第43話 主役は6年生
1組チーム対3組チームのドッチボールの試合は1組チームの勝利するという結果になった。
6年生相手に善戦し活躍した順子ちゃんだったが
真木と勇との約束で勝ち点に応じてラーメンをご馳走してもらえることだったが
1組チームに敗北してしまったことでおかわり分のラーメンを取り逃し落胆してしまう。
彼女はさておき幸助や薫など6年生メンバーは1組チームとの試合を通じ成長しまとまってきている。
しかし3組チームの次の相手は2組チームである。
2組チームは1組チームを倒した強豪チームだ。
強豪と言えるだけのことはあり豪[6、2]の速球は脅威である。
優勝候補とされている2組チーム相手に3組チームは勝つことができるのだろうか。
薫「いいか順子、豪[6、2]のシュートは今までより桁違いに速くて強い」
薫「やつのボールだけは注意しろよな。」
順子ちゃん「そうね、もうこれ以上は負けられないわ!」
薫「ああ!そうだな!」
友ちゃん「多分、順子ちゃんのやる気はラーメンのことかも」
良樹「だろうな」
薫たち6年生メンバーと意気投合している順子ちゃんだが
彼女の頭の中はドッチボールのことではなくラーメンのことなのかもしれない。
既に一杯取り逃しているので順子ちゃんにとって違う意味で2組チームとのドッチボールは負けられない戦いなのだ。
ここから作戦会議である。
2チームそれぞれ最初の外野を一名決めるのだが3組チームは幸助が行くことになった。
薫「じゃあ幸助、外野の方はお前に任せた。」
薫「2組をガンガン外野に送り込ませてやろうぜ!」
幸助「了解!リーダー」
景子「なるほど、幸助との連携で攻めていくってことね。」
薫「ああ、前回の反省も含めてそれを活かしてだな」
悠太「けどあれって1組の防御を崩すための作戦だったから仕方ねえんじゃねえの?」
薫「まあな。けどそれが負けた原因であることは否定できないかもしれない。」
薫「今回はできるだけ俺たち6年は内野を守って外野は幸助だけに任せたい。」
1組チームの防御を崩すため6年生メンバーをわざと外野に行かせて攻撃の手数を増やした。
その作成が機能し1組チームを追い詰めることができたが結果的に人数差で負けてしまっている。
2組チームは豪[6、2]がいることで1組チームより攻撃力がある。
だから今回の試合は防御がかなり重要になってくる。
注意するべきはやはり豪[6、2]の速球である。
尊「終盤の活躍を見ていたら外野は幸助が適任だな。」
薫「2組がどうでてくるかだが豪[6、2]のシュート中心で攻めてくると思う。」
尊「防御も固めとかなきゃいけねえってことだな。」
尊「そんでもってこっちも攻めていくってスタンスだな。」
2組チームは攻撃力はあるが1組チームよりは防御力はないはずである。
外野の幸助との連携で攻めながらその他の6年生メンバーで内野の守りを固めていく。
慎重に防御を固めながら積極的に攻めていくのが薫の作戦である。
しかし客観的に見ると特筆すべき点はなくドッチボールでは理想かつ基本的な動き方である。
作戦というよりかは3組チームの戦い方が出来上がってきたと言える。
外野の幸助のシュートと内野の薫たち6年生メンバーとの連携攻撃
そして順子ちゃんのポテンシャルで2組チームを追い詰めていくだろう。
一方で豪[6、2]率いる2組チームの作戦会議では
3組チームが1組チームの試合終盤で見せた幸助と薫のコンビネーションと
順子ちゃんの攻撃を要にしてくると考えその対策を立てている。
賢人[6、2]「あの1年も厄介だが幸助のシュートもバカにできないな。」
豪[6、2]「幸助いい肩持ってるな。気に入っちまったぜ」
豪[6、2]「サッカーに行くには勿体ねえ逸材だぜ。」
遊地[6、2]「幸助も野球誘うのか?」
豪[6、2]「おうそれはいいな。誘ってみるか」
幸助のシュートを見て豪[6、2]は気に入っているようで野球の勧誘を検討しているようだ。
おそらく中学校の進学の際に、野球部に誘うところまで見据えているはずだ。
