ジュンコチャン

第20話 ドラゴンアドベンチャー 序章

良樹は、自分の部屋の机に夏休みの宿題を置いた。
8月10日の夜、彼は1つも夏休みの宿題に手を付けていない。
宿題プリントは1枚もやっておらず、絵日記も真っさらである。
順子ちゃんに言われたことが気になっていたのだ。宿題をしているのかと。
友達はちゃんと宿題をしていて中には終わらせた子もいる。
良樹「まっまだ8月10日だぜ。焦らなくてもいい、大丈夫だ!間に合う!」
焦りを感じ机に向かって宿題に取り組もうとした良樹だが、まだ間に合うと楽観し勉強椅子から降りた。
良樹たちが通う小学校の夏休みは8月31日までありまだ時間はあるがもう半分を過ぎているのだ。
そろそろ宿題をするべきではないだろうか‥。
彼の手には鉛筆ではなくゲームのコントローラーであった。
明日の8月11日は、友達の勇と真木が家に遊びに来る予定だが順子ちゃんが来るなんて本人は知らないのであった。
なぜなら彼女が勝手に決めたことなのだから。


勇「おはよう真木。」真木「おはよ~今日も暑いな~」勇「うん暑いね。忘れ物ない?」
真木「おう!忘れてないぜ!今日は良樹んとこでゲームだからな。」
真木はリュックからゲーム機を出して、忘れ物はないと証明して見せた。
勇「ふふもちろん僕も忘れてないよ。」
勇も高級そうなバックからゲーム機を取り出した。
二人が見せ合っているゲーム機だが、その名は「Game Of Vision Device」(ゲームオブビジョンデバイス)である。
「Game Of Vision Device」は「SENDOU社」が開発した家庭用ゲーム機で、テレビに接続してテレビの画面で遊べるだけでなく
ゲーム機の本体の画面で遊ぶこともできユーザーの自由なプレイスタイルで遊ぶことができるのだ。
前者はテレビモードで後者は携帯モードである。
世界でも人気で、GVDという略称で人々から呼ばれている。
機種もいくつかあり、勇が持っているのは最新かつ高性能機種で「Game Of Vision Device Noble」(ゲームオブビジョンデバイスノーブル)であり
従来の「Game Of Vision Device」よりもメモリの容量が倍以上あり、CPU・グラフィック性能も格段に上がっている。
携帯モードもできるが従来は本体の画面が6.5インチ液晶でやや画面が小さかったが高性能版の画面は9インチ液晶で
画面も大きく綺麗なので快適にプレイができる。
スペックも容量も大きさもすべてがグレードアップした「Game Of Vision Device Noble」であり従来の正当進化版と言えるが
従来(3万円)よりも値段が高く、6万円以上しており一般のユーザーには高くて買いにくいのが難点。
また従来よりも生産出荷数が少ないためプレミア価格が付く可能性があり言わば高級ゲーム機なのである。
裕福な家庭に住む勇であるからこそ買える代物なのだ。
反対に真木が持っているゲーム機は、「Game Of Vision Device Compact」(ゲームオブビジョンデバイスコンパクト)である。
「Game Of Vision Device Compact」は従来の次に発売された機種だがこちらは携帯ゲーム機である。
つまり、「Game Of Vision Device」の携帯モードに特化した計量版ということだ。
画面は6インチと従来の携帯モードよりも画面が小さく、グラフィック性能も落ちている。
また「Game Of Vision Device」にはテレビモード専用のゲームソフトもあり
総じて「Game Of Vision Device Compact」では遊べるゲームが少ない。
値段は1万6千円と、従来より約半分の価格でコンパクトかつリーズナブルでありその点においては評価できるが
遊べるゲームが少ない点が今日まで評価を落としている理由である。
真木の家のテレビはブラウン管テレビであるが地デジチューナーが接続されているため
デジタル放送の地上波の番組が視聴できる。
「Game Of Vision Device」をテレビモードでプレイするには専用のHDMIケーブルをテレビのHDMI端子に接続する必要がある。
