ジュンコチャン

第16話 来たる夏休み

順子ちゃんたちの学校生活も7月後半となりいよいよ夏休みがやってくる。
友ちゃん、薫、桂里奈の3人は公園で男から暴力を受け怪我をする暴行事件が起きてしまったが
その男は警察に逮捕され事件は解決した。
現在入院中の三人であるが回復へと向かっており友ちゃんと薫は早くても8月の始めには退院できるそうだ。
しかし桂里奈は、二人より怪我がひどく右腕、下顎骨、尾てい骨を骨折している。
完治には2、3ヶ月かかるらしく彼女は小学生最後の夏休みは病院で過ごすことになってしまった。
桂里奈自身、友ちゃんと薫を守ることができ、うさぎのマリーとロージも見つかり無事だったため後悔はしていないそうだ。
まだ友ちゃんと薫は病室にいるが完治すれば退院なのでそのあとは病室で一人になって寂しくなってしまうだろう。
もちろん病気や怪我で他の人が入院したり、病室を移動されたりで同じ病室で他の人と過ごすことになると思われるので
退院するまでの間ずっと病室で一人になることはないかもしれない。
また順子ちゃんらやクラスメイト、そして家族もお見舞いに来てくれるので心配はない。
顎が骨折していてうまく喋れないため病室にいる友ちゃんと薫の会話になかなか入れないが
二人が気遣い合わせてくれている。
桂里奈は喋る代わりに紙に文字を書き二人に伝えるが、利き腕が骨折しているため反対の手では書きづらく
字の大小やバランスが悪く、何を書いているかわからない時もある。
はっきり言って読みづらく汚い字である。
それでも二人は、桂里奈が反対の手で頑張って書いた字をちゃんと読んで理解してくれる。
気性が荒かった薫が今では、可弱い友ちゃんに優しく接しているのだ。
本当に薫なのかと疑ってしまうくらい彼が温和である。
二人が仲良く笑顔で会話している姿を見て、気持ちが和む。
そしてお見舞いに来てくれた担任の牛久先生やクラスメイトは幸助がいい子になっていると聞いた。
最初にその話を伝えたのが牛久先生でそれを聞いた薫だが
薫「えっあいつが?何か企んでるんじゃないっすか?」っと怪しく思ったが
牛久先生「何を考えているかわからないが内心嬉しいと持っているよ。」
牛久先生「最近宿題は必ずだしていて、行事にも積極的なんだ」
牛久先生「下の子にも優しくしてくれている。多分お前を見習ってのことだろう」
先生がそう言っているので幸助が改心しているのは本当なのだろう。
このように度々、牛久先生やクラスメイトたちがお見舞いに来ては、学校の出来事について話してくれるのだ。
友ちゃん「そういえばまだ幸助君お見舞いに来てないね」
薫「うん。そうだな。恥ずかしくて来れないんだろうな。ああいう柄じゃないんだろうな」
まだ幸助はお見舞いに来ていないので、もし彼がお見舞いに来たら話を聞いてみたいところだ。
看護師「杉原さん、萱場さん、お友達が来られましたよ。」幸助「よっ!元気か?」
噂をすれば幸助がお見舞いにやってきたのだ。
順子ちゃん「お見舞いに来たわよ~」順子ちゃんも来た。友ちゃん「順子ちゃんも来てくれたんだ」
順子ちゃん「幸助君もいるわよ!今日のスペシャルゲスト~」幸助「はは茶化すなって!」
なんだか順子ちゃんと幸助も仲がよさそうである。
薫「やっときたか幸助。お前が来るの待ってたぞ。恥ずかしくて来れないと思ってた。」
幸助「ははそんなとこだな。何言えばいいかわからなくてな…」
幸助と薫は昔からの親友であるが、親友であるが故の気難しさみたいなものもあるようだ。
本人はお見舞いに行くかいろいろ迷っていたが順子ちゃんに背中を押されお見舞いに来たというのだ。
薫「先生とかに聞いたが、評判いいそうじゃん。どうしたんだよ?らしくないんじゃないか?」
薫は幸助が改心した動機を聞いてみた。
幸助「まあお前もな。お前があの子を体張って守った話がすげえ評判いいらしくて、なんだが俺はおいて行かれたような気がしたんだ。」
幸助「お前みたいにすげえカッコイイことしたいなと思ったけど俺にはあんな勇気はないからお前には敵わないと思ってな」
幸助「だから俺も少しは変わらないといけないと思ったんだ。」
幸助は素直にそう語った。彼らしい動機であったが誠実さを感じた。
薫「そういうことだったのか…」
桂里奈は幸助に対して「えらい」と文字が書いてある紙を見せた。
幸助「ははちゃんと俺いい子してるぞ~もっと褒めてくれよな!」
書いてある文字をそのまま受け止め喜ぶ幸助であるが
薫「ふふ、いやいや~からかっていると思うぞ~」
桂里奈(そんなつもりじゃないわよ!もう)心の中で彼女は嬉しく幸助を正当に評価しているのだ。
友ちゃん「桂里奈さんも嬉しいと思ってるよ。ねえ順子ちゃん!」と気持ちを代弁してくれる友ちゃん。
順子ちゃん「そうよ!乙女心がわかってないわね~」
桂里奈(友子さん!宮沢さん!ナイスフォロー!)彼女は親指を立てた。
薫「ははそうだな!それは失礼したな」
幸助「桂里奈は薫以上に評判いいみたいだぞ」薫「当たり前だろ!桂里奈は優等生なんだからよ!」
桂里奈(ふふ照れるじゃないの‥)心の中で嬉しく思う彼女。もちろん彼女も評価されるべきである。
幸助たちが一年生の女子とこんなに話が弾んでいるのを見て不思議に思うが
同時に顎が骨折していて喋れない不便さを感じみんなが羨ましく思ってしまった。
看護師「浅見さんお友達が来られましたよ。」
桂里奈の友達が数人お見舞いにやってきた。
桂里奈の友達「あ!幸助だ。」「やっとお見舞いに来たのね」
幸助「まあ友達の心配はしないといけないしな‥」
順子ちゃん「なかなか行く決断ができなかったみたいなので。私が連れてきました。」
幸助「うわそれは言うなって!」
包み隠さず何でも言ってしまう順子ちゃん。
幸助にもプライドというものがあり友達の前で本当のことは話しても他の人には知られたくないこともある。
友達のお見舞い行く決断ができないところを下級生である順子ちゃんに鼓舞されてきたなんて
6年生である最高学年の彼にとって面目が立たないのだ。
病室はお見舞いに来てくれた人が何人も来て賑やかになっていった。
しばらくして順子ちゃんと幸助は友ちゃんたちのいる病院を後にした。
順子ちゃん「何か言い残したことはないの?」
幸助「う~んあった気がするな~なんかいろいろ言いたいことがあるのにな」
言いたいことがあるのに本人を前にすると言えないこともあるが幸助もいろいろ薫と話していたのである。
話題がたくさんありすぎて言い足りないということだ。
幸助「あ!サッカーに誘うの忘れてたぜ!」順子ちゃん「それ大事な話じゃん!」
幸助「まあまたお見舞いするときに言えばいいか」
急ぎでもないしサッカーの誘いはいつでもできる。
三人の様子を見れてよかったのである。心配する必要はないと幸助は安心した。


