ジュンコチャン

第41話 特別なボーナスチャンス

6年生メンバーを何人か外野に行かせて攻撃の手数を増やす薫の作戦が功を奏し1組チームの鉄壁の防御に傷をつけることに成功する。
防戦一方どころか何もできなかった3組チームだったが1組チームと人数差を縮め互角に戦えている。
そして我らが順子ちゃんも活躍を見せる。
6年戦の本気のボールをキャッチした上に豪[6、2]にも匹敵するほどの速球を投げて相手チームを圧倒している。
順子ちゃんの速球で6年生メンバーである哲也[6、1]を落とし壁を1枚剝がしたのだ。
その活躍ぶりはドッチボール慣れしてきた初心者ではなく主力メンバーの一人として確立していると言っていい。
3組チームの期待の新星は豪[6、2]を受け継ぎ暴君2世へと誕生するのだろうか。
今後の彼女の活躍に期待したい。
しかし彼女、いや3組チームには越えねばならない壁がある。
1組チームに勝利するには鉄壁の防御をいかに崩していくかがカギになる。
攻撃の糸口は見えてきたが未だ牙城を崩せていない。
さらにそこからたまた分厚くて固い壁が出現した。
哲也[6、1]をアウトにさせた後、入れ替わる形で外野から大吾[6、1]が内野に入った。
1組チームの切り札である大吾[6、1]の出陣である。
桂里奈と同じく彼は柔道を習っている。
大吾[6、1]は鍛えあげた身体とフィジカルさを武器に豪[6、2]の速球を止めて見せた。
順子ちゃんの前に大吾[6、1]が立ち塞がり、彼女の本気のボールは止められてしまう。
1組チームも負けてはいられない。
まだまだ苦戦を強いられる3組チーム。
次の2組チームの試合のためにも勝ち星をあげたいところだが果たして1組チームの鉄壁の防御を攻略して勝利を収めることができるのか。


ボールは大吾[6、1]が持っており1組チームがボールの所有権を持っている。
狙いは全て順子ちゃんに定めている。
大吾[6、1]はここで順子ちゃんを落とす気でいるのだ。
ドッチボールのルールにおいて外野の人が内野をアウトにさせることによって内野に復帰することが可能だが
この学校の新学期記念全校生徒ドッチボール大会の独自ルールにより相手チームの内野をアウトにさせても復帰することはできないそうだ。
他にも内野同士のパスは回しは同様に禁止で外野同士のパス回しも禁止されていて相手のコート内を通らなければならないのが
本来のドッチボールのルールだがこの大会の独自ルールでは相手のコート内を通らなくても外野同士でパス回しが可能である。
つまり外野に送られた順子ちゃんにボールが集まる可能性があり
外野から速球が飛んでくる恐れはあるが3組チームの内野の戦力は大幅に弱体化する。
この戦いに早期決着をつけたい。
大吾[6、1]「くらえ!!」
力強いボールが放たれる。
順子ちゃん「なんの!これしき!」
大吾[6、1]のボールを止める順子ちゃん。
最初の1発目のボールとは違い2発目のボールは一歩も引かずにキャッチすることができた。
しかしボールの威力は衰えておらずむしろ増してきていて衝撃で手にしびれを感じた。
順子ちゃん「もっと強いボールを投げてきなさい!」
順子ちゃん「フン!」
体重をかけながら前のめりになって腰と足に力を入れて踏み込み投球する。
大吾[6、1]「威力とスピードが落ちてきているぞ」
また順子ちゃんのボールを顔色一つ変えることなくキャッチした。
本気のボールと思えた先程の順子ちゃんの投球は威力が落ちていて大吾[6、1]は肩透かしを食らったようだ。
順子ちゃん「はあはあ…ちょっと下手に力んじゃっただけよ!」
そう強がる順子ちゃんだが息を切らしており腰を低くして両膝に両腕をおいて次のボールに備えていた。
試合が開始されてから15分が経過したが順子ちゃんはペース配分を気にせず最初から力を出し過ぎていた。
特に肩にかなり疲労が溜まっている。
6年生と渡り合いそれ以上の動きを見せるが体力に限界がきているようだ。