ブラウン管テレビにはHDMI端子がないものがほとんどで、テレビモードで遊ぶことができないのだ。
真木の家庭は自営業で忙しく、休憩時間にニュースぐらいしかテレビを使わない。
真木の家庭のように、テレビモードでプレイができない家庭もあるためそういった点から値段も合わせて
携帯ゲーム機専用の「Game Of Vision Device Compact」が選ばれていることもある。
「SENDOU社」が「テレビモードか携帯モードどっちがいい?」というアンケートをとった結果
場所を選ばなくてよいから、テレビモードじゃなくても十分遊べるからといった理由で
携帯モードを選ぶユーザーが多かった。
また従来の人気のゲームシリーズの多くは据え置きで遊ぶゲームが多かったが
「Game Of Vision Device」の発売により、さまざまな人気ゲームシリーズも
このゲーム機向けにソフトがリリースされていることもあり、携帯モードで手軽で遊べるようになったのは大きい。
「Game Of Vision Device」はインターネットに繋げることで通信プレイで全国のプレイヤーと対戦ができるだけでなく
月額料金など契約は必要になるが動画配信サービスを利用してアニメやドラマなど視聴することができる。
良樹の家庭と勇の家庭はネット環境が整っているが真木の家庭は、ネット環境がない。
3人でゲームで遊ぶ時は良樹の家か勇の家で遊ぶことになる。
真木の家で遊ぶこともあるが両親が経営しているラーメン店のラーメンをご馳走している。
当然商売なので有料ではあるが勇が良樹の分の代金を支払っているので問題はない。
今回は良樹の家で遊ぶ予定である。


順子ちゃん「勇君!真木君!おはよう~!」勇と真木「おはよう」
勇と真木が良樹の家である高橋家に遊びに行く途中、順子ちゃんと出会う。
真木「友達の家で宿題か?」順子ちゃん「ええ!良樹の家にね!」真木「はあ!?良樹に」
勇「なぜ宮沢さんが?良樹の家に?」順子ちゃん「はい、宿題やってるか気になりませんか?」
順子ちゃんは夏休みの宿題のことで良樹の家に行くらしい。
真木「宿題?あいつのことだからやってんじゃねえか?」
勇「良樹のことは気にしなくてもいいんじゃないかな。自分の宿題をやった方がいいと思うよ。」
順子ちゃん「そうよね…。気にする必要はないのかも。」
彼女が持っているのは昨日と同じ猫の絵柄がついたトートバックで中には夏休みの宿題が入っている。
勇に言われて、良樹のことを気にしているよりも自分の宿題をやった方がいいと気づかされる。
出掛けたのは夏休みの宿題を快適にできる場所を探すためである。
彼女の家にはエアコンがなく、扇風機だけで暑い時期を凌ぐしかなく、その扇風機の風が宿題プリントを飛ばして不便なのだ。
友ちゃんの家庭では、本日から友ちゃんの父の仕事が一日早く盆休みになり家族旅行でどこかに遊びに行っている。
順子ちゃん「図書館でも行こうかしら…。もうすぐ開館時間だし。」
勇「え?今日からあの図書館休館だよ。」順子ちゃん「え!そうなの~!?」
昨日宿題しに利用した図書館は8月11日から8月15日まで休みである。
勇「うん。お盆明けまでね。」順子ちゃん「なんでよ!!ちくしょーーー!」勇「あ…僕に言われても…」
勇の前ではいつもかわいらしい声でお淑やかに振る舞う順子ちゃんだが
暑さで冷静さを欠き、化けの皮が剥がれたのか、低いガラ声を発し山姥のような形相で睨みつける。
彼女は自分の思い通りにならないとキレてしまうことがたまにあるが
当初予定していた良樹の家に行くのを諦めそうになり、友ちゃんは家族旅行で図書館は休館と
このやり場のない気持ちが、彼女を沸騰させ怒りが湧き出てしまったのだ。
真木「お…おい、ちゃ…ちゃんと調べておけって。けっけど良樹の家に行く予定だったんだ。」勇「あわわ…」
真木「ど…どうする…怒らせたのお前だろ…!」勇「え!僕何もしてないよ!」
勇と真木は鬼になった順子ちゃんに震えすぐに立ち去りたい気持ちである。
別に二人が彼女を怒らせたわけではない。彼女が勝手に怒り出したのだ。
順子ちゃん「良樹の家に殴り込みに行くわよ!」勇「ええ!?」彼女は良樹の家に行くことを決断した。