翌日の学校では夏休みが近づいてるということで生徒たちはその話で盛り上がっていた。
1年生は初の長期休暇のため楽しみにしている。
家族と旅行したり友達と出かけて遊んだり、至れり尽くせりの日々を過ごすことができるのだ。
特にはしゃいでいるのは順子ちゃんと良樹である。
夏休み何をするかいろいろ考えワクワクしている。
順子ちゃんはお盆の時期に故郷へ遊びに行くそうで親戚の人や故郷の人にまた会うのを楽しみにしている。
良樹は欲しいゲームが夏休みの期間に発売されるらしく待ちきれないのだ。
夏休みの楽しみは人それぞれである。
しかし夏休みだからといって浮かれてはいけない。
体調管理には十分注意する必要がある。
夏の時期は、気温が高いため熱中症にならないように気をつけるべきだ。
そして生徒たちには夏休みにやらなければならないものがあるのだ。
それを順子ちゃんのクラスの1年3組担任の清水先生の話から知ることになる。
清水先生「みなさんいよいよ夏休みですね。」
清水先生「家族や友達と旅行や遊びに出かけて素晴らしい夏休みの思い出を作ってください」
清水先生「ですが、私からのお願いですか体調管理や怪我には十分気を付けてくださいね。」
清水先生「そしてみなさんには夏休みにやるべきことがあります!」
先生はある用紙をクラス全員に配った。
その用紙の内容を見たところそこには夏休みの宿題について書かれていた。
生徒たちが夏休みにやらなければならないものは夏休みの宿題なのだ。
良樹「えーーー!宿題あるの~」
来たる夏休みに目を輝かせていた良樹だが宿題があると聞いて目がくの字になってしまった。
夏休みの期間は学校にもよるが約1か月半であり、それに相当する量の宿題が出される。
生徒たちは夏休みこの大量の宿題をこなしながら過ごすことになるというのだ。
ひらがなと漢字の練習プリントと計算問題のプリント合わせて50枚
絵日記と工作、そして読書感想文原稿用最低1枚以上である。
1年生にとってこの量は多いほうである。
先生が生徒に夏休みに膨大な量の宿題を出す理由は生徒たちに今まで授業で習ったことの総復習をさせる上
家でも勉強する機会と時間を与え勉強に対するモチベーションを保たせ学習習慣を身に着けさせることがねらいなのだ。
だが宿題をすることに自体に何の意味があるのかという哲学的な疑問や投げかけがあるが
その問に答えるとするならば宿題を通じて決められた期日や期限を守って提出することに意義があるのではないかと考える。
義務教育を終え、大学の進学さらには社会人になっていくにあたり
仕事では必要な書類や資料作成の期日や商品の納期は守っていかなければならない。
もしそれを守らなければ社会人としてそして連帯としてその所属している企業にその信用を大きく失いかねない。
だから宿題を提出し決められた期日を守るという習慣を持たせることが後に社会人としてのルールを守り信用を担保していくことに繋がるのだ。
順子ちゃんたちを始め生徒たちは、宿題がない日はもちろんがあるが、出されたらその日の翌日までには必ず提出している。
夏休みの期間中に大量の宿題をいかに消化していくか、スケジュール管理や計画立てが重要になってくるだろう。