しかし1年生の女子ながらここまでできるのは流石である。
6年生たちと比べて順子ちゃんの体は丈夫ではない。
持久戦になればならほどかなり順子ちゃんは不利になる。
大吾[6、1]「どうした疲れたのか?」
大吾[6、1]「君はよく頑張った。ご苦労さん」
順子ちゃん「なによ!私はまだ負けていないわよ!はあはあ…」
威張っている順子ちゃんであるが疲れの色を見せてしまっている。
大吾[6、1]「これで終わりだ。とどめを刺す!」
風邪を帯びながら順子ちゃんの方に真っすぐボールが飛んでくる。
ボールを取ろうとした順子ちゃんだったが薫が割り込んで代わりにボールをキャッチした。
順子ちゃん「薫!何してんのよ!邪魔しないでよ!」
薫「無茶するな!ヘロヘロじゃねえか!」
薫「この後2組チームともやらねきゃいかねえんだぞ!」
順子ちゃん「はあはあ……あんなボール取れたわよ」
まだボールを取れたかもしれないがこのまま大吾[6、1]と一騎打ちを続けていればいずれ体力が尽きて負けてしまうだろう。
順子ちゃん「でも負けっぱなしじゃいられないのよ!友ちゃんがやられているのよ!」
大吾[6、1]「悔しいか?仲間がやられたままで終われないだろ?」
順子ちゃん「そうよ!まだ友ちゃんの仇を取ってない!」
順子ちゃん「ボールを私に渡しなさい!薫!」
彼女はボールを渡せと言うが内野のためボールを渡すと二人共アウトになる。
大吾[6、1]「フッ渡してやれ薫」
薫「するかよ!中(内野)でパスするのはルールで禁止だ!」
大吾[6、1]「でも先程していただろ」
薫「もうやんねえよ!ふざけんな!」
試合開始早々に友ちゃんがアウトにされてしまい大吾[6、1]に対して挑発気味の順子ちゃんだったが
今は大吾[6、1]の挑発に乗って彼のペースに呑まれてしまっている。
順子ちゃんを闘牛と例えるなら大吾[6、1]は闘牛士なのだろうか。
順子ちゃんの攻撃を防ぎ華麗に順子ちゃんを仕留めてしまうはずだ。
そこで彼女にとって不利な戦いに薫は待ったをかけるが大吾[6、1]は彼にも煽らせてくる。
闘牛がもう一頭増えようとも必ずどちらも仕留める意気込みだ。
内野同士のパス回しを誘ったのも巧妙な作戦であり
闘牛二頭をぶつかり合わせて自滅させるようなのが考えを狙っていたかもしれない。
穏やかではない様子だが薫はリーダーとしての威厳を保つ。
薫「友ちゃんがやられたのは俺も悔しいさ。」
薫「だけど俺たちはチームでドッチボールをしている。」
薫「力を合わせて何が何でも友ちゃんの仇取って勝とうぜ!」
順子ちゃん「あいよ…リーダー」
リーダー薫に従う順子ちゃん。
順子ちゃん「ラーメンのためにも!」
良樹「やっぱそれかい!」
順子ちゃんをこんなにドッチボールに熱心なのはラーメンのためでもあるのだ。
板倉先生「薫はリーダーとしての器が大きくなりましたね。」
井村校長「だんだん杉原君は見違えるようになってきましたね。」
薫の成長ぶりに身を見張る井村校長と板倉先生。
幸助(薫…くそ!俺だって頑張らねえと!)
幸助は外野で薫の成長ぶりと井村校長と板倉先生の評価を聞いて焦りを感じている。


薫「くらえ!」
薫は大吾[6、1]ではなく1組チームメンバーの誰かを狙うが当たらず外野の幸助の方にボールが渡る。
幸助「俺だって!」
薫に負けたくない幸助は力任せにボールを投げた。
晴香[6、1]「無駄よ!」
無情にも晴香[6、1]の防御レシーブで弾かれ圭人[6、1]がキャッチする。
圭人[6、1]のシュートで苗がアウトになる。
苗「うわあ~後はお願い」
ボールを取って反撃するも大吾[6、1]にボールを取られてしまい返り討ちされ4年生の冬馬がアウトになってしまう。
大吾[6、1]が内野に入ったことで1組チームの防御力が上がっただけでなくより攻撃的になっている。
順子ちゃんの速球が通じない今、差はどんどん広がってしまっている。
ピンチの状況に立たされた3組チームだが一致団結して1組チームの防御を崩す時だ。
尊(一か八かやってみるか!)
