ジュンコチャン

第28話 悲しき熊親子

佐藤おばあちゃんがはちみつを取り倉庫に行ったがそこで子熊のクーと遭遇してしまう。
クーは倉庫に置いてあったはちみつを食べていたがそれだけでは物足らず、佐藤おばあちゃんを獲物として狙うようになる。
その時、佐藤おばあちゃんの悲鳴が聞こえたことですぐに順子ちゃんが助けに来てくれた。
順子ちゃんがスコップで子熊と応戦するものの反撃を受けピンチになる。
間一髪のところで保志も助けに入り、三人で一斉にクーを攻撃し瀕死になるまで追い詰めるが 母熊が来たことで形勢は逆転する。
傷つけられたクーを見て母熊は激昂し順子ちゃんに襲い掛かる。
危険と感じた佐藤おばあちゃんは順子ちゃんと保志を家の中に避難させ一人で母熊と対峙し時間を稼ぐ。
しかし母熊の突進で佐藤おばあちゃんは倉庫の中へ飛ばされてしまう。
置いてあった布団のおかげで致命傷は避けられたが動けなくなってしまう。
子熊のクーは自分をやったものが他にいることを母熊に伝え、順子ちゃんと保志を標的に佐藤おばあちゃんの家の中に入り暴走する。
台所に置いてある佐藤おばあちゃんのスマホから着信音が鳴っており発信者は広武である。
一方で広武は何度も佐藤おばあちゃんに電話したが、応答しないことで焦りや不安が募る。
警察官の石津と久保と共に一刻も早く佐藤おばあちゃんの所へ到着して安否確認がしたいだろう。
順子ちゃんと保志は母がいる1階の洋室に避難していたが熊が家の中に入ったことに気付く。
佐藤おばあちゃんが熊にやられてしまったのだと絶望してしまう。
それと同時に熊が雄叫びを上げ怒っている理由は、子熊を傷つけたからだと彼女は理解する。
だが順子ちゃんは家族を守るため、母熊と戦うことを決意する。
母は親として順子ちゃんに危険な目に合わせたくなくやめるように説得するが
それを振り切り順子ちゃんは一人熊がいる方へと向かっていく。
彼女自身、大きな熊を相手に何もできないことは知っている。
最善策を考え、導き出した結果まずは家から追い出すことに決めた。
台所に壁が壊れ外が見えていることから母熊はそこから入ってきたと判断する。
空いた壁におびき寄せることができれば母熊を外に出すことができる。
熊を外へ逃がす作戦を立てた順子ちゃんは、隣の部屋の和室に母熊を連れて行かせその隙に台所へ行って空いた壁におびき寄せようとするが
台所に落ちていたものに順子ちゃんは躓いてしまう。
台所の方に向かって突進してくる母熊に対し躓いた順子ちゃんは母熊の攻撃を避けることは不可能なので 横に倒れたテーブルを盾にして衝撃に備えた。
母熊の強烈な突進攻撃でテーブルごと順子ちゃんは飛ばされてしまう。
順子ちゃんは台所の隣の部屋のリビングに飛ばされソファがクッションになり大きな怪我はなかったが
子熊に引き裂かれたお腹の傷が開いてしまう。
痛みで動けなくなってしまった順子ちゃん。
まさに絶体絶命の大ピンチである。


娘の悲鳴が聞こえた母は混乱し泣き叫んでしまう。
幸「嫌あああああ!!順子!順子!あああああ!!」
保志「うあああああん!!お姉ちゃーーーん!!」
保志も母につられて泣いてしまう。
幸(私ったらなにしてるの!どうしてどうして!いざってときに何もできないの!)