豪[6、2]は気に入ったものは何でも自分のものにしたい性格で気に入らないものはとことん排除するのだ。
性格ゆえに暴君として相応しい。
佳奈[6、2]「そんなことよりどうするの?豪[6、2]頼りでいいかしら?」
沙織[6、2]「もうそんな感じでいいんじゃない?1組には勝ってるわけだしね。」
賢人[6、2]「まあそれでも手を抜くわけにはいかないさ。」
遊地[6、2]「チームだって俺たちも負けていない。」
3組チームはまとまってきており幸助や順子ちゃんなど魅力的なメンバーが揃い踏みだが2組チームも負けていない。
2組チームの6年生メンバーには少年野球をやっていて速いボールを投げる豪[6、2]こと厚木豪は
リーダーとしてもちろんのことチームには運動神経の良い6年生陣が揃っている。
賢人[6、2]こと小野寺賢人は尊と同じく少年サッカーをやっていて
ミッドフィルダーを担当していて尊の戦い方を見て参考にしているはずだ。
また遊地[6、2]こと森田遊地はサッカーを中心にやっているが
中学から野球がしたいということでその準備として野球に関して勉強をしており
豪[6、2]の誘いで少年野球の練習に参加している。
そして実際の野球の試合の観戦ではベンチ組として豪[6、2]の応援をしているらしい。
夏休みに少年野球ではジュニアカップというのがあるのだが豪[6、2]の少年野球チームは2回戦で敗退である。
上には上がいて豪[6、2]の速球を持ってしても敵わない、それがスポーツ界では厳しい世界なのだ。
しかし決して豪[6、2]の速球が弱いわけではなく少なくともこのドッチボールにおいては強力だ。
2組チームの男性陣は運動神経もよくサッカーや野球などボールの扱いにも長けている。
そして女性陣は二人でまず佳奈[6、2]こと小島佳奈は景子と同じくテニスをしてるが
動機は違っていて彼女には3歳上の姉がテニスをやっていてそれに興味を持って始めたのがきっかけである。
佳奈[6、2]がテニスを始めたのが3年生の後半のため、景子より遥かに長くテニスを経験している。
テニスで得た経験はボールを目で見て追って対処する点で活かすことができる。
沙織[6、2]こと関根沙織はスイミングスクールに4年生から通っている。
進学先の中学校はプールはあるが水泳部はないらしく吹奏楽部に入部しようか検討しているそうだが
フルートやホルンなど息を使う楽器などに泳ぎで得た肺活量が活かせるのかもしれない。
しかし今のドッチボールでは、活かせるところはなさそうだが
持久力が武器になるはずで制限時間内まで生き残ることができれば勝利に貢献できるかもしれない。
1組チームとくらべて防御力は劣るが6年生のメンツを見るとそれぞれ個人の能力が高く
その中でも豪[6、2]が秀でている。
1組チームとの試合同様に3組チームも豪[6、2]の速球中心に攻めていくはずだ。
佳奈[6、2]「豪[6、2]、3組におもいっきりおっぱじめなさい。」
豪[6、2]「おうよ。他もボールが取れそうなら取りに行って積極的に投げていってくれ」
遊地[6、2]「わかったぜ!」
2組チームのリーダーは豪[6、2]であり彼が牛耳っているがこちらも全体的にまとまっている印象だ。
沙織[6、2]「あの子をどうするかもう決まってるの?」
豪[6、2]「例の1年のガキか。名前なんつーんだっけ?」
沙織[6、2]「宮沢順子よ。」
豪[6、2]「わかった。今日だけ覚えてやろう」
順子ちゃんの名前を覚えた豪[6、2]だが今日限りである。
ドッチボール大会が終われば記憶は頭の片隅においやられてすぐに消え去ってしまうだろう。
順子ちゃんは豪[6、2]にどれだけ印象を付けられるのだろうか。
豪[6、2]「軽く捻り潰してやるか。そうだいい考えがあるぞ。ちょっとみんないいか?」
豪[6、2]は作戦は何なのかこの後すぐに明かされる。
コート内に2チームが集まった。
3組チームの外野は幸助が、2組チームは遊地[6、2]が配置された。
薫「豪[6、2]が内野だと!?」
豪[6、2]「別に驚くほどのもんじゃねえだろ」
