第24話 お盆は田舎で
順子ちゃんの父の広武は仕事の同僚と帰りであった。
広武「ふう~やっと休みだ。この会社は俺たち労働者をこき使いすぎだろ。」
仕事の同僚「ほんとですね。残業代は一応出ますけど。」
広武「みなし残業だがらな~」
仕事の同僚「何時間残業しましたか?」
広武「わからん40時間は軽く超えてくるかもしれん。」
みなし残業は固定残業代制と呼ばれていて、会社が残業時間をあらかじめ想定し、
そのあらかじめ想定した残業時間を含めて従業員の規定の労働時間としてみなすものである。
広武の会社は月の通常の労働時間が140時間と残業40時間を足した180時間を所定外労働時間としている。
広武は月平均200時間働いているため、超過した残業代も一応給料として会社が支払っているが
正直本人はそれでも安いと言っていた。
残業しなくても残業したとみなされ給料をもらうことはできるが
みなし残業を採用されている会社は基本給が少ない可能性があり、広武の働いている会社も同様である。
広武は営業の仕事をしていて労働時間の把握が難しい営業職はみなし残業を採用している。
月給24万(基本給16万、固定残業代6万、役職手当2万)で健康保険料や厚生年金などで差し引かれて
約手取りは20万であるが、広武には順子ちゃんと保志の二人の子供がいる。
この給料で妻と二人の子を養わないといけないがやはり生活は少し厳しい。
妻の幸がパートをして補っており節約もしている。
二人をこれから中学、高校、そして大学に進学するための教育費でお金がかかるため少々先行きは不安である。
広武と仕事の会話から40時間以上の残業をしていたそうだが
お盆の時期になり休暇を頂けたとはいえ8月の序盤から働き過ぎである。
仕事の同僚「繁忙期でしたからね。」
広武「契約は取れたからいいか。お盆が明けたら資料作りの地獄が待ってる。」
仕事の同僚「はあ~そうですね~」
家族のために働くそんな広武でも休暇は大事である。
明日からお盆休みでようやく羽を広げられる。
お盆期間は家族と田舎に戻る予定で満足にできなかった釣りをやるそうだ。
しかしお盆明けからも仕事は忙しくなるようで終始広武と仕事の同僚は暗かった。
家に帰った広武は玄関の扉を開けると暗い顔をした彼とは対照的に明るい顔をした。
妻の幸と長女の順子ちゃんと次男の保志が玄関の前で出迎えてくれた。
順子ちゃんと保志「おかえり」幸「おかえりなさい、あなた」
広武「ただいま」
幸「お疲れ様。今夕飯を用意しておくからね」
広武「ありがとう」
広武と幸は家のリビングに向かい、幸は夕飯をテーブルに置いた。
三人は食事を済ませていて、順子ちゃんと保志はお風呂も済ましておりパジャマ姿であった。
宮沢家の夕飯はいつも19時からとしているが広武が残業があると帰りが21時か22時以降になることが多く
広武が残業で遅くなるときはこうして三人が先に夕飯を食べることにしている。
広武の帰りが20時までなら三人は帰りを待って家族全員夕飯を食べるようにしている。
今日広武が帰宅した時間は21時であった。
リビングで夕食をとっている広武に順子ちゃんと保志の二人が寄ってきた。
保志「ねえねえパパ?ママから聞いたんだけど明日田舎に行っておばあちゃんに会いに行くんだよね?」
広武「ああ予定通り、お盆は田舎で過ごそう。」
保志「やった!おばあちゃんに会える!」
幸「よかったわね保志。けどお父さんは釣りがしたくて田舎に戻るのよ」
広武「そういうこと」順子ちゃん「やっぱりね」
広武「この前、キャンプで釣りに行ったときは災難だったからな」
以前家族みんなでキャンプへ行き広武はそこで釣りをする予定だったが
突然の大雨と川の氾濫で釣った魚も釣り具も流され危険な目に遭ってしまった。
キャンプ場にいた人々の協力や救助で死者がでなかったことが幸いであり釣り仲間もできた。
もう一度あのキャンプ場で釣りといきたいが慣れている川と静かな田舎で釣りがしたいそうだ。
あの川で魚がいっぱい採れるように明日への期待と休息のため、広武はお風呂を済ませ
そのまま布団へ妻の幸とともに眠りについた。
