ジュンコチャン

第27話 母熊の咆哮

子熊のクーが助けを呼ぶ声が聞こえ母熊は佐藤おばあちゃんの家に突撃した。
ブロック塀の壁を破壊し、三人のいる方へと急襲する。
順子ちゃん達に更なる脅威が迫り来る。
まだ警察もそして怪我を負った母を運ぶ救急車も来ていない。


一方その頃広武と警察官である石津と久保は旧家に到着し中の様子を見ていた。
各部屋の照明を入れる。すると悲惨な光景が明るみになる。
荷物は散乱して床と壁は土で汚れ、爪のようなもので引っ掻かれ剥がれていた。
また台所にある食器がたくさん割れている。
荷物の整理や掃除をしたというのに広武はこの光景を見て落胆してしまう。
石津「これはひどいですね…」広武「くそ~あの熊野郎!荒らしやがって!」
近くに熊がいるかもしれない。
家の外は久保が見張り、石津は広武と同行し家の中を調べていた。
石津「あっこれは!」広武「これは幸のだ!私の妻の血です!」
廊下や床には血痕があった。
恐らくこれは幸の血に違いない。
広武「くう…幸…」
ここで幸が熊から必死に逃げていたことが部屋中の汚れやキズそして彼女の血がそれを物語っていた。
お金や保険証、その他貴重品は無事でほっとした広武。
娘の夏休みの宿題を思い出し2階にあるということで2階に上がってみたが
2階は何も壊されておらずここは被害を受けていなかったようだ。
順子ちゃんの夏休みの宿題も無事であった。
必要な荷物をすべてバックの中に入れた。
石津「荷物も無事でよかったですね…」広武「はい…」
家の中には熊はいなかった。外にも気配は感じなかった。
違う場所に行ったのだろう。
その時巡査部長からの連絡が来た。
巡査部長「町の住民から熊を見かけたと通報があった。」
巡査部長「そっちは大丈夫か?」
石津「現在参考人の住所にいます。」
石津「こちらは熊の気配はありませんが、ここで参考人の奥様が熊に襲われた形跡がありました。」
巡査部長「そうか、でお前らもそっちにいけるか?」
石津「参考人の所要と状況を確認でき次第そちらにむかいます。」
巡査部長「了解した。頼んだぞ!」
巡査部長の連絡から町の方で熊が出没したそうだ。
久保「部長が何だって?」
石津「町の方で熊を目撃したと通告があった」久保「マジかよ!」
広武「そうですか…あ!幸たちが危ない!」
石津「落ち着いてください!そろそろ救急車も到着する頃です。」
広武は家族のことを心配している。
特に妻の幸は熊に襲われて怪我をしている。
広武は幸のスマホを持ってその画面から順子ちゃんと保志と自分そして幸の家族全員が写っている思い出の写真を見た。
本来であればここで好きな釣りをしてその釣った魚で家族と夕飯をたしなみ憩いの時間を過ごしていたはずであった。
当たり前でありいつもと変わらない日常が崩壊してしまうのは恐ろしいことだ。
幸は足を負傷したが広武自身が知る限りでは全員無事である。
救急車が到着し家族を安全に病院へ連れて行っていることを祈りたい。
広武の両親は病気で他界し幸は親族と仲が悪く現在は疎遠になっている。
知り合いの佐藤おばあちゃんは、自分たちを家族のように大事にしてくれていてお世話になっている。
佐藤おばあちゃんも家族と同じように大切な人である。
今佐藤おばあちゃんのいる住宅街で熊が出没したという。
広武は手早く荷物をまとめた。
すぐにでも警察はほかの人たちの助けに行きたいだろう。
警察官にこの時間を割いてまで迷惑をかけたくはない。
広武「お待たせしました。貴重品と必要なものは全て揃いました。」
広武「あの、知り合いの佐藤さんの家へ連れて行ってください。」
石津「わかりました。」
広武は警察官の石津と久保と一緒にパトカーに乗って佐藤おばあちゃんの家にむかった。
広武は自身のスマホではなく幸のスマホで佐藤おばあちゃんに安否確認のため電話をかけた。
広武「電話に出てくれ頼む!」
