ジュンコチャン

第47話 眠れる獅子の目覚め

友ちゃんの呼ぶ声に順子ちゃんは目覚め再び攻撃に加勢する。
眠れる獅子は目覚め暴君に牙をむく。
下級生たちの意表を突くプレーに追い詰められ豪[6、2]は調子が狂い始める。
気持ちの整理とチームの態勢を整えるべく豪[6、2]たち2組チームはボーナスチャンスを引くことにする。
大詰めとなる3組チーム対2組チームのドッチボールの試合は
豪[6、2]が引くボーナスチャンスを引きにどのような展開をもたらすのだろうか。


井村校長が手に持つボーナス箱の前に立つ豪[6、2]はその箱に手を突っ込む。
箱の中に入っているたくさんの包み紙から手探りで
試合の展開を有利に進める内容を引くことに期待する2組チームの一方で
3組チームは豪[6、2]が外れクジを引くことを願っている。
豪[6、2]「これにするぜ!」
ボーナス箱の中から1つ包み紙を取り出した。
包み紙に書いてある内容を確認した豪[6、2]。
書いてあったボーナスチャンスの内容は「ボールチェンジ」だった。
豪[6、2]「ボールチェンジかあ~」
賢人[6、2]「なんか微妙だな」
豪[6、2]の引きを期待していたが仲間の反応はあまり良くなかった。
薫「それでもやだな~」
胸を撫でおろせるわけもなく3組チームにとっても大きなプレッシャーになる。
豪[6、2]の速球が連続で飛んでくることを考えたらまさにそれは脅威だ。
ちなみにこの3試合通して「ボールチェンジ」が引かれたので皆勤賞である。
佳奈[6、2]「う~んこれは大丈夫なのかしら?」
賢人[6、2]「いっいや俺たちのチームなら大丈夫っしょ!」
「ボールチェンジ」に不安視するメンバーがいるがそれもそのはず
全試合でこの「ボールチェンジ」を使ったチームはいずれも敗北しているのだ。
豪[6、2]「気にすることはねえ。今まで俺の引きがよかっただけさ」
豪[6、2]「俺が2組チームを勝利に導いてやるさ!」
遊地[6、2]「ああ!俺たちは勝てる!豪[6、2]ならやってくれるさ!」
豪[6、2]の前向きな姿勢がチームメンバーの気持ちを立て直す。
「ボールチェンジ」を引いたら負けというレッテルを豪[6、2]なら払拭できるかもしれない。
この「ボールチェンジ」は豪[6、2]の速球に対して使われると思われる。
間髪入れずに連続で速球が投げられるのは強力だ。
また豪[6、2]には「1発セーフ!」というボーナスチャンスが付与されているということで
3組チームが1歩リードしているがあまり差はない。
実際の2組チームの6年生メンバーは5人であるが実質6人と捉えてもいい。
6年生メンバーが一人アウトになっている3組チームの方が厳しい状況である。
それでも1歩リードしていることには変わりなく外野の隅で休憩していた順子ちゃんが動き始め
彼女のおかげで1歩リードすることができたのだ。
疲れは残っていると思われるがここからが順子ちゃんの根性の見せ所である。
ボールの所有権は2組チームでボールを持っているのは豪[6、2]からである。
今の豪[6、2]には不安と焦りがなく3組チームに勝ちたいという熱い闘志を燃え上がらせている。
豪[6、2]「いくぜ!1年!」
友ちゃん(また私!)
また豪[6、2]の速球が友ちゃんに飛んでくる。
友ちゃんは重心を低くして構えた。
風を纏うトルネードシュートが友ちゃんに一直線に向かってくる。
友ちゃん「うん!ぐ!」
しっかり体で受け止めボールを抱いて包み込むように止めた。
二度も速球を止めたことでまた体育館内は盛り上がる。
総太郎(すごいな~彼女も…)
友ちゃんの有志を近くで見ていて総太郎は感激する。
哲也[6、1]「お~あの1年もすごいな」
大吾[6、1]「ああ、いいセンスを持っている。ボールの取り方がしっかりしている。」
井村校長「今年の1年は言葉では言い表せないほどすごい力を持っていますね。」
井村校長「宮沢さんの活躍が影響を及ぼしたのでしょう。」
板倉先生「萱場さんのボールの取り方は正しいフォームができていてボールを取れています。」
板倉先生「ボールを恐れずに真っ直ぐ立ち向かう姿勢に感動しますね。」
観戦している大吾[6、1]と板倉先生たちは友ちゃんのボールの取り方を高く評価している。
重心を低くしてボールキャッチするやり方は体のバランスを保つことができ
強いボールを受け止める時も体がグラつくことなく安定してボールをとることができる。
豪[6、2]の速球のみならず速いボールにおびえる生徒は少なくない。
必ずしも重心を低くする姿勢で全てのボールをとることはできないが
友ちゃんのように逃げずに立ち向かう姿勢も大事である。
豪[6、2]「やるな!1年3組萱場友子!」
友ちゃん「勝つのは3組チームだよ!」
友ちゃんは豪[6、2]に勇気をもってボールを投げた。
しかし投げ方はまだ未熟でふわりと浮いた優しめのシュートだった。
そのまま豪[6、2]は片手でボールをキャッチされてしまった。
これではただのキャッチボールだ。
豪[6、2]「これじゃあ俺を倒すことはできないな」
豪[6、2]「もう一発行くぜ!友子!」
友ちゃん「はあはあ…はい!」
ボールから逃げるだけでも精一杯である1年生の彼女が6年生のシュートを止めてさらには勇気をもって攻めるのは素晴らしいことである。
困難な経験を乗り越えてきた友ちゃんだからこそ頑張れているのである。
しかし友ちゃんの呼吸は荒く体力は限界である。
まだ1年生で小さな体では6年生とのボールのやり取りを続けるのは厳しい。
豪[6、2]の速球の衝撃が彼女の小さな体に確実に響いている。
友ちゃんも順子ちゃんの二の舞になってしまうのか。