順子ちゃん「良樹が宿題してるか心配じゃないの?あんたらそれでも友達なの!!」真木「いやあの‥」
順子ちゃん「まったくあんたたちは!!しょうがないわね!!」真木「ええ‥」
二人は理不尽に彼女に怒られてしまう。もう一度言うが彼らは悪くないのである。
今日は良樹の家でゲームで遊ぶ約束だが勇と真木は順子ちゃんに引っ張られ、良樹の家に連れていかれるという運びとなった。
勇「宮沢さん、良樹の家の場所わかるんだね‥」
順子ちゃん「うん、前いったことがあって、お出かけの約束したことあるから」
順子ちゃんは一度良樹の家に行ったことがあるので、住所がわかっている。
順子ちゃん「おーい良樹!」良樹「な!あの声は!」
部屋の窓から聞こえる銅鑼声は順子ちゃんである。
一瞬耳を疑い、順子ちゃんの声は空耳ではないかと部屋の窓から外を覗くと玄関前に勇と真木と順子ちゃんがいた。
良樹「え‥嘘だろ‥順子が来てるだと‥!?」
順子ちゃんが前に出て先陣で立っていて、後ろに勇と真木が震えながら抱き合っていた。
良樹は一度窓のカーテンを閉めた。良樹「はは‥いや‥何かの間違いだろ」
良樹はもう一度窓のカーテンを開けた。
すると二階の窓を不敵な笑みで順子ちゃんが覗いており、彼女と目があってしまった。
すぐに目を逸らして、勇と真木の二人の様子を見たが、助けを求めているような表情でこちらを見つめていた。
良樹の母が三人を出迎た。後ろの勇と真木は真っ直ぐ立った。
順子ちゃん「おはようございます。」勇と真木「おはようございます。」
良樹の母「おはよう。今日は順子ちゃんも一緒ね。さあ入って。」順子ちゃん「お邪魔しま~す」
良樹の家に順子ちゃんが入ってきてしまった。
母が受け入れてしまい、もう追い出すことはできない。
ちなみに順子ちゃんが良樹の家の中に入るのは初めてである。


順子ちゃんは階段を駆け上がり良樹がいる2階の部屋に入っていく。
勇と真木も後ろから彼女に続いていく。
まるでお城に侵入し大広間を攻めるかのようだ。
順子ちゃん「良樹ーー!」良樹の部屋の扉を開けた順子ちゃん。
順子ちゃん「ん!?」彼女は良樹の部屋のテレビの映像を見た。
鮮やかに広がる草原にかわいいモンスターが走ったり青く透き通る海の上を竜が飛んでいたりなど
冒険心をくすぐるような映像が流れ、彼女はそれに魅了された。
順子ちゃん「何これ!!何て映画なの?」
夏休みの宿題のことを忘れてしまうくらいテレビに流れた映像に順子ちゃんは興味津々だ。
良樹「ドラゴンアドベンチャーだよ。」順子ちゃん「ドラゴンアドベンチャー?」
良樹「GVDのゲームだよ。」順子ちゃん「へえ~私も見たい!!今度私もDVDレンタルでも借りてみようかしら。」
勇「宮沢さん、DVDじゃなくてG・V・Dだよ。」順子ちゃん「GVD?」
順子ちゃんはDVDとGVDを勘違いしていたようだ。
良樹「はははDVDか!!勘違いしてやんの!」良樹は笑い転げた。
順子ちゃん「あ--ん!!!」良樹「うげ!いたたた」
順子ちゃんは良樹の頭を掴み圧力をかけた。
良樹「痛い痛い!わっわごめんなさい~」謝り、離してもらった。
真木「順子もゲームとかするのか?」順子ちゃん「まあね、ビビットで遊んでるわ。」真木「ビビット?」勇「古いね。」
「ビビット」は同じく「Game Of Vision Device」を開発した「SENDOU社」であるが、20年以上前に発売されたゲーム機である。
順子ちゃんたちが生まれる前なので知らない子がいるのも不思議ではない。
「Game Of Vision Device」ではインターネットショップサービスのSENDOUメンバーズに加入すれば
ゲームヒストリーミュージアムで過去にSENDOU社が発売した懐かしのゲームを遊ぶことができるので
そこで「ビビット」の存在を知る子もいるだろう。
「ビビット」は順子ちゃんの父である広武が昔遊んでいたゲーム機であり今でも20年以上の時を経ても遊べるのだ。
「ビビット」の話になりつつあるが、良樹の家で遊びに来た目的は、「ドラゴンアドベンチャー」というゲームを遊ぶことである。
「ドラゴンアドベンチャー」とはオープンワールドアクションRPGで初週売上げ3000万本達した大人気作である。