母は何もできないに自分を嘆いている。
母熊「どこへ行った!!!」
暴れ狂う母熊は順子ちゃんがいるリビングに近寄るが
母熊「ん?そこにいるのか!」順子ちゃん「お母さん…保志…」
その音は、保志と母の叫び声である。
順子ちゃんもその叫び声が聞こえる。
母熊は音の聞こえる方へ向っていく。
そこは保志と母がいる洋室である。
二人が危ない、だが順子ちゃんは痛みで動けない。
テーブル越しから熊の強靭なパワーを受け全身は痙攣している。
テーブルの天板が分厚かったのが幸いし衝撃を抑えられたが威力は凄まじいものであった。
そんな凶暴な熊が今度は母と保志を襲おうとしているのだ。
順子ちゃん「お父さん‥おまわりさん‥まだなの?早く助けに来て‥」
警察と広武はまだか、助けを呼ぶ順子ちゃん。
その時だ
ピーポーピーポーピーポーと外からサイレンが聞こえる。
母熊「なんの音!?」
やっと救急車が到着したようだ。
救急車の散光式蛍光灯と呼ばれる赤いランプの光が母熊の目に入った。
母熊「なに!あれ!まさか私とクーを捕まえに来たの!?」
クー「うっっなんだ?」
外で横たわるクーも救急車の音に反応した。
クーは順子ちゃんと保志と佐藤おばあちゃんの三人の猛攻を受け弱っている。
母熊が隣にいないことで怖くなる。
機械音を敏感に感じ、赤い光がクーを刺激する。
クー「きっと僕を捕まえに来たんだ!怖いよママ!」
捕まえに来たのではないかと思いクーは体がふらつきながらも前と後の足を立たせゆっくりと母熊のもとへ寄っていく。
同じく母熊も赤い光を敏感に感じ救急車に強い警戒心を持ち、救急車に標的を変えた。
佐藤おばちゃんの家に到着した消防士と救急隊員は救急車から降りた。
消防士「宮沢さん!佐藤さん!」
保志「ママ!誰かが助けに来たよ!」幸「この音は救急車?」
救急車のサイレン音から助けに来てくれたと気付いた。
佐藤おばちゃん「やっと来てくれたか…」
倉庫の中で動けずにいた佐藤おばあちゃんも救急車が到着したことに気付く。
消防士と救急隊員は急いで家に入ろうとしたが
消防士「なに!?そんな馬鹿な!!」救急隊員「熊だ!!」
目の前に現れたのは熊である。
オオオオオオオオオオオオオオ!と雄叫びを上げる。
消防士と救急隊員は急いでその場から逃げる。
母熊「私の子は私が守る。」クー「ママ!」
クーは母熊のもとに近づき怒り狂う様を怯えながら見ていた。
母熊は救急車を攻撃する。
中で待機してきた隊員たちも救急車を降りて逃げる。
母熊は両腕を何度も振り救急車を粉砕する。
ドカーン!救急車はガソリンが漏れ発火し爆発する。
救急車は破壊され機体は燃え煙が噴き出す。
警察官「爆発!!あそこだ!!何があったんだ!」
爆発音とその煙が狼煙となり付近を巡回していた警察が数人急いで煙が出ている方へ駆けていく。
母熊「どいつこいつも許さないわ!!」クー「ママ待って!」
再び母熊は佐藤おばちゃんの家の中に入っていた。クーも母熊についていく。
母熊はなんと幸と保志がいる洋室に来て扉をぶち壊してしまう。
幸「きゃあああああああああああ!」
保志「うあああああああああああん!」
恐怖のあまり二人は大声で叫んでしまう。
殺されるそう思った幸だが冷静を取り戻し保志を庇い母熊に背を向けた。
保志「ママ!!」幸「保志あなただけでもこの命に代えて私が守る!」
幸は自分の命と引き換えに保志を守ろうとした。
母親として大事な息子を守る。そう決心した。自分の命はどうなったてもいいと。
母熊「あ…まさか自分の子を庇っているの…」クー「え?どうしたの?」
子どもを庇っている母親の姿を見た母熊は我に返り自分とクーの面影が浮かんでくる。
クーは母熊が急に静止したことに困惑した。
すると警察が駆け付け母熊に銃を発砲し命中する。
母熊「ああああああああああああ!」クー「ママ!」
銃弾が母熊の肉体に食い込み激しい痛みが襲う。
警察「伏せてください!!」
警察の指示に従い幸は保志を庇いながら深くかがんで身を伏せた。
銃の発砲が鳴り響き、鼓膜が破れそうなくらい大きい。
警察は拳銃を使い熊を駆除するため発砲しているが熊の後ろには人がいて射程の範囲内で被弾する危険がある。
細心の注意を払い人に被弾しないよう正確な射撃が要求される。
