入「そうだったんですか。」
川代「ああ家さんにもそういう話をしておこうと思ってな。後のことは林らに任せておいてだな。まあ話だけでも聞いてくれ。」
家入「は、はい‥」
家入に10日前に起きた事件について林は話したようだが、まだ解決はしていないらしい。
林「あの遺体がまだ誰なのか全然わからないんだ。まず全裸だったから身分証明できるものがなくて身元が分かるものがないんだ。」
行方不明者リストや失踪者リストにもあの遺体らしきものが上がっていない。
鑑識、解剖の結果アルコール中毒になり、路線の上で寝てしまったと思われる。
不可解なのは、なぜ全裸になっていたのかだ。
おそらく自殺に見せかけた他殺なのかもしれない。
脱ぎ捨てられたであろう服がどこにも見当たらない。
男を全裸にして線路に突き落とし誰かが男の服を持ち去り、証拠を隠滅しようと企てたという線が濃厚である。
警察側は殺人事件として捜査している。
唯一手掛かりなのは遺体の口から出てきた富本銭だけだ。
林「電車事故もそうだけど、渋谷にも物騒なことが起きてその事件の5日ぐらい前なんだけど‥」
林は電車事故の5日後に渋谷で起きた事件について話す。
南平台にある 蔵冨興業の社長はじめ幹部全員が殺害された事件だ。
その社の社員らが犯行したようで彼らはすぐに警察に出頭した。
林「会長は松崎に屋敷に住んでいるんだけど、ショックと持病でもうダメらしい。」
家入「その話ですか。影響はこちらにもあって新聞二部減りましたよ。」
川代「出版はあの 蔵冨興業と関わりがあるんだったよな。俺も林も4年間新聞やっていたもんな。」
川代「朝が弱い俺を鍛えてくれたようで、本職もなんとか朝早く起きれるようになったよ。」
林「家さんはまだ新聞配達やってるけどもう何年になるの?」
家入「7年ですよ。お二人がやめて3年経ちますよ。」
川代「そうか、もう3年経ってるのか」
川代と林は、3年間公務員として働いていることになる。
川代「家さんは、新聞配達を本業にしていくの?」
家入「さあどうでしょうかね」
三人は雑談した後、二人は家入の家を出て解散となった。

それからさらに10日後の朝の事だった。
宇田川町交番勤務をしている林のところへ女性が来た。
女性「私の兄が帰ってこないんです。」
林「まず名前からお願いします。そしていつからお兄さんは帰られないのですか?」
始めはマニュアル通りに女性の対応を始める。
しかし林の心の中で何かが光ったというのか、この女性と自分の未来が頭の中でよぎったのかというかクラッときたのか
奇妙な感覚になった。
女性「兄の名は氷と魚と書いて「ひお」と言います。苗字は土屋です。私は花と申します。」
女性の名前は土屋花。
兄である土屋氷魚に対し失踪届を交番に申請する。
林「それでお住まいはどちらですか、何度も言いますがいつから氷魚さんは姿を消したのですか?」
花「ここらかすぐ近くの宇田川に住んでいるのですが、もう一か月前から帰ってきてないのです。」
林「ご両親は?」
花「はい5年前に父母ともになくなりました。兄の二人暮らしです。」
花は失踪届などの書類を書いて、林に渡した。そして花は林に言う。
花「私今、困っているんです。頼れる人が兄しかいなくて、だけどその兄がどこにもいなくて」
花「ご迷惑かもしれませんが少しお話聞いてもらってもいいですか?」
林「大丈夫ですよ。自分でよかったらお聞きしますよ。話してください。」
花「ありがとうございます。両親がいなくなった時、兄は大学1年でしたが勉強はできていつも成績がよく」
花「生きていた両親は、いつも兄と私を比べられて嫌でした」
花「こんな口うるさい親が兄がいるんだろうって、いっそいなくなってしまえばなんて思っていた時期が私にはありました。」
花「そんなつまりではなかったのに両親が亡くなって今度は兄まで帰っていないんです。」
花「本当に一人になってしまいました。」
肩を震わせ泣き出してしまった花。
林は花にかける言葉を失っていた。
ハンカチを出して花に渡して花が落ち着くのを待つしかなかった。
そこへ新聞配達帰りの家入が自転車で通りかかった。
家入「あれ~林さんが女の人を泣かせてます」
林「ちっ違うよ」
家入「わかってますよ。林さんいい人ですから。」
家入が来てくれて林は少し救われた。メソメソと泣く女性に林は苦手なのだ。
林「それにしても家さん。今もう八時半だよ。朝刊配達にしては遅いんじゃないかい?」
家入「不着を届けていたんですよ。今日は休みで少し時間をずらして朝ごはんを取っていたら」
家入「唯一専業主任の志賀さんに新聞を届けてくれ頼まれちゃったんです」