そして朝となり順子ちゃんたち家族のお盆の一日が始まった。
家族全員車に乗り、大子町へ出発した。
宮沢家が半年前まで大子町に暮らしていた。
順子ちゃんと保志にとって大子町は故郷である。
大子町は茨城県久慈郡の町で、観光では袋田の滝や緑豊かな自然が体感できる八溝山などがある。
順子ちゃんと保志もこの町で生まれた。
宮沢家が住んでいた場所は農村地区で近所の人々は農家をしている人が多く、
広武と幸も農業をしていた。
作物が育たないこともあって収入や稼ぎがない時でも
親戚や近所の人達と農作物の野菜を分け与え助け合いながら暮らしていたので食に困ることはなかった。
しかし順子ちゃんと保志が成長すれば学校の進学のためお金が必要になる。
安定した収入を得て二人を安心して学校に行かせたいため、県内の水戸市で今の仕事を見つけ
それと合わせて順子ちゃんは水戸市の小学校に入学することとなった。
家族全員引っ越すことになってしまい、特に仲の良い佐藤おばあちゃんは惜しんだが
長期休暇や余裕がある時は戻って会いに行くと約束したのだ。
お盆は田舎で寝泊まりすると聞いて順子ちゃんと保志はおばあちゃんに会うのを楽しみにしている。
いつもおばあちゃんは二人を自分の息子のようにかわいがっていた。
きっとおばあちゃんも二人に会うのを楽しみにしているだろう。
水戸市から大子町へと走る車はおばあちゃんに会いたい二人の思いを乗せて走るのである。
車は県道を走り、道路はあまり混雑せず約一時間で大子町に入り、おばあちゃんの家に到着した。
保志「おばあちゃーん!!」
車のドアの鍵を開けた時保志が飛び出すように車から降りて行った。
幸「こら保志落ち着きなさい!」
保志「おばあちゃーん!!」
母の言うことを聞かず、おばあちゃんの方に突っ走っていく保志。
保志はおばあちゃんに抱き付いた。
おばあちゃん「おーう保志~あたしも会いたかったぞ~」
まるで織姫と彦星のように感動の再開をしたかのようである。
順子ちゃんもおばあちゃんに抱き付きたかったが弟に譲った。
おばあちゃん「順子~」順子ちゃん「おばあちゃーん!!」
おばあちゃんに声をかけられ順子ちゃんは走っておばあちゃんに抱き付いた。
幸「もう二人ともおばあちゃんが好きなのね」
広武「俺たちもだいぶ世話になったもんな。」
広武「もう引っ越してから半年になっちまうのか。あっという間だな」
幸「そうねなんか昨日までここに住んでいたって感じがするわ。」
過去に人は思い出や思い入れがある場所、長い間住んでいた場所に再び戻るとどこか懐かしい気持ちになる。
年を取るにつれて1年の比率が小さくなり1年が短く感じることをジャネーの法則といって、まさにそれで
大人である広武と幸の水戸に引っ越してからの半年はあっという間なのだ。
それとは反対に子供である順子ちゃんと保志の半年は長く感じる。
水戸市に引っ越すことになりおばあちゃんと離れ離れになるのが嫌で泣いていた。
保志は住んでいた家や町を懐かしむ気持ちとおばあちゃんに会いたいという気持ちが半年間で大きく膨らんでいったのだ。
順子ちゃんは保志の姉として涙をぐっとこらえていた。
これを皮切りに彼女は大人になるための一歩を歩み始めたのであろう。
そしておばあちゃんこと佐藤珠は夫の佐藤栄太(80歳)が10年前に他界して現在一人で
年は今年で88歳と米寿をむかえ人生の終着点が近づいている。
おばあちゃんの息子は自立していて他県に引っ越している。
たまには連絡をくれるが運送業の仕事をしていて忙しくあまりこちらにこれないらしくほぼ疎遠の状態である。
宮沢家の第一子の妊娠報告を聞き順子ちゃんが生まれたことをきっかけに知り合うことになった。
寿命や病気でこの先どうなるかわからないがおばあちゃんは生きているうちに順子ちゃんと保志を愛を込めてかわいがってやりたいのだ。
おばあちゃん「宮沢さんや、仕事の方は順調か?」
広武「まあまあです。お盆が明けたらきつい仕事が待っています。」
仕事のことは一旦忘れて休暇を楽しもうと思った広武だがおばあちゃんに不意に仕事のことを言われて憂鬱になる。