外野の尊から強い視線を感じた薫。
薫(尊!!)
尊は何か考えがあるのだろうか。
薫は同じ作戦を実行し外野の6年生陣による多彩なボール攻撃を仕掛ける。
やっと1組チームから龍太[1、1]をアウトにさせることができたが
3組チームは2年生の聖次と3年生の伊織がアウトになってしまった。
1組チームの外野は九人に対して3組チームの外野は十二人である。
防御レシーブをする佐々木姉妹はチームメンバーを囲うようにガードするが大吾[6、1]はコート内の中央に立っていて守っている。
両サイドは佐々木姉妹が真ん中に大吾[6、1]が守護する陣営をサッカーのフォーメーションでは3バック(スリーバック)と呼ばれている。
スペース管理がつきまとうのが3バックのデメリットでありそのデメリットをついて対応しきれないように攻撃の手数を増やす薫の作戦は的を射ている。
内野の薫と外野の尊と悠太が防御が手薄の方を狙ってボールを投げている。
それもあってか1組チームの結人[1、1]をアウトにした。
しかし人数差は広がっていく一方だ。
なぜか幸助は執拗に晴香[6、1]と大吾[6、1]に向かってボールを投げておりその度にボールが取られてしまっている。
3組チームメンバーが次々にアウトにされ3年生の舞と4年生の由美が外野へ行ってしまった。
悠太「おい幸助どうした?」
悠太「大吾[6、1]の方に投げたらボール取られちゃうだろ」
幸助「そうだけど後になったら大変だぞ」
幸助「一人でも主力を落とすべきだろ!」
佐々木姉妹の防御レシーブと大吾[6、1]の防御を崩さないままでいれば後半になるにつれて点を取るのが難しくなってくる。
だから幸助の言い分もわからなくもない。
薫「今はそれを考えている場合じゃないだろ!」
薫「できることを全力でやるべきだ」
幸助「俺も全力でやっているよ!」
尊「薫の作戦に従うべきだろ!」
幸助「なんだよ!薫ばっかり!!」
薫「幸助!?」
地団駄を踏む幸助。
薫ばかりいい格好して気に食わないようだ。
ここで板倉先生がホイッスルを吹く。
板倉先生「幸助こっちこい!」
幸助「え?まだ試合は途中じゃ‥」
板倉先生「いいからこい!」
幸助「は~い」
井村校長「板倉先生、すみません」
井村校長「あまり兼岩君を責めないでやってください。」
板倉先生「もちろんそのつもりですよ」
薫に妬ましく思っている幸助を井村校長と板倉先生は見兼ねたようだ。
幸助は板倉先生に呼ばれて体育館の外へ連れて行かれた。
板倉先生はスマホで誰かに連絡を取りながら幸助を連れて行く。
きっと幸助の担任の牛久先生に連絡しているはずだ。
景子「あちゃ〜幸助やっちゃったわね」
この状況から考えるに誰もが幸助は先生から叱責されるのではないかと思われていた。


体育館裏にて、板倉先生からの連絡で牛久先生もやってきた。
牛久先生「どうしたんですか?また幸助がなにか問題を起こしたんですか?」
幸助(あ〜怒られるのか~俺…)
幸助自身も先生に怒られるのではないかと思っていた。
板倉先生「なんていうか、今幸助は葛藤の渦の中にいます。」
板倉先生「薫が眩しくて負い目を感じているんだよな?」
幸助「板倉先生どうして?てか何で知ってんすか?」
板倉先生「みればわかるってそれくらい。俺は2回もお前の担任しているんだぞ」
板倉先生「あっちなみに幸助と薫はちゃんと夏休みの宿題やってきましたか?牛久先生」
牛久先生「はい。約束は守ってくれました。」
幸助も薫も夏休みの宿題をちゃんと期日までに終わらせて提出できたようだ。
板倉先生「やればできるじゃねえか!成長したな。ってか宿題をするのは当たり前のことなんだからな」
板倉先生「やればできることをあえてしてこなかったんだからな。まったく俺が担任の時にちゃんとやって欲しかったぞ」
幸助「ごめんなさい‥」
牛久先生「あの事件が幸助たちの成長のきっかけになったのは皮肉なものですが」
牛久先生「桂里奈は、リハビリ中で今大変な時期にいます。」