林「そうか。それはしょうがないな。」
二人の無駄話を聞いていた花は少し心が落ち着いたようだ。
花「あの~」林「あっごめんなさい土屋さん。」
花「私、帰るところがなくて今住んでいるアパートが取り壊しなので、すぐに出て行けと言うんです。
花「他の全員もう引越していて私だけなんです。」
花が住んでいるアパートが取り壊しとなるみたいで身寄りすらなくなる彼女を気の毒に思ってしまう林。
林「それは困ったね。お兄さんの行く先とか心当たりはないかな?」
花「いつも夜間の工事の仕事をしていて夕方出かけて行き朝かえって来ていました。私といつもすれ違う様な生活をしていまして」
花「関西の方に行くだとか言って1週間ぐらいか長くても10日ぐらいはかかるといってしまいました。」
彼女が言うには兄は関西の方へ遠出するようでそれで一か月も連絡もないままとなってしまった。
林「そうかお兄さん関西に。頭もよくて大学も出たのに。どうしちゃったんだろうね‥」
花「言い忘れていましたけど両親がいなくなってしまったことを機に大学は中退してしまい仕事に明け暮れる毎日になってしまったのです。」
家入「というとそのお兄さん、女作って関西の方に逃げちゃったんじゃない?」
花「え!?」
林「妹をおいて出ていくかな?彼女に1つも連絡していないしう~んありえなくはないかもだけど‥」
家入が言うように花の兄である氷魚が関西で女を作って連絡を出さないまま疎遠になるということも考えられる。
妹とはいえど花はもう大人。両親もいないことだし自立するべきでないかと思ってしまう。
しかし交番までいって失踪届も出したことだから兄についてもう少し聞くことにする林である。
林「お兄さんの勤務先とかわかりますか?」
花「たしか 蔵冨興業とか聞いてます。」
家入と林「蔵冨興業だって!!」二人は口をそろえて大きな声で喋った。
花「あ!?あの!?どうしたんですか」
家入「えーと 蔵冨興ぶ!!」林は家入の口を塞いだ。耳元で林「今は言わないほうがいい‥」家入「はい‥」
蔵冨興業で殺害事件があったのだ。もしかすると花の兄である氷魚も事件に関与しているのかもしれない。
落ち着いてきた花に本当の事を言うのは避けたいし、まだ定かではないので一旦伏せることにした。
林「ところでお兄さんの写真あるかな?」
花「しばらく写真なんて撮っていませんのでほとんどありません。」
花「子供のころの写真もなくなってしまいました。ですが大学に入る時の写真が残っていたような‥」
林「それでお願いします。見せてもらえますか?」花「わかりました。」
林「土屋さんが住んでいるアパートに私も案内してください。」花「はい」
林は花の住むアパートに行くことにした。
氷魚の失踪についても事件性があると考え今後捜査が必要になるだろう。
家入「お仕事頑張ってくださいね」林「家さんも来て!」家入「え!なんで俺も?」
家入「ずっと見てたじゃないか。袖すりあうのも多生の縁じゃないか?ね?どうせ専売所に戻っても仕事押し付けられるだけだから」
林に言われて家入も同行することになった。
林「でも少しだけ待って」
林は交番の引き継ぎを終わらせてでてきた。
家入「もしかして時間外勤務じゃないですか?」
ほほ膨らませた家入。なんとなく林のしたい事が見えてきたようだ。
林「まあまあ家さんには頼み事ができちゃったんでね」
家入「あ~やだやだこわいこわい。」


三人は一緒に歩き出した。家入は自転車を押しながら。
林「家さんはね私の後輩なんです。今は私警察という職にいますが、昔新聞配達のバイトをしてましてその時にできた後輩なんですよ。」
林「家さんの家に時々遊びに行くのですがおいしいお茶とか入れてくれるんですよ。」
花「そうなんですか‥」
林は自分の自慢の後輩のように家入の話をする。
林「いいやつなんだけど。家さんに足りないものは彼女と酒なんだ。アルコールがてんでダメなんですよ。」
家入「はいはい私は下戸です。ゲコゲコ~」
花はまだ固くなっているので気持ちをほぐしている。
林にとって家入はベストな相棒なのだ。
自分のだけでは彼女を和やかにすることはできない。
花の顔に少しだけ笑みが浮かんだ。
花「違うお仕事されているのに今も仲いいんですね。」
家入「いえいえ、自分が専売所に入った時には大先輩で雲の上の人でね」
家入「ほらみて林さんの顔、鬼みたいでしょ」林「おい家さん!!」
家入「ほらほら!コワイ鬼ですよ!」
家入「花さんはスキーしたことありますか。」
突然話題を変える家入。
花「いえ、ないです。」
家入「自分スキー大っ嫌いになったんですよ。林さんともう一人先輩がいて、川代さん。」