おばあちゃん「あまり無理せんようにな。」
おばあちゃん「お腹すいただろう。あたしが用意するから家の中にいらっしゃい」
幸「いつも本当にありがとうございます。申し訳ないです。」
広武「ではお言葉に甘えて。」順子ちゃん「おばあちゃんのご飯が食べれる!!」保志「わーい」
時間は12時近くになり順子ちゃんと保志のお腹が空いている頃だ。
宮沢家家族はおばあちゃん家へ行きおばあちゃんの手料理をいただくことにした。
おばあちゃん家の台所のテーブルには、五目御飯、豚汁、さつまいもとなすの天ぷらにおろし大根、
きんぴらごぼうに白菜の浅漬け、そして卵焼きだ。
これ全部おばあちゃんの手料理でそのほとんどがこの農村で育てた農作物なのだ。
おばあちゃんの手料理の中で一番好きなのは卵焼きだ。
柔らかい食感にちょうどいい塩味に甘さのある味の卵焼きが保志の大好物である。
この料理の中で一番子供が目を光らせるのは卵焼きだろう。
保志にとっておばあちゃんの卵焼きは食卓の上の金塊である。
保志が先に箸をつけたのはやはり卵焼きでそのまま彼の口に運ばれた。
保志「おいしい」そう言われておばあちゃんは嬉しくなる。
順子ちゃんは五目御飯を口の中にかきこみ、おかずを口にたくさん入れた。
幸「こらこら順子!ゆっくり噛んで食べなさい。行儀悪いんだから!」
おばあちゃん「いいのじゃいいのじゃ、たーんとお食べ」
おばあちゃん「あっ保志、にんじんを…」
保志はきんぴらごぼうのにんじんを食べているのだ。
おばあちゃんは保志がにんじんが嫌いなことを知っている。
おばあちゃん「にんじん食べられるようになったんか…」
保志「うん少しだけ。でもおばあちゃんのにんじん少し辛いけど甘くておいしいよ。」
幸「引っ越してからいろいろありましたが、保志はにんじん少しでも食べられるように頑張っているんです。」
おばあちゃん「そうか。それはよかった。」保志の成長ぶりを感じたおばあちゃんである。
きんぴらごぼうは辛さを控えめに子供でも食べられるように甘くしたのできっと保志も気に入って食べてくれるはずである。
たくさん作った手料理も順子ちゃんと保志と広武が平らげてしまった。
食いしん坊の父の広武ににてしまったみたいだがおばあちゃんはこれからも順子ちゃんと保志の成長を願っている。
食後のお茶を飲んでいる時だった。
おばあちゃん「もう将来はここに住まなくなってしまうか?」
幸「税金もあります、まだ水と電気は出ますが使わなくても基本料金がかかってしまいますので…」
広武「そうだよな…。古くなってきていますし買い手もいないと思うので空き家にするかもしれません。」
土地や家を保有していると固定資産税がかかる。広武と幸は旧家を手放す方向で検討している。
家が古くなってきてしまっているのも引っ越した理由の一つにもなっている。
おばあちゃん「荷物とかまだ残っているんかい?」
幸「はい、まだ残っています。」
広武「ぼちぼち片付けようと思っています。いらなくなったものは売って金にしようかと思っています。」
広武「あと釣り具も残っていますし…」
幸「主人は釣りが目的でここに来たわけでもありますけどね」
保志「ねえおばあちゃんにあえなくなっちゃうの?」
大子町の旧家を手放した後、おばあちゃんに会えなくなってしまうのか心配する保志であるが
広武「近い将来、家を手放すけどつっても裏道通っても2時間はかからないし、会えなくはない。」
おばあちゃん「会いたいときはいつでもいらっしゃい。」保志「うん!やった!」
広武「会える機会があればな。その代り俺の釣りには付き合ってもらうぞ。」
引っ越した水戸から大子町まで車で県道や広武の言う裏道を経由しても2時間かからない。
会える機会があればいつでもおばあちゃんに会えるということで安心する保志である。
保志「バイバイ!おばあちゃん!」順子ちゃん「バイバイ!」
幸「お邪魔しました。」広武「また来ます。」
食後の休憩した後おばあちゃんの家を後にする。
おばあちゃん「お元気で」おばあちゃんは手を振った。
宮沢家は旧家へ行った。
