第66話 リベンジャー佐武郎
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運動会の開会式が始まり、桂里奈の選手宣誓により運動会の幕が開く。
朝礼台に立つ井村校長を前に、桂里奈は手を挙げて大きな声を出す。
桂里奈「宣誓!私たちは、今日という日をずっと楽しみに練習を重ねてきました。」
彼女の声がグラウンド上に響き渡り、怪我で療養していた彼女の面影は全くない。
桂里奈「どんな時も互いに声をかけ合い、支え合ってきた仲間と共に、」
桂里奈「最後まで諦めず、全力を尽くして競技することを誓います!」
みんな思いを代弁するかの如く彼女の言葉は、生徒全員そして観客たちの胸に響かせる。
桂里奈「生徒代表 浅見桂里奈!」
力強く宣言し、一礼して3組チームの列へと戻っていった。
幸助心の声(すっすげえ…)
桂里奈の気迫は他を圧倒し、同じく3組チームでリーダーでもある幸助も彼女の気合いと熱意にひるんでしまう。
リーダーを譲りたくなりそうな気持ちにもなるが、チームの顔はまさしく桂里奈が相応しい。
自陣へと戻るその姿は戦場を生き抜き帰るべき場所へと向かい約束を果たそうとする戦乙女のようだ。
3組チームの象徴と言えるピンク色のはちまきが風でなびき彼女が過ぎ去る背後に桜の花びらが舞っているように見える。
そして戦乙女とその仲間たちは新たな戦場へ赴こうとする。
1組チームのはちまきの青に龍を司るようなリーダー大吾に
2組チームのはちまきの黄色に虎を司るようなリーダー豪、
龍虎相搏つ戦場に第3勢力が、それすなわち3組チームが進軍する。
桃色の戦乙女が龍と虎を制圧できるのか、桂里奈率いる3組チームに期待が高まる。
桂里奈が列に戻った後、観客たちは大きな拍手をした。
桂里奈の父「今日の桂里奈はかっこいいな…」
桂里奈の母「ええ…私たちの娘だもの」
それを見た桂里奈の家族は感動し涙を流し感慨深く見守っている。
そして大学生である桂里奈の兄もこの運動会の観客として参加していて腕を組んで妹の活躍を見届ける。
兄はスマホを握りしめる一方で父は一眼レフカメラを携え
それぞれの手段で桂里奈の名場面を写真でいつでも残そうと努めている。
勝ち負けにこだわらず、桂里奈が汗をかいて必死に頑張る姿が見たい。
浅見家も桂里奈と同じくこの運動会に対して熱い思いがある。
あの事件で桂里奈は怪我をしてしまい運動会に出場できるのか心配だったのだ。
「どんな時も互いに声をかけ合い、支え合ってきた仲間と共に」という言葉は
痛みに耐えながら奮闘する桂里奈にお見舞いに来て友達や先生が彼女を励ましてくれたあの情景が鮮明に思い浮かぶ。
家族も何度も病院に寄って可能な限り桂里奈の傍にいて支えていたが
友達や先生の存在が桂里奈に勇気を与えてくれた。
「最後まで諦めず、全力を尽くして競技することを誓います!」という言葉には
運動会までには怪我を完治し途中諦めそうになっても
自分を鼓舞し仲間たちの支え原動力となり、諦めずリハビリする桂里奈の姿と決意そのものを表している。
この運動会はまるで桂里奈のためにあるようなものだが、彼女だけではなくみんなのためのものである。
つまり主役は桂里奈だけではなくここにいる生徒全員なのだ。
井村校長の挨拶からは桂里奈のことについて言及しそれを聞いて観客たちは胸を打たれるが、
後からは世間話も交えつつこの運動会のこと、そして生徒たちが本番に向けて競技の練習を取り組んできたことを述べた。
最後は運動会が最高な思い出となり観客側に希望を抱かせるを発言してこの開会式を締めくくる。
井村校長が一礼したと同時に観客たちは拍手した。
観客たちも桂里奈と井村校長の言葉を信じ、
そして自分たちもこの運動会が最高に盛り上がるように応援することを誓う。
再びグラウンドにファンファーレが鳴り響き、生徒全員は行進を始め入場門へと戻って行く。
入場門に戻った後、少しの空き時間に幸助と薫を始めクラスメイトたちは桂里奈に話しかける。
