ジュンコチャン

第48話 新学期記念全校生徒ドッチボール大会 終幕

様々な思いや信念がぶつかり合う新学期記念全校生徒ドッチボール大会はいよいよクライマックスを迎える。
速球使いの暴君豪[6、2]率いる2組チームが勝つのか
それとも期待の新星順子ちゃんとその仲間たちの3組チームが勝って下剋上を果たすのか。


ドッチボールの大会に参加しなかった生徒は大掃除をしていてそろそろ終わる頃だ。
1年3組は花壇の手入れが終わり教室に戻ろうとしていた。
作業中も体育館から歓声が響く。
清水先生「なんだか今までにないくらい盛り上がっている感じね。」
真木「きっと順子が活躍しているんですよきっと」
志音「順子ちゃんが頑張っているってことなのかな?」
清水先生「だといいけれどみんなも頑張っているはずよ」
真木「こっちはラーメン奢るって話だからな」
勇「勝ってほしいよね」
蓮「彼らのご武運を祈ろう。」
里実「あんなに盛り上がっていると中で何が起きているのか気になっちゃうね。」
清水先生「そうね。見れないのが残念ね。」
参加しなかった1年3組のクラス五人についてだが
男子三人の真木と勇と蓮で女子二人の志音と里実である。
女子二人の苗字と合わせてフルネームで紹介すると和田志音(わだ しおん)と吉岡里実(よしおか さとみ)である。
志音と里実も苗の意見に寄っていて男子五人全員が出るべきと考えていたそうである。
今は同じ女子として順子ちゃんたちの活躍を心から応援している。
彼らは体育館を外から見渡しながら順子ちゃんたちの活躍と試合の結果を期待していた。
五人と清水先生は教室に戻り順子ちゃんたちの帰りを待った。