家入「私を入れて三人でスキーに行ったことがあるんですがそれでですよ、いきなり上級者の向けのところにいかされたんですよ。」
家入「二人はさっさと滑り降りていって私を取り残すんですよ!」
家入「私は急斜面でどうしようもなく板を担いで恐る恐るおりました。」
家入「あれは怖かったな。ずるいです二人はスキーのインストラクターの資格を持っていて」
家入「私にそれ全然言ってないんですよ。しかも教えもしないんです。」
家入「後輩イジメするんですよ。」
林「いや家さんスキー楽しかったでしょ。」
家入「地獄の特訓ですか!!やはり二人は鬼だ!!」
過去の思い出を話しながら歩いていた。
すぐに花の住んでいるアパートについた。
花「ここです。」
かなり古びたアパートの様だ。
彼女言うようにアパートが取り壊しになるのは古くなったことが理由なのだろう。
家入「なんだが廃墟みたいですね。」
林「そうか家さんには知らないんだよね」
花「このアパートは私しか住んでなくてもうすぐ取り壊しになるということでいろいろ困っているんです。」
家入「ああそういうことですか。」
アパートには花だけしか住んでいない。
花「もう大家さんから立ち退くようにと言われているんです」
花「早いところ何とかしないといけないのですが‥兄が帰ってこないんです」
花は扉を開けて二人を中に入れさせてあげた。
林「綺麗にしているのね。外から見る景色は全然違うね。」
アパートは古びてさびしいが、アパートの中から外の景色を見るととても煌びやかである。
隣の芝生は青く見える。このアパートにいるとそんな気がしてならない。
部屋には小さい机と椅子、カラーボックスに布団一組とほんの少し。
いつでも立ち退く準備はできているようだ。
花「おまわりさんの前で行っていいのかわかりませんが、兄は両親がいなくなって」
花「それから兄は大学を中退して親の借金を返すために懸命に働いていました。」
花「夜は私が寝て、昼は兄がほんの少し寝て。二人で起きて過ごすような時間はあまりありませんでした。」
花「どんな仕事しているか聞くと兄は一言、土方だとお金がよいからだと。」
花「今回は一週間は長くても10日間はかかると言って関西の方へ行くと言っていました。」
花「でももう一か月も経って帰ってこないんです。」
交番で言っていたことをもう一度話す花。
その話をじっと聞いていた家入であり彼女の素性を知った。
彼女は机の中から写真を取り出す。
5年前の兄が大学入学のときに撮った写真である。
それが兄の思い出の写真で唯一の一枚なのだ。
そしてもう一つ花の兄の日記を取り出した。
しかし字が読めず、妹の花ですら兄の字が読めないのだ。
その日記を林に手渡した。
林は日記をぺらぺらめくるがやはり読めなかった。
林「これは何なんですか?さっぱり読めないです。」
英語の筆記体のような字をしているが英語ではない英語圏以外の外国の文字なのだろうか。
花「兄は右利きなのですが、この日記は左手で書いていました。」
花「日本で書かれるようなひらがなとか漢字で書いているとは到底思えません。」
花が言うようにこの字は日本語ではない何かのようだ。
林「ん~花さん、この写真と日記を預からせてください。」
林「ところで花さんこれからの予定は?」
花「飲食店でバイトの予定です。今日はそれだけです。5時前には終わります。」
林「じゃあ仕事の終わりに会いましょう。一緒に夕食を食べましょう。」
林は花に夕食のお誘いをするそうだが
花「そんな悪いですよ‥。あまり奢りとかは‥」
気まずいようで彼女は断るようだが
林「いやいや誰が奢るなんていいました、今日は家さんの家で手料理をいただくんですよ!」
林「そこで今後のことについて相談しましょう!」
家入の手料理を食べる予定であり、今後のことについて相談することも兼ね花もそこにお誘いするそうだ。
林「いいね。家入、異論はないね?」
家入「はいはい。わかりました。林さんの分には隠し味に鼻くそ入れてやりましょう。」
林「川代のほうにやってよ、それは!」
いつもの冗談交わしつつ家入は花の分の手料理も振る舞うことにした。
彼女の事情を聞けば断る理由はない。
林「そういうわけで。花さんも一緒に家さんの手料理いただきましょう。」
花「はい‥わかりました。なんだか申し訳ないです。」
優しい人達で頼りになる人が見つかってよかったし、その人が警察ならとても頼もしい。
申し訳ない気分になってしまうが家入の家で手料理を頂くことにした。
一旦解散し、林は交番に戻り花から預かった写真と日記そして電車事故の資料を手に取り確認した。
林「そ…そんな…まさか…」
林が見たものとは…

続く

戻る