3度目の速球が友ちゃんに飛んでくる。
流石の友ちゃんもアウトになってしまうのか。
ここで薫がカッコいいところを見せる。
横から友ちゃんの前に立って代わりに豪[6、2]の速球を止めた。
友ちゃん「薫!」
薫「友ちゃん大丈夫か?」
友ちゃん「うん、ありがとう」
薫「豪[6、2]、そろそろ弱いものイジメはやめた方がいいかもな。」
豪[6、2]「フン!お前に言われたくはねえけどな!」
豪[6、2]「けどそいつは弱くなんかねえよ。」
豪[6、2]「脅威となる芽は先に潰しとかなけゃならないんでよ。」
勝つためなら妥協してはならない。
友ちゃんの強さを認めている豪[6、2]だが1年生と6年生の実力差は明らかである。
チームを守りリードを保つため薫はリーダーとしてなすべき行動をした。
薫「いけ!順子!」
薫は外野にいる順子ちゃんにパスをする。
豪[6、2]「チ!またあいつか!」
順子ちゃんに信頼を置いているため薫は彼女にパスした。
しかし豪[6、2]は順子ちゃんのことをあまり面白く思っていないようだ。
順子ちゃんに対して豪[6、2]の脳裏には生意気という漢字3文字が浮かび上がっている。
相手チームにいて敵だから当然の扱いではある。
豪[6、2]「年明[5、2]頼む!」
年明[5、2]「ういっす!」
年明[5、2]「ほらこいよ!敗北者!」
順子ちゃん「ぐうううう!やってやるわよ!ちくしょー!」
幸助「挑発に乗るな冷静になれ!順子!」
年明[5、2]に敗北者と言われてカッとなる順子ちゃんを落ち着かせようとする幸助。
順子ちゃんは年明[5、2]にリベンジするため彼に向ってボールを投げるのだろうか。
順子ちゃん「うれゃ!」
年明[5、2]「なに!」
順子ちゃんは年明[5、2]に顔を向いたまま違うところにボールを投げた。
順子ちゃんは年明[5、2]に向けてボールを投げたのではなく幸助にパスをしたのだ。
幸助はボールをキャッチしてすぐさま年明[5、2]に向けてスピードシュートする。
そして幸助の投げたボールは年明[5、2]に命中する。
年明[5、2]「うわあ!くそやられた!」
幸助「順子に気を取られ過ぎだぜ」
年明[5、2]「すみません!キャプテン!」
豪[6、2]「もういい、早く外野へ行け」
年明[5、2]「はい…」
年明[5、2]は足早に外野へ向かっていった。
ドッチボールは個人プレーではなくチームプレーであることを順子ちゃんは理解してきている。
年明[5、2]をアウトにしたことで3組チームはさらにリードする。
また豪[6、2]は焦り始める。
豪[6、2](ちくしょう順子め!3組チームめ!)
ボールを持った豪[6、2]は両手で潰すかのように力を込める。
豪[6、2](まずが下級生どもから潰す!)
総太郎「あ…くる~」
暴君の速球が自分に飛んでくると気づく総太郎。
順子ちゃんと友ちゃんの勇気を見て総太郎の心は揺れ動く。
容赦なく総太郎に速球が飛んできた。
この瞬間、総太郎は一人だけ時が止まり静寂した世界に包み込まれる。
ボールとの距離は自分よりも遠く感じる。
だが少しずつ動いている。風を帯び竜巻のようなボールが総太郎の前に押し寄せてくる。怖い。
このまま逃げてもいいのかと。
かといって点を取られるわけにもいかない。
聖次と和馬「総太郎!」晶弘と進「頑張れ!」
総太郎のクラスメイトが彼を応援する声が聞こえる。
総太郎「みんな!」
みんなから勇気づけられ豪[6、2]の速球に立ち向かうことを決意する。
豪[6、2]「まずはお前からだ!!」
総太郎(僕だって!!)
静寂した世界から元の世界へと戻り総太郎は体を丸めながら両腕で包み豪[6、2]の速球を止めた。
豪[6、2]「なんだと!?こいつもか!?」
総太郎「うおおおおおおあああああ!」
総太郎は叫びながらボールを力いっぱい投げた。
豪[6、2]「あっしまった!!!!」
驚きのあまり豪[6、2]はボールを取ることができず総太郎の投げたボールは豪[6、2]の膝に命中した。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
これまでにない以上の歓声が体育館内に鳴り響く。
板倉先生「ハハハハハハハ!これはたまげたな。」
板倉先生「してやられたな豪[6、2]。」
井村校長「ほほほほう!今回のドッチボール大会は本当に盛り上がりますね。」
井村校長は拍手し大喜びである。
尊「やったぜ!総太郎ナイス!!」
6年生の尊は2年生の総太郎とハイタッチした。
総太郎「どんなもんだい!!」
尊「これで豪[6、2]はアウトだ!外野へ行きな!」
しかし豪[6、2]の闘志の火は消えていない。
豪[6、2]「いや…まだだ俺はアウトじゃねえ…忘れたか?」
尊「あ!「1発セーフ!」か」
豪[6、2]には「1発セーフ!」のボーナスチャンスが付与されていた。
だから今のアウトではなくセーフとして扱われ総太郎の成果は虚しくも振り出しに戻ってしまった。
総太郎「そうだった~」