牛久先生「幸助、桂里奈もいてくれたらきっとドッチボールだって活躍してくれていただろうにな」
幸助「はい‥。1組と2組には勝てないだろうって正直諦めていました。」
板倉先生「それとは反対に薫がカッコいいとこ見せちゃったって訳ですよ。」
過去の悪事が尾を引いているが幸助も薫も改心してきている。
薫の方が評価がより良好なのもあの事件が後押ししているのは否定できない。
病室で友ちゃん共に桂里奈と長く過ごしていたこともあって思いの差においても薫のほうが勝っている。
幸助「薫がカッコよくてさ俺あんなのまねできないし」
幸助「正直悔しいっす。なんか俺だけ置いていかれたって感じがして」
板倉先生「俺が薫をリーダーだと言ったのがきいちゃったんだな」
幸助「そうっすね…一緒に遊んでいた薫がどこか違うところに行ってるみたいで」
牛久先生「でもそれくらい薫のことを誇りに思っているってことだろ?」
幸助「はい…」
板倉先生「ならそれでいいんじゃねえか?気にすることはねえよ」
板倉先生「だからって幸助を見捨てるとかそんな理由にはならないしそれは絶対にない」
板倉先生「過去のことは仕方ないが、宿題もだしていることだから問題ない。もう良いところまできている。」
牛久先生「ですが今試合中ですよね?わざわざこんな時間に話をしなくても」
板倉先生「井村校長の計らいですよ。幸助にアドバイスしてやって欲しいということです。」
板倉先生「幸助たちの3組チームなんですが…」
板倉先生は3組チームの現状について牛久先生に説明した。
1組チームの高い防御力に翻弄されていて3組チームは劣勢状態である。
薫が作戦を立てて反撃し井村校長が3組チームにボーナスチャンスも与えてくれたこともあり得点を得るがそれでも厳しい状況が続いている。
薫がリーダーとして頑張っていて幸助も彼の力になりたくて躍起になっているのだ。
チームのために戦う姿勢は素晴らしいが今の幸助は空回りしていてよからぬ方向に進んでしまっている。
いずれ仲間割れが起きる恐れがあると判断しその配慮を行ったということである。
仲間割れは相手チームに大いに有益になり大きく点差を開くチャンスにもなる。
その点から1組チームが勝利する可能性が高くなると期待されるが
一方で幸助を含め6年生たちはこのドッチボール大会が最後と言うこともあり悔いが残らないように全力で取り組んで欲しいと井村校長は願っているのだ。
勝敗の結果はどうあれ仲間割れで終わるそんな最後にしてほしくない。
泣いたり笑ったりして最後の思い出を作って欲しいのだ。
牛久先生「1組チームに勝ちたいだろ?俺も担任だからな」
幸助「そうっすよ!俺だって活躍したいっすよ!」
牛久先生「よし!板倉先生ちょっと時間いいですか?」
牛久先生「幸助に速いボールの投げ方やコツを教えます!」
板倉先生はスマホで時間を確認した。
板倉先生「はい。試合の制限時間10分前には切り上げましょう。その間に仕上げよう。」
ほんの10分程度ではあるが牛久先生と板倉先生は幸助に速いボールの投げ方やコツと正しいフォームを教えるそうだ。
まさに幸助にとって特別なボーナスチャンスと言えるだろう。
果たしてこの練習で幸助はどのような活躍を見せるのだろうか。


ではその頃、体育館内で1組チームと3組チームは幸助が抜けた後さらに5分間経過し残り制限時間は20分となり
1組チームは智恵[2、1]、陽一[3、1]、明音[4、1]がアウトになるが
3組チームは良樹、2年生は和馬が、3年生は正矢、4年生は霞、5年生は美奈子がアウトになってしまった。
1年生メンバーはとうとう順子ちゃんだけになった。
1組チームは内野十八人、外野は十二人、3組チームは内野十五人、外野十五人とちょうど半々だ。
3組チームで6年生の悠太が内野が復帰する権利が残っているため実質内野は十六人である。
まだ3組チームは逆転できるはずだ。
ボーナスチャンスの使用はお互いできる条件が整っている。
先にボーナスチャンスを使用するのは3組チームである。