夏休みの宿題の終わらせ方は人それぞれだが4つのタイプに分かれるだろう。
ここでは4つのタイプを紹介しよう。
早めに終わらせる速攻タイプ、計画的にコツコツやって終わらせる努力タイプ、終盤になって一気に終わらせる極限タイプ、何もしないで放置する放置タイプの4つである。
速攻タイプは夏休みの初めからすぐに宿題に取り組み早期に終わらせるタイプだが、進め方はそれぞれ違い大まかに簡単な方から終わらせるか難しいほうから終わらせるかの2種類が存在する。
宿題を早めに終わらせて夏休みを満喫することを第一に考え取り組むが速攻タイプの大半の人は極限タイプに変わってしまう。
ある程度進み、他の人の進行具合に応じて気の緩みが生じ一旦宿題を放置してしまうのだ。
中盤になって気付きペースを上げて終わらせる人もいれば、後半になって本気を出す人もいるだろう。
後者が極限タイプになってしまうのだ。
8月が始まる前に終わらせる人はごく稀であり新学期が始まる1週間前に宿題を終わらせることができれば十分速攻タイプであるといえるだろう。
努力タイプはスケジュールを決めてどの範囲をいつまでに終わらせるかの予定を立て自分を追い込んでやるのがこのタイプの人だ。
家庭の事情などで予定が狂ったり誤差がでたりすることがあるが、当然リカバーでき前倒ししたりすぐに予定を変更したりするなど抜け目がなく
速攻タイプよりも早めに宿題を終わらせるポテンシャルを秘める理想的なタイプである。
どの範囲をいつまでに終わらせるのか細かく予定を立てずその日その日の気分次第で取り組む人は、努力タイプ以外の人となる。
極限タイプは8月31日のギリギリで終わらせるのがこのタイプの人であるが、夏休みの前半にある程度を進んでいたりしていてその人が
速攻タイプから変わっていったものである。
生徒たち全員努力タイプを目指してほしいが速攻タイプか極限タイプの二極化となり
学年を追うごとに宿題の量が増えていき極限タイプに8割以上がなってしまうのだろう。
しかしいずれのタイプも宿題を必ず最後まで終わらせるので問題はないが、問題なのは放置タイプだ。
放置タイプは遊ぶことに重点に置き、極力宿題のことは考えず思い出しても必死に忘れようとするのだ。
終盤になってやっと気付き宿題に取り組むが間に合わないのがオチだ。
奇跡的に宿題を終わらせることができ極限タイプになり得る可能性は一応ある。
できれば放置タイプになってほしくはないだろう。
順子ちゃん「これはさっさと終わらせるしかないわね!」
早めに終わらせようとするその彼女の姿勢は速攻タイプである。
良樹「これ全部やるの~終わるか心配だな」
宿題の多さにたじろぐ彼だが、その不安も大事で真剣に取り組んでいけば必ず終わるだろう。
期待を込め彼も速攻タイプと予想しよう。
夏休みは明後日となるが清水先生は前もって夏休みの宿題であるプリントを生徒たちに配った。
人数分なのでかなりの量だ。
夏休みが始まる前から宿題に取り組めるようにするための粋な計らいである。
これで夏休みのスケジュールも立てやすくなるだろう。
また清水先生は友ちゃんにお見舞いに行くついでに宿題を届けるそうだ。