宮沢家は旧家に到着した。人里離れた2階建ての古民家である。つたが生えてきて外壁を侵食しようとしている。
玄関に入り、床を踏むときしむ音がする。
中の状態だが床が抜けていたり、壁材がところどころ剥がれおちている。
喚起のため各部屋の窓を開けて新しい風と光を入れた。
ほこりまみれでそれだけでなく天井を見ると蜘蛛の巣が張っている。
窓の金属部は錆びれていて窓の開け閉めは少し面倒で網戸は大きな穴ができてしまい虫の侵入を許してしまう。
前ここに住んでいた頃でも屋根裏にネズミが潜んでいる。
もしかしたら繁殖しているかもしれない。
家の手入れをしなければ腐敗するだけでなくネズミや害虫の巣窟と化してしまう。
税金も払わないければいけないのでよほど思い入れがない旧家はすぐに手放したいだろう。
売るか空き家にするかいろいろ考えているがまずは残った荷物を整理して中をできるだけ綺麗にしておきたい。
家の中には荷物や服が置いてあるがほこりが少しかぶさっている。
順子ちゃんと保志のおもちゃやぬいぐるみも少し残っている。
思い入れがまだあるので水戸へ持ち帰るであろう。
ビビットのゲームソフトも残っているがほこりが入らないように大切に保管されている。
肝心のゲーム機はないので遊べない。
ほとんどのゲームは広武の所有のものだが、内容はパチンコや麻雀にそして釣りのシミュレーションゲームである。
順子ちゃんと保志にはあまり興味がなく引っ越しの際に持っていくゲームソフトの中に選ばれなかったのだ。
広武はこのゲームを中古で安く購入したもので、本人はあまり思い入れがなく
仕事も忙しくゲームをする暇がないためおそらく売ってしまうだろう。
保志「GVD欲しいから買ってパパ!」
保志はGVDが欲しいらしく昨日も父である広武にせがんでいた。
順子ちゃんの友達の勇の家で遊んだGVDのゲーム「ドラゴンアドベンチャー」を遊んだのが
楽しかったみたいで自分もGVDを買ってあのゲームソフトも買って遊びたいのだ。
広武「もうビビットは飽きてしまったか」
広武「だったら家の片づけと俺の釣りに付き合ったら買ってやるぞ!」保志「やった!約束だよ!」
順子ちゃん(やったわ!これで私もGVDで遊べるわ!!)
家の片づけの手伝いと広武の趣味の釣りに付き合うことを条件にGVDを買ってもらえることになった。
保志は大喜びで順子ちゃんも心の中で喜んでいた。
広武「ビビットはもう古いし新しいゲームで遊べたいよな」
古いゲームもいいが子供には時代のあったゲームを遊ばせた方がいいだろう。
学校生活で友達やクラスのコミュニケーションツールにもなる。
自分の好きな趣味に金をかけているし、自分の息子にもお金を使うべきだ。
ご褒美という形で保志にゲームを買ってあげよう。
広武「保志、ママの手伝いに行きなさい。順子も一緒に手伝ってやってくれ」順子「はーい」
幸「はい雑巾と掃除機、家の中の掃除をお願い。お父さんが床の穴に新聞で伏せているからそこには近づかないでね。」
母である幸の指示で各部屋の掃除を順子ちゃんと保志に任せた。
広武と幸は荷物の整理していたあっちで使うもの、処分するものを二人で相談する。
順子ちゃんと保志のおかげで家の中はだいぶきれいになった。
水道も電気もガスも使えるのでまだまだこの家で暮らすことはできる。
半年前にこの家で暮らしていたのでその暮らしが戻った気がする。
お盆の4日間しかないが時間が止まっていたこの家の時間が動き始めた。
しかし1台もテレビがないのでニュース番組など新しい情報や世間の動向を見ることはできない。
テレビがないと静かである。ただ外の虫の鳴き声が聞こえるだけだ。
持っているスマホでネットを見るのもありだがネットが繋がりづらく時には圏外になってしまう。
荷物整理に集中できると言えるが暇な休憩時間は思い出の品でも眺めて時間をつぶした方がいいだろう。
順子ちゃんは夏休みの宿題と筆記用具を持ってきている。
順子ちゃんにとっては宿題に専念できる環境だ。この家は風通しがよく、夜も涼しく暑さを感じずに宿題ができる。
広武は荷物を整理している過程で釣り具を見つけた。これで釣りをするそうだ。