クー「やめろ!!!」
クーは母熊に向けて銃を発砲する警察官を阻止すべく攻撃している。
警察「子供もいるぞ!気を付けろ!」
警察「やむを得ない!子供も撃つぞ!」
警察は子熊のクーにも銃を向ける。そして発砲する。
クー「ああああああああああ!」
銃弾がクーに命中する。
すでに弱っていたクーにこの一発は致命傷となる。
クーの意識は朦朧している。
母熊「クーーーーーー!」
子熊の命の危機に気付いた母熊は子熊を咥えて逃走する。
だが警察が数名駆けつけ、躊躇せず発砲する。
母熊は痛みを必死に耐え子熊を逃がそうとする。
いくら強くて凶暴な熊でも人間たちの知恵で発明し今も進化を続ける科学技術には敵わないのである。
戦争として用いられた兵器は、生物の命だけでなく自然をも脅かすほど凶悪なものが製造されており
核兵器は地球環境を滅ぼしかねないほどに恐ろしい威力である。
熊も危険生物に並ぶ恐ろしい生き物だがこの地球人上で最も恐ろしいのは人間なのかもしれない。
日本警察採用している拳銃は[M360J SAKURA(サクラ)]である。
人間に発砲すれば間違いなく死に至らしめる殺傷能力がある。
だが熊の体は非常に大きく肉も硬いため、その拳銃では熊を駆除することは難しく頭部や心臓などの急所を打たなければいけない。
しかし母熊は銃弾を数発くらい痛みに耐えらずさらに子熊が危険な状態であるため撤退する。
母熊「逃げるわよ!!クー」クー「マ‥マ‥」
血を流し激痛を抱えながら弱ったクーを口にくわえ母熊は逃げるのである。


警察官たち数名は追うか追わないか考えたが、この被害状況を見て熊がまた人々を襲うかもしれないと考え
被害を受けた人の救助する者と熊を負って駆除する者に分けて行動する。
駆けつけた警察官は計六人で、人々の命を守ることを最優先として考え熊を駆除するために熊親子を追った警察官は二人で
あとの四人は被害者の救助にまわる。
救助にまわった警察官たちは被害を受けた佐藤おばあちゃんの住所とその周辺の実態把握をする。
救急車が熊の暴走によって大破し引火して煙が上がっている。
ただちに消防車を手配し、消火器をつかって消火活動を行った。
また怪我人がいることを想定し新たに救急車を手配した。
佐藤おばあちゃんの家の中に入り、怪我人はいないか確認する。
警察は洋室にいる幸と保志の安否を確認する。
警察「大丈夫ですか?」
幸「ええ‥それよりも順子が!私の娘なんです!」
警察「わかりました!一緒に探しましょう!」
幸は足の怪我の痛みを耐え足を引きづりながら警察と一緒に順子ちゃんを探す。
保志は母の手を繋いで支えになる。
幸「順子!!!」保志「お姉ちゃーん!!」
順子ちゃん「私はここだよ~助けて!!」
母と保志の声が聞こえて返事をする順子ちゃん。
幸「順子!!!リビングにいるわ!!」
リビングの方で順子ちゃんの声が聞こえたので行ってみると
彼女は倒れているソファの隣で仰向けになって倒れていた。
幸「順子!!ごめんね!!ホントにごめんね!!」
幸は順子を強く抱いた。
順子ちゃん「痛い!痛い!苦しいし傷口が開いちゃうって!」
順子ちゃんは無事であったが動けない状態だ。
順子ちゃん「あの私熊にボコられました。」
警察「あっはい無事でよかったね‥」
順子ちゃんは警察に熊にやられたと告げた。
幸「もう順子あんたったらもうーー!無茶ばっかりして!!」
順子ちゃん「苦しい!苦しい!苦しいって!」
幸は再び順子ちゃん強く抱くのである。
幸「あっ佐藤さん!」順子ちゃん「そうだ!おばあちゃんは?」保志「死んじゃったの?」
佐藤おばあちゃんのことを思い出した三人。
無謀でありながら熊から二人を逃がすため一人で立ち向かってくれた。
佐藤おばあちゃんのことを心配する三人であるが
佐藤おばあちゃん「わしはまだ生きておるぞ~」
警察二人が担架で佐藤おばあちゃんを運んできた。
佐藤おばあちゃんは無事であった。
保志「おばあちゃーーーん!!よかった!!」
順子ちゃん「よかった‥もうだめかと思ったよ‥」
幸「佐藤さん~無事でよかった‥」
佐藤おばあちゃんが生還した姿を見て三人は安堵しさらに歓喜した。
佐藤おばあちゃん「けど家はめちゃくちゃじゃのう‥」
みんな無事で何よりではあるが家の中は物や家具などが壊され、外壁が損壊されてしまっている。