尊「今のはしびれたぜ桂里奈!」
景子「カッコよかったわよ!」
桂里奈「ありがとうみんな!」
みんな桂里奈の選手宣誓を称賛しているようだ。
薫は真っすぐ桂里奈に向き合うも幸助はちょっとだけ違う方向を向いて桂里奈に顔を合わせようとしない。
薫は横目に幸助を見て苦笑いする。
薫「なんだかこれじゃ桂里奈の方がリーダー相応しいそうだな」
幸助「それを言っちゃあ、おしめえよ!」
触れてはいけない痛いところを突かれてしまう幸助。
桂里奈の選手宣誓を聞いた後だとぐうの音もでない。
入場門に戻る際の行進で幸助は桂里奈にリーダーを譲ろうかという節もあったがそれは内緒だ。
ご褒美目当てで頑張る幸助だが、見方は違うが進むべき方向は皆一緒である。
戦乙女である桂里奈の顔を立てて、幸助と薫は彼女をサポートし
さらには悪名として扱われた金閣と銀閣が、運動会の3組チームの戦力の要へと昇華されるように頑張らなければいけない。
盛り上がってきたところでこれから1つ目の種目、個人競技の50m徒競争が始まる。
内容は50m徒競争であるが、キャッチフレーズも用意されていて
「ゴールまでの50mを全力に!駆けろ生徒たち!」である。
最初走るのは1年生であり、全体を通して個人競技は学年順で行われることになる。
1年生たちはチームの思いを背負いグラウンドの中央に並び50m徒競走のレーンの方に視線を向ける。
1年生だからといって観客たちは甘く見てはいけない。
彼らの中には足が速い子が沢山いて、きっと退屈なものにはならないだろう。
寧ろ1年生の子を持つ観客ないし保護者たちは自分の子の活躍を心待ちにしているので盛り上がらないわけがない。
50m徒競争は始まり、走者は次々と走っていく。
保護者ないし彼らの家族は名前を呼んで応援する。
そして同じのチームの生徒と友達、先生そしてアナウンスがエールを送る。
矢崎会長「おおー!速い子は何人もいて面白そうじゃのう~」
町内会の矢崎会長も水戸東小学校の運動会を見に来ているみたいだ。
子ども好きの矢崎会長は桂里奈の選手宣誓を聞いて感動しては涙が一滴こぼしていたのは内緒である。
矢崎会長は桂里奈と薫と友ちゃんが30歳代の男性に殴られ悲惨な暴行事件を目の当たりにし
順子ちゃんと幸助の三人で助けたのだ。
桂里奈のお見舞いに矢崎会長は行かなかった、あの記憶はまだずっと覚えている。
だから桂里奈の選手宣誓を聞いて矢崎会長は他の観客たちよりも何十倍も胸を打たれ感動したのである。
そんな矢崎会長は寺宇治教頭と共に生徒たちが競技に取り組む姿を見ているが
どこか品定めをするかのような目付きである。
矢崎会長と寺宇治教頭の二人はかつての暴走族だ。
寺宇治教頭「注目はやっぱりあの子ですか?」
順子ちゃんは矢崎会長のお気に入りであり寺宇治教頭も認識済みだ。
矢崎会長「あの子が仏恥義理で一位になりそうじゃな」
仏恥義理とはヤンキー用語のことでぶっちぎりという意味で
競争や競技などで相手に圧倒的な大差をつけることや、大きく引き離して勝つことだ。
矢崎会長が注目している通り順子ちゃんの並外れた身体能力に観客たちは度肝を抜くはずだ。
1年生の部の50m徒競争で順子ちゃんがアンカーであり、
まさかの最後で彼女の恐ろしさを観客たちは知ることになるのかもしれない。
しかしそんな順子ちゃんに対抗するものがいる。
そう、1組チームには佐武郎がいる。
このまま順子ちゃんの圧倒的な実力がギャラリーに知らしめられ、佐武郎がそのかませ犬になるわけにはいかない。
佐武郎が順子ちゃんを退け真の強者となって観客たちを震撼させることを期待する。
佐武郎の家族も応援に来ていて、父は佐武郎の走りを見届ける。
そしてどんな結果になっても受け入れる覚悟を持っている。
運動会の練習以外でも佐武郎は父と共に走る練習をしていた。
佐武郎の父は陸上競技の経験者であり、ただひたすら走るだけでなく速くなるコツやテクニックなど教わっている。