広武は釣りができれば時間をつぶせる。
広武「保志、俺の釣りに付き合ってもらうぞ。」保志「はーい。」
GVDを買ってもらえるので広武の釣りに付き合う保志に
順子ちゃん「私も行く」順子ちゃんも父の釣りに付き合うそうだ。
久しぶりに田舎や森の景色を眺めていたいのだろう。
広武「おう順子!よし三人でいくぞ。母さん留守番頼む。」
幸「誰も来ないと思うけどわかったわいってらっしゃい」
外は少し暗くなってきているがまだ釣りができる時間帯である。
1匹でも2匹でも魚を釣って夕飯のおかずにしよう。
広武と順子ちゃんと保志の三人は車に乗って川に行った。
川に到着した三人だが、広武は川の音を聞いて癒されていた。
広武「お~この音だよ!癒される~」待ちに待った釣りで気分は上々である。
広武は順子ちゃんと保志よりもはしゃいでいた。
折りたたみ椅子を3つだし、釣り具も自分の分だけでなく順子ちゃんと保志にも釣り具を渡した。
順子ちゃん「私たちもやるの?」広武「うん折角来たんだからな」
順子ちゃん「う~ん」広武「釣った魚は夕飯のおかずにもなるぞ」
順子ちゃん「う~ん」食べることは好きなのだが釣りで魚を釣れるまでじっとしていられずどうもここだけは父に遺伝しなかったようだ。
そこに釣り対して父と子の間に温度差がある。
しかし保志は釣り竿を持って、じっと水面を見つめ餌に魚が食らいつくのを待っていた。
姉と同じくじっとしているのが嫌で釣り竿を投げてしまうこともあったが熱心に釣りをしているのは珍しい。
順子ちゃん「え?保志?」広武「うんうんそれそれ!保志も釣りが好きになったか」
保志(GVD…)
保志は釣りが好きなったのではないゲーム機を買ってもらえるからだ。
保志は魚ではなくゲーム機に釣られたのだ。
いい子にして我慢すればご褒美が貰えると保志は今それを実行している。
広武「弟に見慣れてほれ姉ちゃんもやってみ」順子「ぐぬぬ…」(付き合うじゃなかった)
順子ちゃんもしぶしぶ釣り竿をもって川を眺めていた。
しばらくして保志の釣り竿が上下に動き始めた。
保志「あ!もしかして!」広武「きたきた!」
保志の釣り竿の餌に魚が食らいついたようだ。
広武「よしいくぞ!ひっぱれ!」保志「うん」
広武も手助けして保志は釣り竿のリールを回しながら力いっぱい引いた。
保志「それ!あ!やった!!」広武「やったな保志!」
見事保志は魚を一匹釣れた。
保志「やった!やった!初めて釣れた!!」
釣れた魚はイワナで大きさは28cmである。
この魚が記念すべき一匹としてなかなかのものだ。
順子ちゃん「ぐう~保志より大きい魚を釣ってやるわ!!」彼女は気合を入れた。
順子ちゃん「よし!やったわ!」
彼女も魚が釣れた大きさは23cmと保志が釣った魚より小さいが釣れただけでもよいことである。
広武(GVD買ってやるか!)
熱心に釣りをやっている二人を見て父の広武は嬉しく思い、二人のためにゲーム機を買うことを決心した。
釣りで魚が釣れたようになにか快感を覚え、よいきっかけや思い出が出いれば自ずと好きになり
それが趣味へと変わっていく。できれば釣り好きになってほしいと広武は思った。
広武「よしあと2、3匹は釣るぞ!!」
家族全員分の魚を釣って今日の夕飯は豪華にするため広武も釣り竿を持ち大物を狙う。
三人の楽しい釣りの時間を過ごしているのだが…
ガサガサ…
保志「ん?何か聞こえない?」順子ちゃん「え?聞こえないけど?」広武「うん?気のせいじゃないか?」
保志は木陰から物音が聞こえたようだ。
保志「誰かいるのかな?」
保志は物音がするほうに近づくと
ガオオオオオオオオオオ!
保志「うああああああ」
広武「どうした!保志!うあああああ!!」順子ちゃん「えええええ?!!」
保志の方を振り向く広武だが大声で叫んだ。
体長2mを超える熊が三人がいる川に出現した。
熊「ガオオオオオオオオオ!」
熊と遭遇した三人はどうなるのか……
続く
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