幸助はいないが他の6年生メンバーと他の学年メンバーも全員賛成しているため例外に使用は許可された。
景子「なんかすごいの引いてきなさい!薫」
悠太「今はボーナスチャンスに頼るしかねえ!薫頼んだぞ!」
薫「任せろ!」
薫はボーナス箱に手を突っ込んだ。
薫が引いたボーナスチャンスの内容は「1発セーフ!」である。
「1発セーフ!」とはボールが命中しても一度だけセーフ扱いにすることができる。
使用するタイミングは2つあり、1つは内野のメンバーの誰かが相手チームのボールに命中してアウトになった時点で使用することができる。
これにより主力メンバーのミスなどもカバーすることもできる。
もう1つの使用法はメンバー一人にあらかじめ「1発セーフ!」を付与する使い方だ。
身代わりを得たということで3組チームは実質内野十七人として扱われるが試合終了までに
ボーナスチャンスの「1発セーフ!」を使用しなかった場合はカウントされず時点の内野の人数を結果とする。
悠太「あ~また微妙なの引いたな」
景子「ついてないわね、薫」
薫「ハハ、こればかりは悪いな」
ボーナスチャンスを2回引いたリーダー薫だが2回とも内容は微妙で運に恵まれていないようだ。
1回目は井村校長に与えられたボーナスチャンスだがその時は「ボールチェンジ」だった。
薫の打ち出した策と併せて1組チームを追い詰めることができたが逆転までは至らなかった。
今回の「1発セーフ!」の使いどころにもよるが相手チームには影響はあまりない。
1組チームの鉄壁の防御を崩すなら「一人外野へ」や「1名5分間プレイ禁止」を引いたほうが効果的だっただろう。
ではこの「1発セーフ!」をどうするかだが薫の判断は
薫「順子に「1発セーフ!」を与えるのはどうだ?」
順子ちゃん「え?私?」
順子ちゃんにあらかじめ「1発セーフ!」を付与することに決めるそうだ。
尊「1年に与えるのはちょっと複雑だが順子ならいいか」
悠太「う~んまあ哲也[6、1]を落としているし大吾[6、1]と張り合えているからな」
景子「いいんじゃない?」
順子ちゃんの活躍ぶりを見て6年生メンバーは彼女に「1発セーフ!」を付与するのは妥当であると判断した。
薫を始め6年生メンバー全員挙手してボーナスチャンスを使用し「1発セーフ!」が順子ちゃんに付与された。
順子ちゃん「ありがたく使わせてもらうわ!」
順子ちゃんは身代わりを得たことと少し体力も回復したことで強気な攻めを仕掛けることができるようになる。
順子ちゃんがボールを持って1組チームに向かってボールを投げ込む。
大吾[6、1]「俺に投げてこないのか?」
順子ちゃんは大吾[6、1]の挑発を無視して他を狙っており反省を活かして薫の指示に従っている。
しかしいずれは大吾[6、1]の方に攻めるはずだ。
ボールは順子ちゃんから悠太にそして薫へとボールが渡る。
尊(ここだ!)
ここで尊は仕掛けた。
防御レシーブをする由紀子[4、1]に目掛けてボールに回転をかけてシュートした。
由紀子[4、1]「あれ?」
由紀子[4、1]がいつものように防御レシーブするがボールは思わぬ方向に飛んでいってしまいキャッチしようと追いかけたが間に合わずアウトになった。
晴香[6、1]「由紀子[4、1]!」由紀子[4、1]「ごめん!」
悠太「やったぜ!流石だぜ尊!」
豪[6、2](なるほどイレギュラーバウンドってやつか)
順子ちゃんが投げていたボールの回転を見て閃いたそうで尊はこの時を狙っていたようだ。
ボールに回転をかけてレシーブした時にボールの軌道を狂わせたのだ。
作戦のためこちらに狙ってこないだろうと由紀子[4、1]の油断の隙きも狙っていたはずだ。
サッカープレイヤーでボールを扱うものとして再び尊は活躍した。
これでまた1組チームの壁を1枚剥がすことができた。
観戦の方で豪[6、2]が呟いていたイレギュラーバウンドとはボールが予想外の方向に跳ねることを言うらしく野球ではよく起こりうる場面である。
順子ちゃん(そうよ!これならいけるわ!)