オープンワールドは、ゲーム内の世界にプレイヤーが自由に操作して探索できるゲームである。
人気の理由はその自由度の高さにあり、従来のゲームのRPGはプレイヤーに制約が課されたものが多かったが
オープンワールドはその制約がほとんどなく、プレイヤーの好きな順番で進行や攻略をすることができるのだ。
ゲームグラフィックや3D表現の技術とそれを処理するためのCPUが進化したことによって
自由度の高いゲームを実現することができるようになった。
ただオープンワールドのジャンルのゲームだからよいというわけではなく
ゲーム性や操作性などプレイヤーに快適にプレイできるようにプログラムされているのか
また広大なマップを再現するために大きなデータ容量や高度の処理が必要で
容量は無限ではなく、その限られた容量にプレイヤーに飽きさせない工夫や面白さがないとプレイヤー離れて行ってしまう。
例えば、何もないただ広いだけのマップを歩かせるとプレイヤーに飽きや退屈さが生まれてしまう。
これを強要させるとプレイヤーに不快感を与えかねない。
アニメや漫画やゲームなど人々を楽しませるコンテンツが数え切れないほど多く、同業他社と競争していかなければならない。
美人は三日で飽きると言うが、ゲームは一日で飽きて他に行ってしまうほどたくさんのゲームが世の中に溢れている時代なので
プレイヤーをいかに楽しませるかが鍵となる。
「ドラゴンアドベンチャー」はその自由度の高さとプレイヤーを楽しませる工夫に優れており 大ヒットしたゲームなのである。
モンスターとのバトルは迫力と臨場感があり、広大なマップやダンジョンに数多くの仕掛けやギミックが満載で、
手に入れたアイテムを駆使して移動しやすくしたり地形を変更したりするなどの面白さがあるのだ。
オフラインで遊べる一人プレイでも満足に遊べるが、ネットにつないで協力プレイできる点がこのゲームの人気を博した。
協力プレイは一人プレイよりも出現する敵の数が増え、HPも増加し、一人プレイでは手に入らないレアアイテムを入手することができるのだ。
ネットワーク上に友達を作り、たくさんの人と一緒に冒険するのが醍醐味である。
「ドラゴンアドベンチャー」はまさにゲーマーが求めていた夢とロマンが詰め込まれたゲームなのだ。
順子ちゃん「私もそのゲームやりたーい!」順子ちゃんも「ドラゴンアドベンチャー」をプレイしたいそうだ。
良樹「ええお前もやんの?ソフトもってないだろ?コントローラーとかもってないのか?」順子ちゃん「持ってないよ」
「ドラゴンアドベンチャー」を今日知った彼女には当然ソフト自体を持っていないし、GVDのコントローラーすら持っていない。
良樹「悪いけど、コントローラー2個持ってねえんだよな~」
勇「じゃあ僕のコントローラー貸してあげるよ。」
順子ちゃん「まあ!ありがとう~大好き~」
勇は予備のためにコントローラーを持っていたため、順子ちゃんにコントローラーを貸すことができた。
順子ちゃんは再びお淑やかになって勇に接する。
協力プレイは最大七人でソフト本体のデータの共有は4つまでである。
ホストのデータをもとに進行され、ゲストは本体のソフトデータから集めたアイテムや装備をホストのデータで転送したりトレードしたりすることができる。
GVDゲーム機の周辺機器であるコントローラーを4つまで繋げることができ、GVDゲーム機本体で四人まで遊ぶことができるのだ。
ネット接続によるGVDゲーム機本体かつゲームソフト本体のゲストプレイヤー一人とGVDゲーム機本体かつゲームソフト本体のゲストプレイヤー三人
そしてホストプレイヤーのGVDゲーム機本体のコントローラ接続によるゲストプレイヤー三人を合わせて七人で協力プレイすることができるのだ。
ちなみにホストプレイヤーのGVDゲーム機本体でしかコントローラ接続によるゲストプレイはできないようになっている。
もしゲストプレイヤーのGVDゲーム機本体のコントローラ接続によって四人遊ぶことができれば
最大16人で遊ぶことが可能になるが、処理が難しくなってしまうので開発側は断念したそうだ。
これで順子ちゃんも「ドラゴンアドベンチャー」をプレイすることができる。
良樹たち三人はまずこのゲームのエピローグであるストーリーを読んでから始める。