では体育館内の方に移る。
3組チーム対2組チームの攻防は激化する。
制限時間は10分を切った。
2組チームと3組チームもお互いチームプレーを見せる。
3組チームは3年の正矢と渚、4年の冬馬と遼平、5年の凛と富雄などがアウトになり
2組チームは伸[3、2]、奈菜[3、2]、祐介[4、2]がアウトになりそして拓海[2、2]がアウトになった。
拓海[2、2]がアウトになったことで2組チームの2年生メンバーは全滅した。
幸助「くらえ豪[6、2]!」
幸助のスピードシュートが豪[6、2]に向かって飛んでくる。
豪[6、2]「いいシュートだぜ!」
豪[6、2]はボールをキャッチする。
熱くなった豪[6、2]はお返しするように自慢の速球を幸助に投げつける。
幸助「相変わらずすげえシュートだぜ!」
幸助もしっかりボールをキャッチした。
6年生の男子として豪[6、2]の速球を止めた後も余裕を見せる。
幸助「もう一度行くぜ!」
幸助はまた豪[6、2]に向けてスピードシュートを放つ。
豪[6、2]「げ!速い!」
さらに速さを増す幸助のシュートに豪[6、2]は避けてしまう。
二度目の幸助の攻撃は一旦回避し次の攻撃に備えて相手チームの外野に流した。
薫「それ!」
賢人[6、2]「悪い!!」
遊地[6、2]「大丈夫だ!俺が変わりに行くから外野は頼んだぞ」
やっと2組チームから6年生メンバーを一人アウトにすることができた。
遊地[6、2]と入れ替わる形で彼は内野に行き、賢人[6、2]は外野についた。
遊地[6、2]「負けるかよ!」
遊地[6、2]は順子ちゃんをアウトにするべく力を込めてシュートする。
順子ちゃん「こっちだって負けないんだから!」
順子ちゃんはボールをキャッチする。
順子ちゃん「それゃーーーーーーーー!」
沙織[6、2]「キャア!」
順子ちゃんのシュートが沙織[6、2]に命中する。
順子ちゃん恐るべしドッチボールの2試合通して何人もの6年生をアウトにしている。
彼女の快進撃は続くのか。
豪[6、2]「ぐうーーーーー!順子めーー!」
豪[6、2]の怒りのボルテージが最高到達点迎える。暴君怒りの大噴火だ。
やっぱり順子ちゃんは豪[6、2]にとって生意気な存在なのだ。
豪[6、2]「沈めーーー!順子ーーーー!」
豪[6、2]の速球が飛んでくる。
竜巻のようにボールが回転しゴオッ!と音を立てる。
順子ちゃん「おわっと!」
トルネードシュートを間一髪のところで順子ちゃんは避ける。
年明[5、2]のいる外野の方に飛んできてキャッチしてすぐにシュートする。
年明[5、2]「落ちろーー!」
カーブシュートではなく真っ直ぐ速いボールが順子ちゃんに飛んでくる。
順子ちゃんは豪[6、2]の速球を避けることができたが次の年明[5、2]のシュートに対応しきれない状態だ。
順子ちゃんはアウトになってしまうのか。
幸助「おっと!そうは問屋が卸さないぜ!」
幸助は順子ちゃんの盾になりボールをキャッチした。
豪[6、2]「豆腐屋?おろし?」
板倉先生「そうわ問屋が卸さない、だぞ」
幸助が言ったことわざ、「そうは問屋が卸さない」とは物事が簡単に進まず、思い通りにいかないことを意味する。
豪[6、2]の速球は止められるばかりか順子ちゃんの復活は思いもしなかった。
言い換えれば「そう簡単に順子ちゃんをアウトにさせてたまるもんか」ということだ。
ここで3組チームの怒涛のシュートが炸裂する。
幸助「いくぞ!俺たちの最強シュートを見せてやるぜ!」
幸助「順子!」
順子ちゃん「おっす!」
3組チーム6年生メンバー「ボーナスチャンス!」
なんと3組チームはここでボーナスチャンスを使うそうだ。
内野同士のパス回しが1回だけ許される「内パス1回OK」だが一体それで何をするというのか。
幸助は天井に向けてボールを投げた。
豪[6、2]「何をする気だ!?」
順子ちゃん「こうするのよ!」
高く打ち上げられたボールを順子ちゃんはサーブするかのよう打ち込んだ。
順子ちゃんと幸助の連携のサーブボールが豪[6、2]に向かって飛んでくる。
幸助のスピードシュートの威力と順子ちゃんのサーブの威力を足してより強力なシュートへと変化した。
外れと思われたボーナスチャンス「内パス1回OK」が勝利の一手となる。
「内パス1回OK」に新たなる可能性が開かれる。
風がボールの軌道に合わせて縦に旋回し放たれたサイクロンシュートが豪[6、2]に迫りくる。
豪[6、2]「くうう!うおおおお!」
サイクロンシュートを豪[6、2]は受け止めるがボールの回転は収まらず弾かれてしまった。
豪[6、2]「ぐわああああああああああああああああ!」
そしてボールは床に落ちた。
ついに豪[6、2]がアウトになった。


ピッピーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
ここで試合終了のホイッスルがなった。
残った内野の人数で勝敗が決まる。
2組チーム5人、3組チーム6人。
結果3組チームの勝利である。
順子ちゃん「勝ったーーーーーーー!」
3組チーム全員「やったーーーーーーーーー!」
暴君を撃破し下剋上を果たしたのだった。
総太郎は拳を上げてガッツポーズした。
総太郎は試合終了するまで生き残っていたためまさに彼の生存が3組チームの勝利に大きく貢献したと言えるだろう。
豪[6、2]「負けちまったか…」
豪[6、2]は大の字になり床に倒れてまま体育館の天井のライトと鉄骨を眺めながら悔しそうな表情を浮かべる。
2組チームメンバーと板倉先生は豪[6、2]に駆け寄った。
板倉先生「悔しいな」
豪[6、2]「幸助らだけじゃなくて下の子にまで俺の自慢のシュートを止めるなんて悔しいっす」
豪[6、2]「俺のシュートは全然通じなかった。」
板倉先生「はは、世界は広いな。」
板倉先生「止められてしまったがお前のシュートは思いはちゃんと彼らに届いたはずだ。」
井村校長も近寄り慰めてくれた。
井村校長「厚木君の投げるボールはとても力強くて速い素晴らしいものです。」
井村校長「あなたのボールの恐れてしまう子がいましたが立ち向かう子もいて誇らしいなと思いました。」
井村校長「板倉先生もおっしゃる通り、厚木君のシュートそして思いは後輩たちに強く届いているはずです。」
豪[6、2]「板倉先生、校長先生う…俺悔しいっす…」
豪[6、2]は起き上がり悔し涙をこらえるも目は赤くなる。
板倉先生「ああわかるよ…お前の自慢のボールだっからな」
板倉先生は豪[6、2]の肩に軽くポンッと手を置いた。
豪[6、2]「みんな悪い、俺自分を過信していた。」
佳奈[6、2]「いいわよ、あんたがいなきゃ私たちは何もできなかったと思うわ。」
賢人[6、2]「俺らも悪いな、豪[6、2]ばかりに頼っていた。」
沙織[6、2]「私はチームよりもボールに当たらないことばかりしか考えてなかった。」
沙織[6、2]「全部豪[6、2]に任せっきりだった。」
年明[5、2]「すいませんキャプテン、力添えできずに」
豪[6、2]「いいや、年明[5、2]はカーブも投げることができて俺より器用だ。」
豪[6、2]「それでいて速い球も投げられる。来年は俺よりいいキャプテンになると思うぜ。」
年明[5、2]「ありがとうございますキャプテン!」
遊地[6、2]「豪[6、2]、お前のボールは俺にとっての誇りだ。」
遊地[6、2]「誰になんて言われても豪[6、2]のボールは速くて強いって俺は思っている。」
井村校長「あなたにはいい友達がたくさんいますね。お互いを尊重し合うのはとても良いことです。」
板倉先生「ふふ、彼らは全員私が担任するクラスですから。」
1組の6年生メンバーと3組チームの6年生メンバーも集まってきた。
尊は2年生の総太郎の首に腕を回して彼を連れながら寄ってきた。
晴香[6、1]「こっちはあんたたちに負けて悔しんだけどね」
大吾[6、1]「お互い全力で出し切れたんだ。悔いはないはずだろ?」
豪[6、2]「へへ3組チームにも勝ちたかったんだけどな。」
尊「欲張りだぞ豪[6、2]。」
尊「でも俺たち3組チームが勝ったから鉛筆1本はゲットしたぜ!」
全チーム1勝したため3チームそれぞれ鉛筆を1本獲得することができている。
結果から見てどのチームも納得のいく結果が出せたのではないだろうか。
鉛筆を1本貰えるだけでもみんな嬉しいはずだ。
尊「それにしても総太郎よくやったな!」
総太郎「はっはい!」
豪[6、2]「ボーナスチャンスがなかったらマジでアウトになってた。」
豪[6、2]「お前はきっと大物になるぞ。」
総太郎の活躍が3組チームに勝利を導いたと言っても過言ではなく豪[6、2]の速球を止めてその上実質1点奪っているからだ。
ここが3組チームと2組チームの勝負の分岐点だったのではないかと思われる。
幸助と薫の成長もチームの勝利に大いに貢献した。
幸助の進路についてちょっとだけ言及された。
板倉先生「他は決まってるみたいだが幸助はサッカーをするのか野球をするのかは決まったのか?」
幸助「まだ決めてないです。」
幸助「でも板倉先生のおかげでドッチボールのことしか考えてなかったので終わるまでドッチボールに集中できました。」
豪[6、2]「そうか。でもドッチボール楽しかったぜ」
幸助「俺もだ!」
幸助と豪[6、2]は互いに握手した。
薫「尊と豪[6、2]のためにも早いとこ決めておけよ」
幸助「わかってるぜ」
板倉先生「どっちを決めるのか幸助の自由だからな。幸助の選択に二人はとやかく言うなよ。」
尊「それは承知っス。」
井村校長「中学校に進学すれば魅力的な生徒と出会い新しい仲間ができるでしょう。」
井村校長「そして兼岩君に私が言えることは自分自身が選んだ道を後悔せず前を向いていて歩いてください。」
幸助「はいわかりました。」
井村校長「みなさん、とてもいいチームプレーで今回のドッチボールは大盛り上がりでした。」
井村校長「中学校では新しい仲間たちとともに協力し励んでください。」
板倉先生「井村校長、まだ運動会などのイベントが残っていますよ。」
井村校長「ははそうでしたね」
井村校長は6年生たちの今後の活躍を期待していた。
順子ちゃんも6年生たちの輪の中に入ってきた。
彼女も忘れてはいけない。
順子ちゃんこそがここぞというところで力を発揮し見事チームを勝利に導いた、ドッチボール大会のVIPなのだ。
豪[6、2]「負けたぜ宮沢順子。お前の強さ認めるぜ」
順子ちゃん「ふふーんそうでしょ!私が天下の順子ちゃんよ!ガハハハ!」
豪[6、2]「へ!やっぱりお前は生意気だな!」
豪[6、2]「運動会も頑張ろうな!」
順子ちゃん「おっす!」
順子ちゃんと豪[6、2]は握手した。
世代間のギャップはあれどとてもよい内容のドッチボール大会であった。
これにて新学期記念全校生徒ドッチボール大会は幕を閉じた。


