ジュンコチャン

第1話 ジュンコチャン参上

「助けてくれ!!」と老人の叫び声が!!
老人の正面には大きな蛇が蜷局(とぐろ)を巻いてる。
老人は、腰を抜かして動けなくなってしまった。
老人が遭遇した蛇は無毒のアオダイショウではあるが、体長200cmほどあって大きい。
年老いて薄くなってしまった皮膚に上から蛇の鋭い牙がかみつけば最悪死に至ることも。
華やかな桜並木の下で、蛇は休んでいたのだが、老人が近づき驚いたため、怒ってしまった。
美しく咲き誇る桜に気を取られ、蛇がいることに老人は気付かなかった。
桜色のオーラを漂わせ大股で散策していた老人の顔は一気に真っ青に。
アオダイショウは興奮状態だ。
蛇が蜷局(とぐろ)を巻いているのは、くつろぐときか獲物を狙うために態勢をとるのかのどっちかだが明らかに後者のほうだろう。
仰天していた老人は我に返り落ち着いて対処する。
蛇がおとなしくなってその場を去るまでじっとした。
そうすれば襲ってこないと。
鋭い目つきで睨みつけてくる蛇に怯えながら‥


ふとその時小さな女の子が大の字になりアオダイショウの前に立った。
「カエルさん助けに来たよ!!」と
  「カエル?」老人はなぜ少女がカエルさんと言ったのかわからない。
混乱してまた状況がつかめなくなった。
ただわかることはあの子が蛇にかまれてしまうことだ。
老人の心拍数が上がった。
「何をしとるのじゃ!!」老人は女の子を庇おうと動き出した瞬間、蛇が女の子目掛け噛みついてきた。
「うああああ」老人は大きな口を開き叫ぶ。背中全身に冷や汗し、鳥肌が立つ。
すると女の子は蛇の攻撃を見切っていたのかジャンプし、片足で蛇の頭に乗りかかる。
全体重をかけつま先で潰し、そのまま踵で、蛇の頭を潰した。
グシャ!っと骨が砕くような音がした。
蛇はのびてしまった。
生死をかけた熾烈な戦いに勝利したのは女の子だ。
蛇の頭に片足で立って命の文字のポーズをとるその姿はまさに命を体現するかのようだ。 一歩間違えれば死に至る危険な行為であった。
老人の寿命が縮みそうだった。
蛇には可哀想ではあるが女の子が大事に至らず何よりである。


女の子はランドセルを背負っていた。
どうやら学校に登校中の様だ。
しかし老人は女の子を見て「お前さん見ない顔じゃのぅ~」と言う。
老人は、町内会の会長で街についていろいろ詳しいのだが、この女の子とは初めてである。
「私、順子ちゃん!!宮沢順子っていうの!!」と女の子は自己紹介した。
老人も「順子ちゃんか、わしは、矢崎。この水戸市の町内会の会長をしておる。よろしくな。」
順子ちゃんは、父の転勤で茨城県の水戸市に引っ越すこととなり、それに伴いこの春、水戸市の小学校に入学することになったのだ。
今日が登校初日である。
「しかしカエルさんとはいったいなんじゃ?」
矢崎会長は、順子ちゃんにカエルのことについて聞いてみると
順子ちゃん「蛇の近くにカエルがいてカエルが助けてくれって叫んでいたから」
矢崎会長「きっとその声の持ち主はわしじゃ」
順子ちゃん「えそうなの?近くにカエルさんもいたんだけど‥」
カエルも近くにいたらしい。
順子ちゃんは、どこか不思議な女の子である。


「蛇にかまれたら怪我だけでは済まない!あまり無茶なことをしてはあかんぞ!」
矢崎会長は順子ちゃんに注意するが
「大丈夫よ!!この前これよりでっかいマムシを捕まえたことあるの、それでおばちゃんがお酒をつくるんだよ!!」
順子ちゃんは自慢げにはなす。
「ふふ面白い子じゃ。そうかなら大丈夫か」矢崎会長は順子ちゃんが前に住んでいた町の暮らしぶりを垣間見た。
いろんな子に出会ったか、風変わりで面白い子に出会えたのは初めてで再び矢崎会長の気分は高揚した。
「わしを助けたお礼じゃ。」矢崎会長は順子ちゃんに飴を手渡した。
矢崎会長「あの恐ろしい蛇に立ち向かったその勇士に感謝する。順子ちゃんアリガト!!」
順子ちゃん「ありがとうでも学校でお菓子は持っていけないの。ごめんなさい」
順子ちゃんは飴をもらってうれしいが、校則のことを気にして遠慮した。
しっかりしている子で矢崎会長は安心した。
「飴ぐらいならばれないと思うが、順子ちゃんはいい子じゃから後ろめたくなってしまうじゃろう。」
「じゃから安心せい。もし飴がばれたら矢崎会長にもらった。そう言えば許してくれる。許してくれなかったらわしが謝りに行くわい。」
矢崎会長は、町内会のみならず順子ちゃんが行く学校でもPTAをしているらしく信望の厚い人だ。
順子ちゃん「うん!ありがとう!飴持っていくね!それじゃ私いくね。またねおじいちゃん!!」
矢崎会長「いっぱい友達作るのじゃぞ!!」
順子ちゃんを笑顔で見送るが‥
矢崎会長「おいそっちは反対側じゃ!!学校はあっちじゃ」
「え!反対?学校はあっちね。ありがとうおじいちゃん」
道を間違えそうになった順子ちゃんに矢崎会長は少し心配になった。
そのあと順子ちゃんは道を間違えつつもなんとかギリギリ間に合ったとさ。

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