これを見て、順子ちゃんも「ドラゴンアドベンチャー」の世界を知ることになる。


栄光の大地アドベント…
人々は、自分たちの住む地上をそう呼んでいた。
その大地に赤ん坊が光に包まれながら降りてくる。
竜聖の都エディンの王子ドラルは空から降りてくる赤ん坊を、両手を広げて受け止めた。
その赤ん坊は女の子であった。
王子ドラルはこの赤ん坊に不思議な力を感じた。
彼はその赤ん坊をエーデルと名付けた。
ドラルはエーデルを王宮に連れ帰り、神官たちに与えた母乳で育てた。
やがてエーデルは、スクスクと育ってゆく。
特に王宮に仕える者たちはその少女から不思議な力を感じ取り、その少女を聖女そしてこの国の姫として大切にすることに決めた。
それは彼女が竜聖の都の民たちの希望となるべき存在であることを祝福したのだった。
王子ドラルとエーデル姫は家族のように暮らしていた。
この時代、食糧難や思想の違いによりさまざまな国で争いが絶えなかった。
竜聖の都エディンも例外ではない。
戦争によって民たちは殺され、戦士たち血によって大地は赤く染まってしまう。
その戦乱は年を追うごとに激しさを増してゆき、日に日にエディンの民の生活を圧迫していった。
エーデル姫は戦争を止めるべく自ら戦渦に入って、戦士たちに戦いをやめるよう呼びかけた。
ドラル王は、エーデル姫が戦場に入ってきたことを知り、彼女に駆け寄ったが
彼の目の前で彼女は兵士たちが放った複数の矢に刺さる。
ドラル王が泣き叫びながら、エーデル姫を抱いたとき 彼女は息も絶え絶えに口を開いた。
「みなさんにどうか祝福があらんことを……」エーデル姫は祈った。人々の平和と幸福を。
すると空からエーデルに向かって光が落ちていきドラル王と近くにいた兵士たちを吹き飛ばした。
その光は彼女を包み翼を生やし天空へ、世界に暗雲が覆い白い雷光を放ちながら大地に激しい雷撃が降り注いだ。
そしてそこに現れたのがドラゴンであった。
エーデルはドラゴンの姿へと変貌したのだ。
ドラゴンはまるで神々の王のような威厳のある声で人々に語りかけた。
「我はアドベントなり!この大地より戦いを消滅させるため降臨した!」
人々は驚きながらもその神々しい姿に思わずひれ伏すしかなかった。
そして、ドラゴンは大地から幾本もの光の槍を召喚し人々に向けて放ち 次々と倒されていく。
ドラル王は、人々が次々と倒れていく光景に唖然とした。
ドラル王「エーデルやめてくれ!!!」
ドラル王の叫び声が彼女に届く。
エーデル「ど…ら…る」
彼女はドラゴンの力を宿していたがそれは彼女自身の物ではなかった。
彼女はドラゴンの神アドベントの器だったのだ。
神アドベントは力をエーデルに託し、人間の行く末を見守っていたのだ。
しかし戦争を通じて、人間の愚かさを知り幻滅したのだ。アドベント「滅びよ!人間ども!」
アドベントは翼を羽ばたかせ、口から炎や雷光を放った。
人々はこの光景に恐れおののいた。そしてエーデルも自分の姿を見て、人ではなくなったことを悔やんでいた。
エーデル「お願いですアドベント様、怒りをお沈めください。」
エーデルは精神世界で神アドベントに怒りを鎮めるように語り掛ける。
アドベント「人間の愚かさを二度と繰り返さぬため私は降臨したのだ。エーデルよ人間を信じてはならぬ。」
ドラル王「エーデル!!!!」
ドラル王はアドベントの懐に飛び込んだそしてエーデルのいる精神世界に入り込む。
エーデル「ドラル!!!」ドラル王とエーデル姫はお互いに抱き合った。
アドベント「己人間!」アドベントは精神世界から力を集結させて集まった光の粒子のようなものをドラル王に放とうとするがエーデルは庇おうした。
アドベント「エーデル!お前は人々の戦渦に巻き込まれ側杖を食らったのではないか…なぜそこまでして人を庇うのだ?」
エーデル「違うのです…アドベント様、人々は愚かではありません!優しき心持っております。」
エーデル「人々は食料に苦しんでおられます。この世の大地は食物が育ちづらく皆、飢饉に苦しんでいるのです。」
エーデル「戦う兵士たちの顔を見ました。みんな涙を流しながら戦っていました。みんな争いたくないのです。」