豪[6、2](俺の自慢のシュートはもう通用しないと言う訳か…)
豪[6、2](悔しいが認めざるを得ないな…)
豪[6、2]は苛立ちや焦りはなく大人しい。戦意喪失したのか。
遊地[6、2]「豪[6、2]…」
静かにボールを拾う豪[6、2]の姿に心配する遊地[6、2]。
豪[6、2]「フフフ!ハハハハハハ!すげえぜ!楽しいぜ!」
豪[6、2]は高らかに笑った。
豪[6、2]「遊地[6、2]、年明[5、2]、みんな俺に力を貸してくれ!」
遊地[6、2]「ああ!!俺たちは初めからそのつもりだぜ!」
年明[5、2]「はい!キャプテン!」
豪[6、2]の掛け声で一致団結した。
豪[6、2]「いくぞ3組チーム!!」
豪[6、2]は3組チームにシュートする。
しかしいつもの速球のように力強く荒々しいシュートではなく速度は緩やかで外野に飛んでいく。
遊地[6、2]にボールが行き、すぐさまシュートしてそこから年明[5、2]にボールが行く。
年明[5、2]は手首にスナップを効かせてカーブボールを投げる。
薫「来たか!」
カーブボールの軌道を読もうとしたがそのボールの軌道は大きく2組チームの内側コートに入っていく。
薫「なに!?」
コートの内の手前で賢人[6、2]がキャッチした。
賢人[6、2]「それっと!」
友ちゃん「あ!」
賢人[6、2]のシュートが友ちゃんに命中した。
薫「友ちゃん!」
2組チームの連係プレーで友ちゃんがアウトになってしまった。
豪[6、2]は自分の自慢の速球が通じないと自ら悟り気持ちを切り替えて自分の速球に頼らずチームで連携してプレーすることを意識し始める。
速球一辺倒の戦い方ではなくなり2組チームはさらに進化を遂げた。
板倉先生「豪[6、2]も成長したな。」
友ちゃんがアウトになってしまったことで3組チームの1年生メンバーは全滅してしまった。
2組チームの猛攻は続く。またしてもボールは2組チームに取られてしまう。
豪[6、2]「さあいくぜ!」
薫(どっちでくる!つもりだ)
豪[6、2]が速球してくるか仲間にパスするのか薫は読んでいた。
豪[6、2]「それ!」
薫「あ!やべ!」
豪[6、2]は速球を投げると思いきや味方の外野にパスし遊地[6、2]がボールを持って薫に投げつける。
遊地[6、2]「アウトだぜ!薫!」
薫「うわあ!危ねえ!」
なんとか薫はボールをキャッチした。
豪[6、2]「ボーナスチャンス!」
薫「え?」
2組チームはボーナスチャンス「ボールチェンジ」が使用される。
豪[6、2]「ほらボール返してもらうぞ!」
薫「くそ!」
ボールを叩きつけるように投げた薫。
一度ワンバウントして豪[6、2]の手元にボールが乗っかった。
薫(どっちだ?)
再び豪[6、2]が速球してくるか仲間にパスするのか薫は読んでいた。
薫は豪[6、2]のプレーを見て今までとは違うと判断し味方にパスすると読んでいた。
しかし
豪[6、2]「もらった!」
薫「うあああ!」
悠太「薫!」
豪[6、2]はいきなり速球してきて薫に命中してしまった。
やはり豪[6、2]のシュートは強い。
いつ速球が飛んでくるのかわからないのがその強力さを増すことになる。