順子ちゃんもあの場面を見てなにか閃いたようだ。


ボールは3組チームにあり順子ちゃんがボールを持つ。
順子ちゃん「勝負よ!」
順子ちゃんは再び大吾[6、1]に勝負を仕掛けた。
大吾[6、1]「また勝負か!いいだろう受けて立つ!」
薫「順子のやつ何考えているんだ?」
順子ちゃんと大吾[6、1]の二人がキャッチとシュートの激しい応酬を交わす。
順子ちゃんは肩が砕けるほど力強く投げてだんだんと威力とスピードを上げていく。
だが大吾[6、1]は一歩も引かずにボールを受け止め投げ返す。
順子ちゃん「はあ!はあ!はあ!はあ!」
順子ちゃんの体力は限界か。
大吾[6、1]「これで最後だ!」
最後のとどめを刺すかのように大吾[6、1]はボールを投げる。
そのボールは順子ちゃんに命中しボールは宙に浮き床に弾んで高く飛び上がる。
順子ちゃんアウトか
しかし
順子ちゃん「今よ!」
順子ちゃんは高く飛び上がり弾んだボールを掴んで瞬時にボールを投げた。
大吾[6、1]「なに!?」
大吾[6、1]は対応することができずボールは彼の身体に命中した。
オーーーーーー!
体育館な歓喜の声に包まれた。
ついに大吾[6、1]をアウトにさせたのだ。
薫「やったな順子!その手があったとはな」
順子ちゃん「へへ!ピース!!」
大吾[6、1]「そんなバカな!今のは!?」
薫「忘れたのか?大吾[6、1]、順子に「1発セーフ!」を付与していたんだぜ。」
大吾[6、1]「「1発セーフ!」!?あっあの時か!しまった‥忘れていた。」
ボーナスチャンスの「1発セーフ!」が順子ちゃんに与えられていたこと忘れてしまった大吾[6、1]。
順子ちゃんとの激闘の末勝利した余韻が仇となり油断した隙き作らせてしまった。
1組チームの牙城を崩した順子ちゃんの見事な策だ。
まさに肉を切らせて骨を断つである。
ボーナスチャンスの「1発セーフ!」にこんな使い方があったとは目から鱗である。
逆転した3組チームだが1組チームはまだボーナスチャンスを使っていない。
大吾[6、1]「みんな俺たちもボーナスチャンスを使うぞ!」
薫「うあ~やめろ!!」
景子「ちょっとやだ~」
悠太「くそ~ここで使うのかよ」
3組チームの反応は当然よろしくない。
1組チームメンバー目を輝かせ勝利を望んでいた。
圭人[6、1]「異議なし!」、哲也[6、1]「異議なし!」、葵[6、1]「異議なし!」、晴香[6、1]「異議なーし!」
1組6年生メンバーは全員異議なしということでボーナスチャンスが使用された。
晴香[6、1]がボーナス箱に手を突っ込んだ包み紙を取り出した。
景子「お願い!だめ~!」
ハズレくじを引くことを願っていたが晴香[6、1]が引いたボーナスチャンスの内容いかに。
包み紙に広げて書いてあるボーナスチャンスの内容を確認した晴香[6、1]は満面の笑みだった。
晴香[6、1]が引いたボーナスチャンスは「外野一人復活!」である、
1組チームメンバー全員大喜びだ。
景子「そんな‥‥」
薫「マジかよ~それ引くのかよ!」
晴香[6、1]「フフ!じゃあ早速みんなボーナスチャンスを使うわよ!」
1組の6年生が賛成と挙手をしてボーナスチャンス「外野一人復活!」を使用した。
晴香[6、1]「大吾[6、1]戻ってきて!」
大吾[6、1]「ああ!俺たちはまだ負けない!」
順子ちゃん「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!嘘~~」


なんという晴香[6、1]の引きの運。
順子ちゃんがやっとの思いで大吾[6、1]をアウトにしたのに晴香[6、1]が引いた「外野一人復活!」で大吾[6、1]は外野から内野に復帰した。
3組チームに再び絶望という大きな壁立ち塞がってしまった。

続く

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