佐藤おばあちゃんに町で熊が出没していると伝えたいし、何よりも救急車が到着したかどうか知りたい。
家族を病院に連れて行ったと知れば安心していられる。
だが佐藤おばあちゃんは応答しなかった。
広武「なんで電話に出てくれないんだ!」
何度電話をかけても電話にでず最終的にお留守番サービスに接続となってしまう。
広武「まさかそんなことないよな…」
佐藤おばあちゃんが電話に出ないのことで彼の胸中がざわつく。
熊に襲われているのではないかと良くない考えが頭の中に浮かんできてしまう。
広武「はあ…はあ…頼む!お願いだ!でてくれ!出てくれ!電話に!」
彼の体は震え、動機や吐き気を催している。
彼もまた川で熊に襲われたことがトラウマになり、熊に対する恐怖や家族の危険がより一掃不安を駆り立てる。
久保「落ち着いてください!宮沢さん!」
久保「マナーモードにしていて気付かないだけだと思います。」
広武「ですが、こんな時ですよ!」
異常事態ともいえる時にスマホなどの通信機器を携帯していないとは考えられない。
電話に出ないことは不自然と感じ取ってしまうのだ。
石津「この状況だ…穏やかではないはずだ…」
久保「必ず我々が熊を捕獲または駆除いたします!まずは家族の無事を祈りましょう!」
広武「はい…」しかし落ち着きがなくソワソワしていた。
石津「絶対に一人も被害者は出しません!警察の誇りに掛けて!」
警察として住民の命と平和の暮らしを守るためにも熊をいち早く捕獲し彼の熊に対する不安と恐怖を根こそぎ取り除かなければならない。
石津はアクセルを強く踏む。パトカーの鳴り響くサイレンと共に蛍光灯が赤く光り出し暗い森を駆け抜けていく。


パトカーがむかうは、住民が住む町そして佐藤おばあちゃんの家である。
どうかみんな無事でいてほしい。
そう願うが広武の悪い予感は的中してしまう。
今佐藤おばあちゃんの家の方に熊が出現してきていてその熊が順子ちゃんたちの方へ接近してきているのだ。
順子ちゃん「何か来る!!」
順子ちゃん達三人に大きな音をたててこちらにやってきている。
オオオオオオオオオオと雄叫びが聞こえる。
クー「ママ!!!僕はここだよ!!助けて!!」
母熊「クーーーーーー!!」
母熊「助けを呼んでいるわ!ク―――!今行くわよ!!」
母熊は自分の子熊の声が聞こえたようだ。
母熊「クーは私が守る!!私の子を傷つけるものは許さないわ!!」
佐藤おばあちゃん「これはもしや!熊か!」
鳴き声から熊で間違いないだろう。
佐藤おばあちゃん「お前さんらは隠れるんじゃ」
保志「え…おばあちゃん…」順子ちゃん「おばあちゃん一人にはできないよ!」
佐藤おばあちゃん「熊は危険じゃ!!」
順子ちゃん「だからっておばあちゃんだけにしたくない!」
保志「中にはママもいるんだ!」
佐藤おばあちゃんは順子ちゃんと保志を家の中に入れて避難させたいのだ。
だが順子ちゃんと保志は引かない。
寧ろ熊に立ち向かおうとしている。
順子ちゃん「熊なら来い!!」保志「怖くない!!」
熊に対して恐怖感じない二人であったが
熊は三人前に姿を現した。
順子ちゃん「えうそ!!?」保志「あわわわわ」
佐藤おばあちゃん「大きい!!これはまずいぞ!!」
順子ちゃんと保志は熊の姿を目にして再び熊の恐ろしさを思い知ることになる。
クー「ママ!助けて!僕こいつらに殺される!」
母熊「クー!!あんたたち許さないわ!」
この子熊と三人の前に現れた大きな熊は親子の関係なのだろう。
ツキノワグマは大人しい性格だが子供を守るときは攻撃的になる。
母熊は自分の子熊が傷つけられている姿を見て怒りをこみ上げる。
母熊は興奮しており、大きな雄叫びをあげて威嚇している。
保志は震え持っていた備中鍬を落としてしまう。
佐藤おばちゃん「逃げるのじゃ!!」
小さな子熊だったからこそ三人でなんとか対処できたが
現れた熊の大きさは2メートルを超えておりより凶悪さが増している。