放課後清水先生は友ちゃんが入院している病院へお見舞いに行った。
牛久先生も同じく病院へ行き薫に夏休みの宿題を届けるようだ。
看護師「萱場さん、杉原さん、浅見さん、先生がお見えになりました。」
友ちゃん「先生こんにちは」薫「こっこんちっわす…」
清水先生と牛久先生「こんにちは」
清水先生「8月には退院できると聞いてよかったわね。杉原さんも」
牛久先生「桂里奈はまだ回復には時間はかかるみたいだな…」清水先生「無念ですね…」
桂里奈は「大丈夫」と書かれた紙を先生に見せた。
彼女の容態だがまだ顎は骨折しているので痛くて喋れずこうして文字で書いて伝えるが
利き腕が骨折しているので反対の手では書きづらいため不便を強いられている。
コルセットは外れたが尾てい骨が骨折しているままなのでリハビリはまだできず安静している。
外の景色が見たいときは車いすで移動になるが薫が車いすを動かしてくれるらしい。
清水先生「友子ちゃん、はいこれ夏休みの宿題」友ちゃん「宿題?」薫「げ!宿題!」
清水先生は友ちゃんに夏休みの宿題を渡した。
牛久先生「薫、これはちゃんとしっかりやらないとな」薫「うげ!?」
当然6年生の薫にも夏休みの宿題がある。
牛久先生は5冊のA4の問題集(30ページ)を渡した。
国語、算数、理科、社会、英語の5教科の宿題があり1年生よりもはるかに多い。
牛久先生「過去にお前らの担任になった先生が言ってたぞ。夏休みの宿題終わらせていなかったようだな」薫「げげ!」
幸助と薫は今まで夏休みの宿題を期間中終わらせたことがないのだ。
牛久先生「幸助は最近宿題を必ず提出している。まあ当たり前だけどあいつも成長してきている」
牛久先生「だからお前が必ず宿題を終わらせることを信じているぞ。」薫「わっわかったよ‥宿題終わらせてみせるよ」
薫は必ず夏休みの宿題を終わらせると牛久先生に約束した。
幸助と薫そして桂里奈は来年中学生になる。担任として、成長した幸助と薫を中学校に送り届けたいのだ。
牛久先生「ずっと病室にいるからな退院するまでの間にいい暇つぶしにもなるだろう」
牛久先生「桂里奈はその怪我で宿題するのは難しそうだから特別に免除する。」薫「いっいいな~」
牛久先生「何言ってんだ!お前より辛いんだぞ。それに桂里奈はお前と違って成績優秀だからな。復習だけはするようにな」
桂里奈は学内でも成績はトップである。彼女は特別夏休みの宿題は免除になり自主で復習するような形にした。
しばらく彼女は療養に専念してほしい。
友ちゃんは筆記用具を取り出し宿題に取り組んだ。
清水先生「早速始めるなんて偉いわね」牛久先生「薫も初めとけ!」薫「はいはい!わかりましたよ」
薫も宿題を取り組み始めた。
牛久先生「桂里奈、薫が宿題をやっているのか見張っていてくれよ。それが桂里奈の宿題だな」
桂里奈(任せてください!)桂里奈は軽く頷き承知の合図をした。
そして先生らは病室を出て行った。


家に帰宅した良樹だが机にランドセルを置き夏休みの宿題を取り出した。
やるかやらないか迷っていた。
だが‥
良樹「始まってからでいいか」
宿題は夏休みが始まってからやればいいと思い放置してゲームをやるのだった。
一方順子ちゃんはというと机に向かい夏休みの宿題に取り組んでいたのだ。
えらい‥
だが‥
順子ちゃん「まだまだ時間あるしこれくらいでいいか」
ちょっと進めただけで中止してしまったのだった。
果たして彼らは夏休みの宿題を最終日までに終わらせることができるのだろうか‥。

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