順子ちゃん「よし!じゃあラーメンよ!」
豪「ラーメン?」
豪たちは何のことだかわからないが
順子ちゃんたちは真木と勇に勝ち点に応じてラーメンを奢ってくれるという約束をしているのだ。
各クラスそれぞれ教室へ戻っていった。
順子ちゃんたちが1年3組教室に戻ってきた。
清水先生「おかえり!どうだった」
清水先生は早速戻ってきた順子ちゃんたちドッチボールの大会の結果を聞いた。
順子ちゃんたちの表情は笑顔だった。
順子ちゃんの表情を見て清水先生は理解する。
清水先生「勝ってきたのね!」
良樹「はい!3組チームは1勝しました!」
クラス全員分の鉛筆を持ってきてそれを見せた。
清水先生「やったーーーーー!」
真木「順子ならやってくれると信じていたぜ!」
鉛筆1本だけだったがみんな大喜びである。
新しい鉛筆と共にこれからの2学期が迎えられそうだ。
順子ちゃん「そういうことで真木!勇!ラーメン奢ってもらうからね!」
苗「そうね。今度はあんたたちの番よ!」
真木「ああ!うまいラーメン作ってやるからよ!」
勇「お代わりしていいからね!」
順子ちゃん「え?いいの!?」
勇「うん!頑張ってくれたからね」
良樹「いつも勇は太っ腹だな!」
勝ち点に関わらず結果がよくなかったとしても
お代わりしてもいいしラーメンを順子ちゃんたちに奢ってあげようと事前に決めていたみたいだ。
順子ちゃん「じゃあおいしいラーメン期待しているわよ!」


後日、真木のラーメン屋である北岡ラーメン店は営業開始時間となり
約束の時間になり順子ちゃんたちが来るのを待っていた。
真木は頭にハチマキを巻き、勇はお金が入った封筒を握っていた。
真木の父「相変わらず橘君は気前がいいな!」
勇「ラーメン奢ると友達に約束したので」
勇「ではおいしいラーメン作ってください」
真木の父「はいよ!よし!真木!友達にうまいラーメン振舞うぞ!」
真木「よっしゃ!」
準備万端である。後は順子ちゃんが来るのを待つだけだ。
順子ちゃん「おーい!」
順子ちゃんの声が聞こえ店の外に出た真木と勇は手を振る。
順子ちゃんたちの姿を確認する。
順子ちゃん、友ちゃん、良樹、大気、苗…
勇「あれ?」
五人だけじゃなかった後ろから大勢の人が押し寄せてくる。
薫「ラーメン食うの久しぶりだぜ!」
幸助「うっしゃ!今日は食うぞ!」
豪「ここのラーメン屋食ってみたかったんだよな~」
大吾「大盛り頼むとするか!」
真木と勇「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
なんとドッチボール大会に参加した生徒九十人が一斉にやってきたのだ。
経緯はわからないが順子ちゃんがドッチボール大会終了後、事情をみんなに話していたらしい。
北岡ラーメン店に一般の客含め未曾有の行列ができる。
子供たちばかりで驚きを隠せない。
すぐさまこれがSNSで話題になってしまう。
真木家は全員分のラーメンを作るのに必死であった。
勇は全員分のラーメン代を支払うことになっていまい3ヶ月のお小遣いがなくなってしまった。
勇はドッチボール大会参加という怖いボールから避けることはできたが痛い出費が直撃してしまう。
そして真木家の北岡ラーメン店は過去最高の売り上げになったとか。

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