体覆う体毛と強靭な肉体そして驚異的な攻撃力と破壊力、勢いよく突き破った厚いブロック塀の壁も熊にとっては薄板を割っただけに等しい。
生身の人間が正面から戦うことは無謀である。
また戦闘訓練などを施し武装化した兵士でも油断できない。
子供二人、老人一人ではどうしようもない。
順子ちゃん「どうするのよ…」
流石の彼女も大きな熊を前にたじたじである。
どんな災難も勢い任せでやってこれたがこれは絶対に無理だ。
順子ちゃんは震えて体が動かない。保志も恐怖のあまり腰が抜けてしまっている。
ここで熊の注意を引いて時間を稼ごうと佐藤おばあちゃんが必死の抵抗をみせる。
佐藤おばあちゃん「逃げろ!!!」
順子ちゃんと保志を熊から逃げるように促した。
順子ちゃん「おばあちゃん無理しないで!!絶対に逃げてね。保志逃げるよ!」
保志「おばあちゃーーーーん!」
佐藤おばあちゃんの言うことを聞き、自分の命と弟の命を守ることを最優先に
順子ちゃんは保志の服や腕を引っ張り急いで家の中に入り逃げていく。
佐藤おばちゃんは熊に持っていたスコップを投げつけ保志が落とした備中鍬を持った。
この備中鍬はスコップより軽く、先端も尖っている。
佐藤おばあちゃんはその備中鍬で熊に決死の覚悟で立ち向う。
相手は熊で体は佐藤おばあちゃんの倍以上大きい。
佐藤おばあちゃん「おおおおおおおお!!」
備中鍬を乱暴に降り回す。
追い払うことができればそれで済むが熊は興奮状態であり怖いもの知らずである。
追い払うことも状況が好転する望みもない。
せめて数秒、一秒だけでも順子ちゃんと保志をできるだけ熊から遠ざけたい。
母熊「この!!!」
母熊は腕を豪快に振る。
佐藤おばあちゃん「なに!!」
鉄の先端部分は熊の攻撃で砕け、もはや備中鍬はただの折れた棒と化してしまう。
佐藤おばあちゃん「まずい!!」母熊「逃がさない!!」
佐藤おばあちゃんは逃げようと背を向けるも熊が追いかけ突進してくる。
当然逃げ切れることはできず熊と衝突してしまう。
佐藤おばあちゃん「あああああああ!!!」
佐藤おばあちゃんは飛ばされてしまう。
飛ばされた佐藤おばあちゃんは倉庫の中へ。
倉庫の中へと飛ばされた佐藤おばちゃんだが
使わなくなった布団が置いてあったためそれがクッションとなった。
そのおかげで大事には至らなかった。
しかし熊の突進攻撃をもろに食らい、背中や腰を負傷してしまう。
佐藤おばあちゃん「いててて、これは効いたわい。布団がなかったら死んだかもしれん…」
佐藤おばあちゃん(でももう動けん…煮るなり焼くなり好きにせい)
全身に痛みが走り動けない。
生涯で一二を争う危険な出来事に直面してしまう。
死を悟った佐藤おばあちゃんだが熊が倉庫に入ってくる気配はなかった。
熊は子熊を保護していた。


母熊「あああなんてこと…クー…」
母熊は傷つけられたクーを優しく抱いた。
母熊の怒りが静まりこのまま子熊を抱いてこの場を去ってほしいがそうはいかなかった。
クー「他に僕を傷つけた奴がいる…お願いやっつけて!!」
母熊「わかったわ!私をク―をこんな目に合わせた者は絶対に許さないわ!!」
母熊「クーはここにいなさい。」クー「うん…」
クーを庭に置いていき、家の方へと歩み寄る。
母熊の標的は順子ちゃんと保志になった。
母熊は玄関ではなく家の横の壁を壊し台所の方から入っていた。
怒りに燃える母熊に妨げるものは何もない。
もはや無敵だ。
順子ちゃんと保志は母がいる洋室にいた。
幸「順子!その怪我は!」順子ちゃん「これくらいお母さんに比べたら対したことないわ」
幸「なに言ってんのよ!お腹から血が出てるじゃないの!」
幸「いつもいつも!あんたたちは!無茶ばかりして!」
娘と息子の危険行為に母である幸は叱るのである。
順子ちゃん「ごめん…」保志「ママごめん」謝り反省する二人。
母である幸は順子ちゃんと保志を優しく包み込むように抱いた。
いつもなら頭を叩いたりなど強く叱るのだが、幸の目から涙を流していた。