1組チームとの試合では最初豪[6、2]は外野から攻めていた。
豪[6、2]が内野にいることで守りが固くなるが射程は正面に絞られる。
単純に右と左と後ろの3方向から攻めることができる外野のほうがより
速球の持ち味を活かせる上に相手チームにプレッシャーをかけることができるのだが
内野での生存率が高い豪[6、2]がなぜ復帰権を得ずに内野を選んだのか。
板倉先生「2組チームと3組チームの試合を始める。」
板倉先生「2組チームから先行だ。」
板倉先生は2組チームの内野の方に軽くボールを投げて2バウンドした後ボールは豪[6、2]の手元になった。
総太郎「え?僕たちのチームが先じゃないの?」
尊「そりゃそうだろ。1組との試合ではあいつらは後攻だったからよ。」
尊「そしてうちらは1組に先行取ってたから今度はこっちが後攻になるはずだ。」
総太郎「じゃあもういきなりくるじゃ〜ん」
尊「そういうことだ。腹くくっておけ」
2組チームが先行であり開幕から暴君の速球が飛んでくるということで総太郎は怯え始める。
板倉先生がホイッスルを吹いて試合開始である。
試合が始まったがなんと2組チームは豪[6、2]以外の内野は全員後ろに下がって彼が前に出ている陣形になった。
薫「豪[6、2]だけに前に立たせて何を考えているんだ?」
これが豪[6、2]の作戦なのか。
豪[6、2]「宮沢順子出てこい!」
順子ちゃん「え?私?」
名指しされたので返事をして前に出た順子ちゃん。
豪[6、2]「俺と勝負だ。」
薫「それがあいつの狙いか!」
悠太「だったら外野でもよくねえか?」
薫「一対一でやりてえんだろうよ」
外野からでも順子ちゃんを狙えるが豪[6、2]が内野を選んだのは順子ちゃんと一対一でボールのやり取りをしたいからである。
薫「おい!順子、あんな挑発に乗るな!」
1組チームの大吾[6、1]との一対一のように苦戦を強いられていたことからも順子ちゃんには豪[6、2]との一対一はおすすめできない。
ボーナスチャンスが使えない序盤ではまず勝てない。
豪[6、2]「もうお互い向き合って立ってちゃ相手せざるを得ないだろ?」
豪[6、2]「ボールはこっちにある。相手にしなくたってこっちはお前に集中してボールを投げていくだけさ」
豪[6、2]の言葉通りボールは彼らが持っていてさらに彼がチームの攻撃の中心にある。
彼が主導権を持っている限り順子ちゃんは試合中執拗に速球が飛んできてしまうだろう。
標的が順子ちゃんに絞られればしばらく他のメンバーは暴君の速球に怯えなくてもいいが
順子ちゃんが避けたボールが他のメンバーに被弾する可能性もあり急に標的を変える恐れがありそれはすでに前回の試合で学んでいる。
順子ちゃんは豪[6、2]との勝負を引き受けるのだろうか。
順子ちゃん「ふーん、受けて立つわ」
順子ちゃんは涼しい顔で豪[6、2]との勝負を引き受けた。
薫「考え直せ順子!」
前回の試合を見れば豪[6、2]との勝負をやめさせたい薫である。
順子ちゃんの活躍を見れば2組チームにとって厄介な存在であり野放しにはしたくないのだ。
序盤のうちに潰しておきたいという魂胆だ。
どちらにせよ不利になるのなら順子ちゃんは正々堂々豪[6、2]と勝負を受けることにしたのだろうか。
しかし彼女のあの余裕そうな表情はいったいなんなのか。
順子ちゃん「あんた誰?」
全員ズッコケた。
いったい1組チームと2組チームの観戦で何を見ていたのか。
良樹「はあ〜真木のラーメン相当効いているな」
苗「見ているこっちも恥ずかしくなってきたわ」
順子ちゃんの目にはラーメンしか映ってなく一人だけ違う世界にいたようだ。
あの余裕な表情も豪[6、2]の速球とはなにか理解していないということだ。
豪[6、2]「フッおもしれえやつだな。ならわからせてやるよ。」
思いっきり順子ちゃんに自慢の速球を食らわせる。
順子ちゃん「うお!ぐうぅぅぅ!」
キャッチすることはできたが強い衝撃を受け1歩2歩3歩さらに4歩後ろに下がってしまった。
順子ちゃん(え?なにこのボール!?)