練習を重ねて得た佐武郎の走りがこの運動会の本番の日で披露されることになる。
注目を浴びるのは順子ちゃんではなく佐武郎になるのだろうか、この50m徒競争で白黒はっきりされる。
スターターピストルが鳴り響く中、列の後ろに並ぶ順子ちゃんに佐武郎は声を掛け勝利を宣言する。
佐武郎「順子!この勝負!俺が絶対勝つ!」
順子ちゃん「望むところよ!」
売られた喧嘩を買うように、順子ちゃんは佐武郎に向き合う。
二人とも気合十分だ。
矢崎会長「おおー!順子ちゃんにタイマンする男の子がいるぞ!」
寺宇治教頭「1年1組の風間君ですね!」
タイマンは1対1でサシでやって殴り合うような意味で使われるこれもヤンキー用語の1つでもある。
しかし殴り合いではなく足の速さで正々堂々競うものなのでその言葉はちょっと好ましくないかもしれない。
だが相手に喧嘩を売り買いする行為はヤンキー用語だとかばんに白テープを貼ることで喧嘩を売るという意味になり
かばんに赤テープを貼るとことで喧嘩を買うという意味になる。
佐武郎がかばんに白テープを貼ったことに対し順子ちゃんはかばんに赤テープを貼ったことになるのだろうか。
紅白合戦みたいなところが思い浮かびそうだが、水戸東小学校は赤組と白組の組み分けで運動会ではなく
3チームに分かれた1組が青、2組が黄色、3組がピンクといった三すくみの運動会なのである。
順子ちゃんと佐武郎が目立っているせいで1年生の部で2組チームの賢季も忘れてはいけないのである。
しかもこの50m徒競争は男女一人ずつ走るため、
3組チームにおいては男子ペアである大気の存在も忘れてはいけないのである。
ちなみに50m徒競走の走者の組み合わせは男女一人ずつを基本としているが
クラスによって男女比が違うため、男子二人か女子二人で出走する組み合わせも一応ある。
1組チームの佐武郎と3組チームの我らが順子ちゃんの対決が注目されているため
大気も含め順子ちゃんと佐武郎以外の最終走者の生徒たちはもう蚊帳の外なのかもしれない。
順子ちゃんと佐武郎は両者にらみ合っているが、自分たちが出番が来るまで待機している間は
腰を低くして待っていなければいけないが、そのしゃがみ方がまさにヤンキー座りをしている。
ヤンキー座りもヤンキー用語の1つだが、左右のひざをつけ、かかとからつま先までを平行にそろえる姿勢で
汚い言葉になるがうんこ座りとも呼ばれている。
地面に土でズボンが汚れるのを避けるためにそのような座り方は仕方ない。
ヤンキー用語はここまでにして、もうすぐ順子ちゃんと佐武郎たちの出番がやってくる。
両者立ち上がり、レーンに全員位置についた。
佐武郎はちらっと順子ちゃんに目を向けるがすぐに50m先のゴールを見つめた。
順子ちゃんに勝てるのか、練習を沢山してきたが不安はまだ拭えない。
練習の成果を発揮できるのか、まさか途中で転ばないか佐武郎の身を案じてしまう父。
それぐらい父は佐武郎のために、仕事で疲れても息子に寄り添い一緒に練習に取り組んできたのだ。
佐武郎の父は固唾を飲んで息子の走りを見守る。
佐武郎の父「頑張れ佐武郎!」
佐武郎の心の声(父ちゃん…)
佐武郎の父が応援したことでつられて他の家族も自分たちの子どもに名前を呼んで応援する。
もちろん順子ちゃんの宮沢家も応援する。
広武「いけ順子!」
幸「頑張ってー!」
順子ちゃんは家族の方に握りこぶしに親指を立ててグットサインをした。
順子ちゃんの心の声(任せて!勝っちゃうからね!)
50m先のゴールを見つめる順子ちゃん、しかしもっと先にご褒美のGVDが幻影が彼女の瞳に映し出される。
家族が懸念している通り、順子ちゃんが「GVD」と叫んで走らないかが怖いところ。
あと家族は知らないが練習中に見せた腕を振り回しながら走る例のあれも清水先生と一緒に走る大気は懸念している。
いよいよ50m徒競争1年生の部のアンカー勝負が始まる。
「位置について!よーい!」パン!