ドラル王「思想の違いやすれ違いはありますがいつか人々は分かり合えるときがきっときます人々が戦争を終わらせることができたならば、
人々はまた食物を育てられるでしょう。私たち人間を信じてください!」
アドベント「エーデル……お前は優しき人間よ……お前がそこまで言うなら私は人間たちを試してやろう」
神アドベントは大地に温かい光を放ち、大地に草や木が育ち果物や木の実がなる。
人々は戦争を直ちにやめた。
食料に困らなくなり、アドベントに感謝した。
神アドベントの力によって大地に栄養が活性化し、食物が育ちやすい環境となった。
こうしてこの大地をアドベントと呼ぶことになった。
精神世界にてアドベントはエーデルとドラル王にこう語る。
アドベント「私の力で人々に食料と幸福を与えた。だが…私の力は神に等しき力ではあるものの完璧ではない」
アドベント「私がこの地に与えた力にいずれ副作用が起き、魔物という人々を襲うものが出現するだろう。」
アドベンド「エーデルよこの7つの秘宝を与えよう…」
アドベント「この秘宝は私の力が分離し7つに分けられたものだ」
アドベント「人々を厄災から守る力となるだろう。正しきものが正しく使うもので決して間違ったことに使ってはならぬ。」
アドベント「もしこの秘宝が暴走すれば秘宝はドラゴンの姿となり人々を襲ってしまうだろう。」
アドベント「私は二度とこの地に現れることはないだろう。すべてこの7つの秘宝とこの世界の人々に委ねた。」
エーデルはアドベントから7つの秘宝を授かる。
しかし、アドベントはこの地を去る前にエーデルにある忠告をした。
アドベント「エーデルよ、お前はドラゴンの姿に変貌する力は消えておる。だがそなたの力は強大であることには代わりはない……
もし悪意ある者がお前を利用しようものなら人間たちが想像するよりも恐ろしいことになるだろう」
そしてアドベントは去っていき、エーデルとドラル王は人間の住む大地へ還された。
エーデルとドラル王とそして世界の人々はアドベントの約束を守った。
竜聖の都エディンに住む姫エーデルとその守護者たちは7つのドラゴンの秘宝を守護した。
そしてエーデル姫とドラル王の間に子供が生まれた。
エーデル姫とその守護者そしてドラル王に仕える騎士と魔導士たちと住人たちの協力によって作られた結界によって
都に住む人々は魔物から守られ平和に暮らしていた。
そして数年後…
竜聖の都エディンを狙う魔の手が動き出したのだ。
デビリアン。悪しき魔物の力を持った者たちだ。
彼らは竜聖の都エディンから放つ力に引き寄せられそれと同時に多くの魔物がその都に集まってきたのだ。
神アドベントが言う、厄災は始まろうとしていたのだ。
デビリアンの襲撃に対し、エーデル姫とドラル王と都の全兵士たちで対峙する。
結界の力は、デビリアンの邪悪な力に全く効かず侵入を許してしまった。
兵士たちは力を使い果たし、疲弊していた。
そしてデビリアンたちは魔物を大量に呼び出してエーデルたちを取り囲む。
ドラル王「く!息子だけでも逃がす!!息子を頼んだ!!」
ドラル王とエーデル姫の息子「父上!母上!」
兵士たちはドラム王の息子をエディンから逃がし隣国へ避難させた。
エーデル「この秘宝はお前たちには渡さない!」
エーデルは魔法で7つのドラゴンの秘宝を世界各地に散りばめた。
ドラル王とエーデルは未来を息子とこの世界に生きる人々に託した。
デビリアンが暗黒の雷を放ったとき、邪悪な光が都全体を覆った。
ドラル王とエーデル姫の行方は……。
兵士たちはデビリアンたちによって全滅してしまっていた。
託された者たちは、7つのドラゴンの秘宝をすべて集め、デビリアンに支配された竜聖の都エディンを取り戻すことができるのか
これが「ドラゴンアドベンチャー」の物語である。


順子ちゃん「燃えてきたわね…絶対に7つの秘宝を見つけて!町を取り戻すわよ!」
勇と真木「おおおおお!」良樹「お前が仕切るなよ…」
良樹のゲームデータをホストとして、勇と真木はネット接続のゲストプレイで順子ちゃんはコントローラ接続のゲストプレイ、
四人の「ドラゴンアドベンチャー」が始まる。
あの…宿題は……。

続く

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