手や指にしびれを感じ、豪[6、2]の速球がいかに脅威的なのか身を持って知ることになる。
豪[6、2]「ほう〜やるじゃん1年」
賢人[6、2]「あいつ豪[6、2]のボールまで止めやがった!」
「おおおおおおおおおおお!」
体育館内は驚きと喜びの声で包まれる。
総太郎「すごい!順子ちゃん!あんなものまで止めるなんて」
トラウマである豪[6、2]の速球を止めてくれる人がいて総太郎はにっこりである。
1組チームとの試合でも順子ちゃんの活躍は目を見張るものだが
2組チームとの試合で豪[6、2]の速球を止めることができさらに一段と彼女に注目は集まり3組チームに期待が寄せられる。
哲也[6、1]「豪[6、2]のボールまで止めちまうのか。本当にあいつはなにもんだ?」
大吾[6、1]「只者ではないようだな。」
大吾[6、1]「だが豪[6、2]を相手にするのは流石に厳しそうだな。」
哲也[6、1]「え?」
1組チームは体育館ステージで観戦しているのだが大吾[6、1]は何かを察し順子ちゃんの身を案じているようだ。
薫は順子ちゃんの異変に気づいた。
薫「大丈夫か順子?」
薫「あいつのボールやっぱりやべえな」
余裕そうだった表情は今や顔は引きつっている。
だが順子ちゃんはへこたれなかった。
順子ちゃん「はあはあ‥こんなの熊なんかと比べたらへっちゃらよへっちゃら!」
薫「え?熊!?」
夏休みのお盆で熊と対峙したことがある順子ちゃん。
確かに比べれば熊のほうが桁違いではある。
しかし何度も豪[6、2]の速球を受けられるのだろうか。
今ここに野獣乙女順子ちゃんと速球の暴君豪[6、2]の熱い一対一の戦いが始まる。
だがいつまで続くかわからない。
薫「あいつがボールを持てばお前に毎回投げてくるぞ、どうするんだ?」
順子ちゃん「へへ私、人気者ね。」
順子ちゃん「どうするって?だったらやるしかないじゃない!」
順子ちゃんも豪[6、2]との一対一を望んでいる。
やると決めた順子ちゃんは誰にも止められない。
豪[6、2]「さあこい!お前の番だ!」
順子ちゃんも豪[6、2]に負けず豪快にボールを投げた。
しかし豪[6、2]に平然とキャッチされてしまった。
豪[6、2]「ふむふむまあまあ速いボールかな」
実際にボールをキャッチした豪[6、2]の率直な感想である。
並大抵の子たちなら順子ちゃんのボールは十分強力であるがスポーツマンや屈強な男には少々物足りないか。
豪[6、2]「強くて速いボールとはなにか身を持って知るがいい!」
ゴオッ!と音を出し風をまとう竜巻のようなシュートが順子ちゃんを襲う。
ボールを包み込むようにキャッチしそして数歩後退する。
順子ちゃん「うおおおおお!」
大きな声をあげて後は根性で食い止める。
順子ちゃん「はあはあ‥」
順子ちゃんのやる気と根性メーターはまだまだ9割あるが体力メーターは限界ギリギリだ。
薫「もう無理するな順子!」
豪[6、2]「もうあきらめたほうがいいかもな」
1組チームの試合で体力を使い果たしてしまっているようだ。
その疲れている表情は隠しきれておらず目で見てわかるくらいである。
順子ちゃん「はあはあこいつをなんとかしないとみんなが大変じゃないの?」
ここで順子ちゃんが負ければ次は他の3組メンバーに豪[6、2]の速球が飛んできてしまう。
良樹「順子‥お前‥」
総太郎「カッコいい‥」
体を張ってみんなを守る順子ちゃんに心惹かれる。
順子ちゃん「うれゃああああぁぁぁあ!」
もう一度豪[6、2]にボールを投げるがビクともせずボールを軽々と止められてしまった。
豪[6、2]「さっさと外野へいけ!」
豪[6、2]「いいか?このドッチボール大会の主役は俺たち6年生だ!」
6年生が主役であると主張する豪[6、2]。
板倉先生「豪[6、2]‥あいつめ‥」
井村校長「本来はドッチボールを通じて全校生徒が交流の機会を設けるためのものですが‥」
豪[6、2]の主張は、新学期記念全校生徒ドッチボール大会の在り方を履き違えている。
豪[6、2]「1年でこんなにやれるなんて普通ありえねえよ」
豪[6、2]「俺が1年だった頃あんなに動けなかったし活躍できなかった。むしろ怖かった!」
井村校長「彼の気持ちもわかりますね。」
井村校長「6年間辛い思いもされてきましたよね。他の学年も」
井村校長「この企画も見直さなければいけないかもしれませんね。」
板倉先生「そうですね‥」
豪[6、2]たちが1年生だった頃当時の6年生たちに翻弄されてまったく歯が立たなかった。
むしろそれが普通であり年齢差や体格差などまったく違えば話にならず
豪[6、2]が言うようにこのドッチボールの大会は6年生が中心であるという主張は間違ってはいない。
だが6年生が中心であるという常識が順子ちゃんによって覆されようとしている。