外から見てもかなり悲惨なものである。
まずは家の外壁の修理が必要だ。
修繕費用は20万円ではきかないと覚悟したほうがいいだろう。
幸「いろいろご迷惑おかけしましたし、お世話にもなっています。」
幸「壁の修理費は私たちが工面いたします。日頃の感謝を形にしたいのです。」
佐藤おばあちゃん「すまんのう‥。無理はせんようにな。後で息子に連絡して金出してもらえるか聞いておくか。」
幸は佐藤おばあちゃんの家の外壁の修繕について支援するそうで
お世話になっていることへの感謝として修繕費用のためのお金を工面すると意向を示す。
事情を知ればきっと広武も反対しないだろう。


順子ちゃん「熊は?あの親子はどうなったの?」
警察「熊は我々警察が追い払いましたが怒っている状態でまた人々を襲う可能性があります。」
警察「少数ではありますが逃げていた熊を追っています。」
順子ちゃん「あの熊親子を殺すってことなの?」
警察「あれはツキノワグマです。普段はおとなしい性格ですが子供に危険が及んだとき彼は暴力的になります。」
警察「人々の命と暮らしを守るものとしてこれ以上被害を拡大させるわけにはいきません‥」
順子ちゃんはあの熊親子に同情しているが警察の方針に従うしかなった。
黒い体毛からツキノワグマであると警察は断言する。
子供を守るためツキノワグマは人々を襲ったのだろう。
特に救急車の赤いランプと機械音に強い警戒心を持ち
自分の子供が危ないと思い攻撃してきたのではないかと警察は推測している。
さらに住民の家を破壊し怪我人も出ている。
住民の家に侵入し、家族に襲い掛かろうとし死の瀬戸際で極めて危険な局面であったため警察は銃を熊に向け発砲した。
熊に数発弾丸が命中し子供にも命中した。
幸い幸と保志には被弾せず充分安全面を考慮した銃の使用であったと言える。
子供にも怪我を負わせたことできっと人間に強い恨みを持っているに違いない。
再び人々を襲う危険性があることから駆除という方向で警察は動き始めている。
この一連の出来事は警察署内にも知られており巡査部長から熊駆除の許可が下りた。
警察二人はパトカーで脱走した熊親子を追跡している。
そして警察官の石津と久保にも情報が入る。
石津「熊が!佐藤さんの家に?!」
広武「なんだと!?俺の家族は!?佐藤さん!?」
熊が佐藤おばあちゃんの家を衝撃していたと聞き広武は激しく動転する。
石津「落ち着いてください!ご家族も佐藤さんも無事です!我々警察が駆けつけ熊を追い出しました。」
広武「は!そうですか‥ほっ‥」
家族も佐藤おばあちゃんも全員無事であることに広武は安堵したがとても心臓に悪かった。
石津「現在熊は子供を連れて脱走中のようだ。」
久保「まずは宮沢さんを家族のもとにお連れしないと」石津「ああそれが先決だな。」
石津と久保がするべきことはまず広武を家族のもとへ連れて帰らせることである。
石津「ん?何か黒い物体がこっちに来るぞ」久保「え何?」
反対側から黒い物体が迫りくる。
久保「逆走車じゃねえおいまさか!」石津「嘘だろ!?」
逆走車ではない黒い物体の正体は熊である。
母熊も反対側から迫る光がこちらに迫ってくることに気付く。
母熊「何か来る!」
しかし母熊は足を止めずパトカーに勢いよく突っ込んできた。
石津は急ブレーキをかけたが間に合わず、パトカーと衝突した。
強い衝撃が三人を襲う。広武「うわあ!」
後部座席に座りシートベルトをしていた広武であったが強い衝撃で体は一瞬宙に浮いた。
熊と衝突したパトカーは制御が利かずスリップし木に激突した。
石津「ぐう!」久保「うお!!」
エアバックが作動し運転席と助手席へ大きく膨らみ、強い衝撃を全て一手に引き受ける。
石津と久保と広武に怪我はなかったがパトカーのボンネットが破損してしまう。


パトカーと衝突した熊親子だが、母熊は顔面を強打し前歯が欠け、
口に咥えられていた子熊のクーはぶつかったと同時に高く飛び跳ねそのまま地面に落ちた。
母熊「クークー!!」
母熊は子熊を必死に呼びかけるも返事はしなかった。クーは絶命したのだ。
母熊「うあああああああ!クー」
ウオオオオオオオンと熊が悲しげな鳴き声を発した。