幸「ごめんね…辛いことさせて。私が守らないといけないのに…」
幸は何もできない自分に悔いていた。
順子ちゃんと保志は幸にとって大事な家族である。
もし足の怪我がなければ二人を守る為の行動ができたはずなのだ。
幸「あの熊許さないわ…」保志「くっ苦しい~」
幸は二人は強く抱いた。
母の涙とそしてこみ上げる怒りを感じ、順子ちゃんはあの熊がいきり立っている理由が分かった。
順子ちゃん「大きな熊があんなに怒っているのはもしかして子供を傷つけたから…」
クーを一番傷つけたの順子ちゃんと保志である。
しかし家族を大切な人を守るためにやったのであって二人は悪気など一切ない。
お互い傷つけあってしまっている。
母熊の怒りが静まることはないだろう。
保志「ママ…熊がおばあちゃんが…」
順子ちゃん「おばあちゃんが私たちを逃がしてくれたの…でも!」
幸「そんな…佐藤さんが…」
佐藤おばあちゃんが順子ちゃんと保志を逃がしてくれた。
その佐藤おばあちゃんは熊と対峙している。
保志「大丈夫だよね!おばあちゃんが」
すると台所の方からガシャンと大きな音がした。
順子ちゃん「嘘でしょ…」
熊が家の中に入ったということは佐藤おばあちゃんはあの熊に殺されてしまったのだと思い込んでしまった。
台所に入った母熊は暴れてテーブルをひっくり返したり置いてある物や食器類など壊していく。
テーブルには順子ちゃんと保志が握っていた作りかけのおにぎりが置いてあったが床に転がり落ちてダメになってしまった。
そして佐藤おばあちゃんのスマホから着信音が鳴っている。
発信者は広武である。
広武はこの佐藤おばあちゃんのスマホに何度も着信を入れているのだ。
だが佐藤おばあちゃんは応答することができない。
この状況では応答することはまずできないだろう。
三人は息を潜め、熊に気付かれないように動かずにじっとした。
しかし熊は激しさを増していて足音が徐々にこちらに迫っているように感じ怖くなる。
物が壊れる音もしてどんどん近づいてきている。
幸はゆっくり洋室の扉を開けて確認した。
まだ熊この部屋にいないがもうすぐこの近くにやってくる。
洋室の出入りは扉一つしかない。
熊が入ってきてしまうと逃げられず全員熊の餌食にされてしまう。
順子ちゃん「ごめんなさい…お母さん…保志…私が大事な家族を守るわ!」
彼女は母と弟を守るため立ち上がる。
幸「ダメよ!!行っちゃ!!ダメーーー!」
洋室から出て熊と戦おうとする順子ちゃんの腕を強く握り絶対に離さないようにした。
幸「順子…お願いここにいて…危険よ!あなたじゃダメよ!行かないで!」
幸「あんた熊に殺されるわ!!」
幸は娘を引き留めようと説得する。
順子ちゃん「だったらどうするの?みんなあの熊に殺されてしまうわ!!」
幸「きっと警察の助けがくる!落ち着いて。救急車もうじき来る!」
幸「順子…あなたは私たちの大事な家族よ!」
幸「あなたにもしものことがあったらお父さんも保志も私もみんな悲しむわ…」
幸「もう順子が傷つけられるのは見たくないわ…」
幸は母として家族として娘である順子ちゃんに必死に説得する。
だが順子ちゃんは
順子ちゃん「保志…お母さんをお願い!」
母の強く振りほどきを娘は洋室の扉を強く閉め行ってしまった。
幸「いやああああ!行かないで!!」保志「お姉ちゃーーーん!!」


順子ちゃんは小学1年生で小柄ではあるが運動ができよくご飯を食べる健気な女の子である。
変わった子で蛇を足で殺しスズメバチを素手で殺し、保志を誘拐した男を急所を突き撃退したことがある。
そして子熊と戦い佐藤おばあちゃんと保志の力もありやっと瀕死にまで追い詰めた。
その子熊を傷つけたせいで母熊は興奮し破壊の限りを尽くし人に危害を加えようとしている。
熊は凶暴で危険生物である。
今回ばかりは死を覚悟しないといけないだろう。
まず女の子一人でどうにかできるはずがない。
順子ちゃん「私がやるんだ!!私が家族を守るんだ!」