順子ちゃんの存在が影響し無視できない存在になってきている。
味方側であり3組チームは順子ちゃんを攻撃の要として組み込んでいる。
出場できなかった桂里奈の代わりが1年生の女子が担っているようにも見えてしまう。
順子ちゃん「はあはあ‥それが何?悪いかしら?」
順子ちゃん「こっちだって負けられないのよ!」
豪[6、2]「全力で捻じ伏せるまでだ!」
3度目の速球が順子ちゃんを襲う。
順子ちゃん「うおおおお!おっと‥はあ!はあ!」
3度目のボールをキャッチしたが転びそうになるがなんとか踏ん張った。
賢人[6、2]「また止めたぞあいつ。しぶといな。これで3度目だ」
豪[6、2]「国語で習ったっけ、二度あることは三度あるって」
豪[6、2]「だが俺のボールを受けてだんだんふらついてきている。」
豪[6、2]「もうそろそろダウンするころだ。」
順子ちゃん「まだ私はボールを持っている。」
順子ちゃん「負けてたまるもんか!」
順子ちゃん「フン!」
しかし無情にも順子ちゃんのボールは豪[6、2]に片手で止められてしまった。
豪[6、2]「ボールのパワーとスピードが落ちてきているぞ」
豪[6、2]「さっきまでもの威勢はどうした?あきらめたほうがいいんじゃねえか?」
順子ちゃん「まだよ!あきらめてたまるもんですか!」
薫「もうやめとけよ!順子、あいつには敵わねえ」
豪[6、2]「リーダーも大変だな。言うこと聞いたほうがいいかもな」
豪[6、2]「これ以上か弱い女にボール投げるのは心が痛むぜ〜」
順子ちゃん「バカにしないでちょうだい!」
尊「ふざけんなお前が先にやってきたんだろうが」
豪[6、2]「薫、悠太、尊、そして幸助俺は正々堂々お前たちとドッチボールがしたい。」
豪[6、2]「こんな1年に振り回されたくはねえんだよ」
幸助「豪[6、2]‥」
豪[6、2]「ここは俺たち6年生の活躍の場だ」
豪[6、2]「1年3組宮沢順子、お前の活躍はまだ早すぎる。」
豪[6、2]「来年はお前の好きにやっていい。お前みたいのが来年やってきてもお前は活躍できるさ。」
豪[6、2]「今は俺たち6年の背中を見て育て!」
井村校長「なんだが厚木君の気持ちが伝わってきますね。あれが彼の6年間の思いでもありますか。」
井村校長「このドッチボールの企画は6年生が中心であることは否定できないかもしれません。」
井村校長「悪いところが目立って見えると見直そうか考えてしまいますが」
井村校長「それがあるからこそ子どもたちは成長していくのですね。」
井村校長「毎回こういうのを見ると何度も気付かされます。」
板倉先生「豪[6、2]の考えにちょっとムカッときますがあいつは大胆なりに自分の意見はまっすぐに言うから私は嫌いになれないんですよ」
板倉先生「あいつの投げるボールからそれが伝わってくる。」
1年である順子ちゃんがドッチボールで活躍を見せ目立ってきている。
活躍という大輪の花を咲かせて。
しかし暴君である豪[6、2]が踏み潰そうとしている。
だが豪[6、2]は順子ちゃんに来年からは好きにやっていいと言っている。
来年順子ちゃんが参加すれば相手チームは彼女を意識して対策するだろうし
もしかしたら来年順子ちゃんよりすごい子がやってきて話題を持っていかれるかもしれない。
そうなっても順子ちゃんはきっと活躍するだろうとのこと。
花は踏みつけられたとしてもまた復活してすくすくと育ち再び大輪の花を咲かせることができるはずだ。
しかし今は豪[6、2]たち6年生が6年間を思いをぶつけていく場である。
だから1年生である順子ちゃんはお役御免ということだ。
このドッチボールの企画は確かに6年生が主役かもしれない。
それは井村校長も他の先生も理解している。
でもそれが下の学年たちを成長させるきっかけを生んでいる。
全学年の交流の場としての役割も果たしていると言えるかもしれない。
順子ちゃん「いやよ!今だって暴れたいのよ!」
豪[6、2]「聞き分けのないやつめこれ以上お前を目立たせるわけにはいかねえ!」
豪[6、2]「くらいな!!」
4度目の速球が一直線に順子ちゃんに飛んでくる。
順子ちゃん「うおおおおお!ラーメン!」
気勢を上げてボールをキャッチしようとしたが
順子ちゃん「うああああああああああああ!」
ボールをキャッチすることができず順子ちゃんは倒れてしまいそれと同時にボールは床に弾んでしまった。
良樹「順子ーーーーー!」
友ちゃん「キャーー!順子ちゃーーーーん!」
順子ちゃん「くっくそ〜」
豪[6、2]の思惑通り早々に順子ちゃんは内野から退場されてしまった。
3組チームの期待の新星順子ちゃんが試合開始3分で外野へ行ってしまい2組チームとの試合は大波乱の予感である。
続く
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