パトカーの中にいた三人もその様子を見て母熊が泣いているのがわかる。
泣きじゃくる母熊だがクーが殺されたことで人間に強い怒りを覚える。
母熊「許さない!!クーを何をしたっていうの!!」
母熊「私たちはただ食べ物を探していただけなのよ!!」
石津「やばい!こっちに来るぞ!!」
すごい速さで三人がいるパトカーに母熊は突進してきた。
石津と広武は母熊が来る反対側のドアからでて、久保も助手席から運転席に移って石津と同じく運転席側のドアから脱出しようとしたが
間に合わずパトカーは倒され久保はパトカーの下敷きになってしまった。
石津「久保!!!!!」広武「あ!」
母熊「許さない!!許さない!!」
母熊は大きな雄叫びをあげ今度はパトカーから脱出した二人を狙う。
石津「くそおおおお!!!!」
石津は銃を構え母熊に向って銃を撃った。
母熊「う!う!う!う!ううううう!」
冷静さを欠き手元が狂ってしまったが石津が撃った弾丸はすべて命中した。
しかしそれでも母熊はまだ生きていた。
効いているとは思われるが十数発は撃たれたのにも関わらず倒れないは熊の生命力は驚異的である。だが弱ってはいるはずだ。
[M360J SAKURA(サクラ)]は5発装填されていて石津はそれを全て使い切ってしまった。
[M360J SAKURA(サクラ)]は本来であれば6発まで装填できるが
日本警察は銃を軽量化され携帯性の向上を図るねらいとして装填数を5発としている。
故に日本は銃犯罪が極めて少ないため銃による使用はあまりないため装填数は5発で十分なのだ。
今回、石津警察官が実戦で銃を使用したのは初めてである。
母熊「ああああああああ!」
実弾を何発もくらい弱っているが母熊は怒りで自分を奮いたたせている。
石津の拳銃の弾はゼロで熊に対抗することができず広武を守り切れない。
救助を呼ぶ時間すらなく一秒も無駄にはできない。
せめて広武だけでも熊からできるだけ遠くへ逃がしてやりたい。
石津「ここは私が囮になります!宮沢さんはできるだけ遠くへ逃げてください!」
広武「いっいいんですか?」(これは無理だろ絶対!)
石津が囮になって逃がしてくれのだが広武の心情は警察官一人でこの怒髪衝天となった熊に敵うはずがないと悟る。
住民の安全のため、犯罪者を捕まえることを想定した訓練を施していて
一般人よりも身体能力はあるが警察一人だけでは心もとないしかと言って一般の広武でもどうしようもない。
もう一人警察官である久保はパトカーの下敷きになり動けない状態だ。
広武(俺のすべきことはたった一つ!)
石津「宮沢さん何をしているのですか!」
広武がとった行動はパトカーに下敷きになった久保を助けることだった。
石津「無理です!宮沢さん!!今は危険です!!」久保「宮沢さん私はいいです!!逃げてください!!」
宮沢「俺は逃げない!!何もできない俺じゃない!!あなたたちにも家族がいるでしょう!!絶対みんなで生きて帰りましょう!!」
石津「宮沢さん…」
広武は腰からそして全身に力を入れて倒れたパトカーを浮かそうとした。
母熊はそれを許すはずもなく広武を狙って攻撃してこようとする。
石津も久保も諦めなかった。
石津は警棒を出し熊にひるまず威嚇する。
石津「お前の相手は俺だ!!」
母熊「はあはあはあ!もう怖くないは!!まずはあんたからよ!」
狙い通り石津を母熊は標的にした。
その隙に久保を助けたい。
パトカーを持ち上げる広武に対し下敷きになっている久保はうつ伏せの状態から腰を浮かすように体に力を入れ広武に助力する。
広武「うおおおおおおおお!火事場の馬鹿力だ!!!」
数ミリでもいいパトカーを浮かすことができれば久保を救出できる。
石津は俊敏な身のこなしで母熊の猛攻を避ける。
だが動くたびに母熊の動きは激しくなり石津に息つく暇を与えない。
とうとう石津は息を切らし母熊の突進攻撃をくらって突き飛ばされ木に衝突してしまう。
石津「ぐはあああああ!」久保「石津!!!!」
石津が危険である。早く久保を助けなければ。
広武「うおおおおおおおおおおおおおおお!浮けえええええええ!!」
広武の体内の血圧は上昇し顔は真っ赤になる。体の力をすべて腕と腰に注ぎ込み全身全霊でパトカーを持ち上げる。
そしてパトカーは数センチ浮き久保は脱出した。