彼女は足を止めず熊がいる方へ駆けて行く。
怖くて逃げだしたいが母と弟がいる。大切な家族を守る為に彼女は戦う。
怒りで暴れ狂う母熊と闘志に燃える順子ちゃんは台所で相対した。
台所は荒らされ壁が破壊されている。
その破壊された壁から熊は入ってきたのだろう。
順子ちゃん「おばあちゃんをやったな!家まで荒らしあがって!」
順子ちゃん「あ!私のおにぎり!貴様!!食い物の恨みはデカいぞ!!」
台所に転がっているおにぎりを見て彼女はさらに憤慨する。
母熊「こいつ私に怒っているわね!こんなに小さいのに」
母熊も順子ちゃんの怒りを感じこちらを威嚇していると気付いている。
怒りの感情は恐怖心に打ち勝つ。
家族を守りたい勇気と腹の内側からこみ上げる怒りが彼女を奮い立たせる。
彼女の脳はフル回転し最善の手を考える。
倒すことはできない、であればまずは外へ逃がすことだ。
順子ちゃんは熊に背を向けず和室の方へとじりじり下がっていく。
和室の障子は開いたままである。
順子ちゃんは佐藤おばちゃんの家とその周辺を知り尽くしている。
彼女の作戦はまず熊を和室の中に入れさせその隙に台所へ戻る。
熊が台所に戻ってきたら次は壊れた壁におびき寄せ熊は追ってくると思うので自分が逃げれば自ずと熊は外へ出ていく。
そして外に出たら猛ダッシュ逃げて近所の方に身を隠す。
これが彼女が考えた最善策だ。
母熊「何をする気?」
母熊は順子ちゃんの動きを警戒した。
熊は一般的に人に対して警戒心の強い生き物である。
熊が慎重になり攻撃を仕掛けてこなくなればこっちとして有り難い。
沈黙が起きこのまま戦いが終息すればそれに越したことはない。
だがその沈黙は起きなかった。
母熊「殺す!!!」
母熊は順子ちゃんに狙いを定めて突進してきた。
順子ちゃん「来たわね!」彼女は作戦を実行する。
すかさず彼女は和室に入り口の手前待ち構える。
母熊は和室の障子を2枚とも吹き飛ばした。
順子ちゃん「うわああああ!!」
凄まじい迫力である。
障子がもし吹き飛ばされず倒れるように崩れたら彼女は下敷きになっていた。
順子ちゃんはひるまず、台所へ駆けていく。
台所に入り外へおびき寄せとするが
順子ちゃん「うわあ!しまった」バタン!
床に落ちている物につまづいて転んでしまった。
母熊「逃がさない!!」
和室から母熊は瞬時に軌道修正し順子ちゃんに突進していく。
順子ちゃん「やばい!」
彼女は横に倒れたテーブルを盾に身を丸くした。
熊はテーブルに突進した。
ドーーーーーン!!!
順子ちゃんはテーブルごと突き飛ばされる。
順子ちゃん「うあああああああああああ!!」
幸「順子!!いやああああああ!!」
娘の叫び声が聞こえ母である幸は錯乱し悲鳴を上げる。
保志「お姉ちゃあああん!!」保志は泣き叫ぶ。
幸「お願いもうやめて!!」
熊に突き飛ばされた彼女は、リビングに飛ばされる。
リビングに置いてあるソファに衝突しソファがひっくり返ったと同時に彼女はでんぐり返って倒れた。
順子ちゃん「うぐ…これはやばいわね…」
母熊「どこへ行った!!!」
母熊はこの順子ちゃんを探した。
テーブルに順子ちゃんは隠れていてそのテーブルを突き飛ばしたのだがそこに順子ちゃんがいたことは気づいていなかった。
もし熊が家中動き回ればいずれ洋室に入り幸と保志の命が危ない。
順子ちゃん「ううう痛い…動けない…」
順子ちゃんは全身に痛みが走り動けなくなってしまった。
また子熊に引き裂かれた腹の傷は浅かったがそれが開き出血してしまう。
母熊「どこだ!どこへ行った!」
オオオオオオオオオオオオオ!
雄叫びを上げる熊。順子ちゃんとその家族を本気で殺す気だ。
物を壊し暴れながらリビングの方へと近づいていく。
リビングには順子ちゃんがいて彼女は動けない。
絶体絶命の大ピンチ…。

続く…。

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