スターターピストルが鳴り響き順子ちゃんたちは走り出した。
順子ちゃん「うおおおおおお!」
順子ちゃんは叫びながら走り出す。
その順子ちゃんの叫びに観客たちは驚く。
運動会で盛り上げるためにアニソンや流行りの曲を流しているが順子ちゃんの叫びでかき消されていくようだった。
叫びながら走る順子ちゃんに目を引くが、彼女が先頭を走っていると思いきや
佐武郎が先頭を走っていて順子ちゃんが彼を追いかけているような状況だった。
佐武郎の父「よし!いけ佐武郎!」
大気の心の声(え!佐武郎めっちゃ!!速い!)
順子ちゃんの心の声(なに!?)
佐武郎が気持ちよく先頭を走っているのを見て父は練習の手応えを感じたようにガッツボーズしながら応援する。
腕を上下に振り、顎を軽く引き前傾姿勢を保ちながら走る佐武郎の姿はまさに陸上選手だ。
1年生の男子とは思えない走りに先生たちも観客たちもそして矢崎会長も佐武郎に注目する。
そのスピードは運動が得意な高学年の男子生徒に匹敵する、いやそれ以上である。
佐武郎の速い走りによって1組チームの青いはちまきが風でなびくその様は青い閃光が迸っているみたいだ。
牛久先生「1年生とは思えない走りだ…」
板倉先生「あの子の独断場になるかと思ったがこれゃとんだ番狂わせだな」
体育会系である牛久先生も板倉先生も佐武郎の走りは一般の生徒よりも違うと認識し始める。
大野先生「いや~びっくりしました、風間君は私が担任ですがあそこまで速く走るなんて!」
そして佐武郎の担任である大野先生も佐武郎の走りを見て驚いているもののその表情はとても嬉しそうだ。
運動会で佐武郎は順子ちゃんをずっとライバル視していたことは大野先生も彼の話を通じて知っている。
この50m徒競走の最終走者を佐武郎が自らから志願した理由も順子ちゃんと競争したかったからである。
1年生対抗障害物リレーへのリベンジを果たせる絶好の瞬間を今、大野先生は目の当たりにしているのだ。
矢崎会長「順子ちゃんは相変わらずじゃがあの男の子すごいのう~風間君と言ったか」
矢崎会長「わしも足は速かった方じゃが、まだ1年生じゃろ?あの子」
寺宇治教頭「今日知りましたよ!うちの生徒にこの年で足が生徒がいることに!」
さっきまで順子ちゃんの叫びにみんな驚いていたがそれが嘘だったかのように佐武郎の走りにみんなは魅了される。
保志「うあ~お姉ちゃんが負けてる~」
広武「順子頑張れ!どうした!?お前の走りはそんなものか!!」
3組チームと清水先生、そして順子ちゃんの家族は彼女の劣勢状態に焦りを感じた。
清水先生「嘘でしょ!?1組の風間君が速い!負けないで宮沢さーーん!」
良樹「やべえ負けちまう!頑張れ順子ー!」
友ちゃん「順子ちゃーーん!」
仲間と先生、そして家族は順子ちゃんを応援する。
順子ちゃん「負けてたまるか―!」
順子ちゃんは禁じ手を使い腕をブンブン振り回す走り方をする。
地面を蹴って飛び上がり蒸気機関車の汽笛がなって発信するかの如く加速し佐武郎を追いかける。
その光景は草食動物を捕食するため追いかける肉食動物のようだ。
佐武郎は順子ちゃんから逃げ切ることができるのだろうか。
順子ちゃん「うおおおおおおおおおおおお!」
順子ちゃん「GVDーーーーー!!」
とうとう順子ちゃんは「GVD」と叫んでしまった。
ご褒美のためにも負けられない戦いなのである。
広武「あ~とうとう言っちまったよ…」
幸「順子ったら…」
順子ちゃんの父母は恥ずかしさのあまり、頭を抱え顔を赤くする。
これで佐武郎を追いつき追い越せればいいが、距離は一向に縮まらない。
良樹「やべえ!」
友ちゃん「順子ちゃん!」
ゴールテープはもうすぐ目の前、順子ちゃんは3組チームの勝利のため
そしてご褒美のGVDのために腕をさらに素早くぶん回しテンポをもう1、2段上げていく。
大気「いけ!順子!!」