板倉先生「やっとお前の持ち味を活かせるようになったな。」
豪[6、2]の速球は単なる個人プレーではなくチームプレーで力を発揮するのだ。
3組チームの6年生が二人もアウトになるのは痛い。
6年生メンバーは復帰権を持つ幸助と合わせても三人しかいない。
再びピンチとなった3組チーム。
薫「こうなったらボーナスチャンスを使うぜ!」
尊「おっしわかったぜ!」
悠太「それしかないだろうな!」
薫「俺が引いてくる!」
全試合を通して引きに恵まれない3組チーム。
リーダーである薫がまたボーナスチャンスを引くようだ。
今度こそ逆転の一手を引きたい。
幸助「薫頼む!」
景子「お願い!」
薫は井村校長が手に持つボーナス箱の前に立った。
そして豪[6、2]の時と同じように板倉先生が寄ってきれ語りかけてきた。
板倉先生「2組チームは手強いな」
薫「豪[6、2]がなんか変わった気がしますね。」
板倉先生「こんな土壇場で豹変するとは急にやっかいになっちまったな」
板倉先生「あいつらの担任なんだがそっちも負けていられないよな」
薫「はい勝ちたいっすよ」
井村校長「では杉原君ボーナスチャンスを引いてください。」
薫「はい!」
井村校長「あなたの引きにチームの命運がかかっています。」
おっしゃる通りまさに薫のボーナスチャンスの引きがチームの命運を左右される。
薫はボーナス箱に手を突っ込んだ。
1つ包み紙を取り出し広げてボーナスチャンスの内容を確認した。
ボーナスチャンスの内容は「外野一人復活!」である。
幸助「やった!!」
薫「これはいいぞ!!」
3組チームに勝利の女神が微笑んだというのか、試合終盤で一番の引きを見せる薫。
メンバーを一人復活できるのは大きい。
早速使用するそうで薫たちは誰を復活させるだろうか。
やはりリーダーである薫自身を復活させるのか。
薫「よし順子!復活だ!」
順子ちゃん「え?私?」
なんと薫は順子ちゃんを復活させるそうだ。
幸助「薫の判断に任せるぜ」
薫「俺が外野にいって連携を取る。」
悠太「確かに薫が外野にいたほうがいいな。」
尊「いい判断だと思うぜ!」
景子「じゃあ幸助と交代ということね」
薫「ああ。幸助内野に復帰してくれ」
幸助「おう!リーダー!」
6年生メンバーは順子ちゃんの復活に賛成し薫と交代する形で幸助が内野へ復帰する。
薫「豪[6、2]に負けっぱなしじゃいられねえんじゃねえか?」
順子ちゃん「うん!負けられない!ありがとう!恩に着る!」
友ちゃん「よかったね順子ちゃん!」
良樹「バシッと決めてこい!」
大気「やっぱり順子だよな!」
苗「今度こそ勝ってきて!」
1年生メンバーは順子ちゃんが内野へ復帰していく姿を見届けた。
3組チーム内野にスピードシュートの持ち主幸助と期待の新星野獣乙女順子ちゃんが立った。
豪[6、2]「とうとう来たか幸助!」
豪[6、2]「後、順子の復活とは驚いたぜ。」
順子ちゃん「リベンジよ!」
豪[6、2]「望むところだぜ!」
復活した順子ちゃんは豪[6、2]に勝つことができるのだろうか。

続く

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