久保「ありがとうございます!!!宮沢さん!!」広武「はあはあはあやった‥」
全身の力が抜け、息が荒く彼は地面に横たわった。これ以上彼には重荷を負わせない。久保は立ち上がる。
広武の勇姿に感謝した久保は今度は自分か広武と石津を助ける番だと拳銃を手に取り熊に立ち向かう。
母熊「死ね!!」石津「ここで終わりか」
死の瀬戸際に追い詰めらたその時だ久保が後ろから銃を撃ち母熊の背中に命中する。
母熊「ああああああああああああ!」
久保「石津離れろ!!」石津「久保!!!助かった!!宮沢さんありがとう!!」
石津は素早く木を盾にして後退した。
透かさず久保は母熊の足を撃って何発かは外すも銃弾はしっかり足に命中した。
母熊「足があああああああああ!」
母熊は体勢が崩れ倒れた。
母熊「まだ‥まだよ‥クーを殺した彼らを許さない!」
母熊は起き上がろうとしていた。
久保「マジかこいつまだ動く気か!?」
久保の拳銃も弾がない。
母熊が起き上がり襲ってくれば危険である。
打つ手なしかと思われたがパトカーのサイレンが聞こえてくる。
熊を追跡にまわった警察官がこちらにやってきた。
警察「石津!!久保!!」
石津「熊はまだ生きているぞ!!」
警察「わかった!!やるぞ!!」
駆けつけた警察官が一斉に母熊に銃を乱射する。
母熊「うああああああああああああああ」
母熊は叫び声をあげ、そのあとはピクリとも動かなくなった。
広武「これはやり過ぎだ‥」広武も熊に同情するほど悲惨であった。
熊とその子供の死亡が確認され一先ず一難去った。
熊を駆除するために使用された玉の数は30以上と過去異例の数である。
訓練はしているものの実戦での銃の使用には経験がなく使い方に慣れていない警察官が何人もいたのが起因した。
動物に向けて銃を乱射するのは極めて残虐な行為である。
警察の職務上、人の生命を守るため銃の使用を認められているが、銃を使用することは人々に危険が及ぶ。
ましてや人間の命を守るためなら動物の命は犠牲にしていいというわけでない。
記者会見では熊を何発も銃で傷つけ必要以上に銃を使用してしまったことに対し警察一同深く謝罪し
怪我人は出たが死者は出なかったと今回の銃の使用は正しいと判断しこれからも人々の命を守るため職務を全うしていくと述べた。
こうして熊襲撃事件は幕を閉じたが銃の使用や命の尊さについて今後の課題が議論となっていくのであろう。


宮沢家と佐藤おばあちゃんは病院に運ばれ怪我の手当てをした。
全員命に別条はなく、幸の足の怪我は深いが特段問題ないようだ。
佐藤おばあちゃんは一週間入院となった。
佐藤おばあちゃんは息子に連絡したらしく後日お見舞いに来て家の修繕費の支援するそうなので安心である。
順子ちゃんは病院食を食べてそのあとは母と同じ病室のベットで眠りついた。
広武「幸‥‥」幸「広武‥‥」
広武「みんな無事でよかった‥。幸愛してるよ‥」幸「うんあなた私も愛してるよ」
夫婦二人強く抱き合った。
広武「ごめんな‥いざって時俺がいなくて‥」幸「何言ってるのよ、あなたが助けに来て切れたから私は生きてるのよ」
幸「あなたは順子と保志のお父さんなんだから胸を張りなさい。」広武「うん!俺‥ちゃんとお前らそばいてやるからな!頼る父になってやるからな!好きだ幸!」
幸「大好きよ!広武!」 幸と広武は涙を交わしこれからも愛し合うと誓った。
順子ちゃん(お父さんお母さんラブラブね‥)
順子ちゃんは起きていて二人の会話を聞いていた。
広武は保志を旧家へ連れて帰った。
幸も順子ちゃんも1日で退院できるそうなので明日は家族全員で過ごしたい。
順子ちゃんは熊親子のことを思った。
なぜ熊親子が人々の前に現れたのかはわからない。
憶測だが山で食べられるものなくなり、食べ物を探すため人が住む場所に訪れ、その途中で逸れ親子共々離れ離れになってしまったと思われる。
子熊を思う母熊の怒りはとても身に染み、命の尊さについて学べた順子ちゃんであった。
こうして家族と一緒に生きてご飯食べられということに感謝していき
順子ちゃんは家族と友達をこれからも大事にしていきたいと思うのであった。

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