順子ちゃんが腕をぶん回しているせいで隣のレーンの大気は思うように前に走れないが
自分は頑張っても今の佐武郎は追い越すはことはできないので
順子ちゃんの可能性を信じ、大気は彼女の背中を押すように応援する。
順子ちゃん「うおおおおおおおおおお!」
そしてゴールテープは切られ、パン!っとクラーカーのような大きな音が鳴り響く。
1着を取ったのは1年1組の風間佐武郎である。
佐武郎「よっしゃーーー!」
順子ちゃん「負けた~」
順子ちゃんは2着という結果で順位こそ悪くないが佐武郎に完全敗北した。
「うおおおおおおおおおおお!」
観客はたちは拍手喝采だ。
佐武郎の父「よくやったな!佐武郎」
佐武郎の母「いっぱい練習したおかげね!」
父母は佐武郎の勝利を称えた。
広武「順子が負けたか~」
幸「でも2位なら悪くない方じゃない?」
広武「確かに2位なら悪くないか…」
まだ1年生で初めての運動会でも、2位という結果も家族としては悪くない印象であり
恥ずかしい一面もあったがしっかり競技に全力に取り組んだことが伝わりプラスになっている。
しかし3組チームにとっては順子ちゃんを期待していただけにこの敗北はかなり痛い。
幸助「マジか~順子が負けるなんて聞いてないぞ…」
薫「嘘だろ…」
桂里奈「順子ちゃん、悔しいだろうね…」
6年生陣も敵味方問わず誰もが順子ちゃんが勝ってしまうだろうと予測していた。
幸助も薫も桂里奈も順子ちゃんが勝つと信じていた。
この結果に落胆してしまうのも無理はないが一方で佐武郎が順子ちゃんに勝ったことで1組チームにとっては大きな希望となる。
特に1組チームの6年の大吾は佐武郎の勝利に心から湧き上がるほど大きく喜んでいた。
大吾「あの男やったな!流石は俺が見込んだ男だ!佐武郎…」
名前を忘れがちな大吾だが、ちゃんと彼の名前を覚えているようだ。
きっと大吾は卒業しても佐武郎のことは絶対忘れないはずだ。
順子ちゃん「ううう…」
順子ちゃんは四つん這いになって敗北という味を知ったのであった。
友ちゃん「順子ちゃん…」
友ちゃんは順子ちゃんを心配そうに見つめ慰めようと近づこうとした時
佐武郎が順子ちゃんが前に立って手を差し伸べた。
佐武郎「俺の勝ちだぜ順子!次も俺が勝つ!」
順子ちゃん「あ…」
順子ちゃんはハッと顔を上げる。
落ち込んだ順子ちゃんを慰めたりとか情けをかけさせたりとかはせず次の競技でも勝利宣言をした。
まだこれで終わったわけではないと順子ちゃんは自分を奮い立たせ佐武郎の手を支えに立ち上がる。
順子ちゃん「次こそは私が勝つ!」
そして拍手するような形で順子ちゃんは次は自分が勝つと宣言した。
佐武郎「へへそうこなくっちゃな!」
スポーツマンシップ溢れる二人に拍手喝采とグラウンドに青春的な熱い曲が流れる。
1年生の部の50m徒競走は終了し結果発表が行われる。
各チームで誰が1着になった人数を数えて勝負が決する。
1組チームが一人、2組チームが三人、3組チームが一人という結果により
1年生の部で50m徒競走を制したのはまさかの2組チームであり得点をゲットした。
順子ちゃん「えええええええええ!」
佐武郎「えええええええ!」
ドラマチックなアンカー対決とはなんだったのか佐武郎の勝利が報われない形になってしまった。
あまり目立たなかったが2組チームの方が総合的に足の速い子がいたということになる。
順子ちゃんと佐武郎の驚きにみんな面白おかしく笑っていた。
1組チームの1着は間違いなく佐武郎であり順子ちゃんに勝てたのは大きな一歩である。
そして他の学年も二人から勇気と力を与えてくれた。
豪「よくやったぜ!1年!まずは俺たちのチームが得点だぜ!」
大吾「俺たちも負けていられない!」
幸助「くそ!みんな取り返すぞ!」
ここから50m徒競走は2年生の部から上の学年の6年生まで行われる。
これからどのような展開が繰り広げられるのか、運動会はまだ始まったばかりである。
続く