第53話 奇跡の延長戦
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「ファイティングガルー」をかけた28回目の引きで薫は「26」を引いてしまい若い男性の2列目のビンゴカードの数字が5つ揃いビンゴになってしまった。
薫の引き運のなさのジンクスは覆ることなく敵に塩を送った最悪な結末になってしまった。
友ちゃん「ダメだったか…」
薫「悪い…みんな…」
順子ちゃん「あっちの方が運が良かったみたいね…」
幸助「引いちゃいけない数字が多かったし仕方ねえな」
三人は薫を責めていないようであり引いてはいけない数字が多かったため薫がそれを引いてしまっただけである。
僅かな確率でも奇跡を信じていたが結局は負け戦だった。
28回目以前から順子ちゃんたちも引いてはいけない数字を引いてしまう可能性があったため尚更、薫を責めることなんてできない。
初のビンゴカードを使ったイベントに参加した順子ちゃんと友ちゃん。
実力ではない運だけで勝ち進む世界を知れた二人にとって負けてはしまったがそれでも何か教訓や学びを得られたはずである。
薫は素直に謝ったが、28回目以降も続けばいずれは当たっていきビンゴになるのは必然のため
ビンゴカードたちはそれを待っていたに過ぎないためなんの罪もない。
しかしこのビンゴカードたちともお別れ、店員の指示を聞いて処分しようと思ったその時である。
まだこの抽選会は終わっていなかった。
母は娘の綺奈のビンゴカードを確認した。
綺奈の母「ねえ!綺奈!それビンゴじゃない?」
綺奈「え?」
綺奈のビンゴカードを見て今まで出てきた数字を照らし合わせて当てはめてみた。
すると1行目の左のほうから「8」、「26」、「41」、「46」、「66」の数字の5マスが開いていた。
綺奈の母「やっぱりそうよ!ビンゴになっているわ!」
綺奈「え!?本当に!」
なんと綺奈のビンゴカードも若い男性のビンゴカードと同着でビンゴだったようだ。
綺奈自身、自分の持っているビンゴカードの数字がなかなか出てこず遅れを取っていて絶望的だった様子だが
見落としていたらしくいつの間にかビンゴになっていたみたいだ。
綺奈「やった!ビンゴだ!」
順子ちゃん「良かったわね…綺奈ちゃん…」
順子ちゃんは綺奈がビンゴになったことを知り自分のことのように微笑んだ。
彼女自身が思い描いていた逆転勝利のシナリオを代わりに綺奈がやってのけたのだから。
幸助「いや…待てよ…これって二人同着でビンゴってことは?」
店員「まさかこんなことが起きるとは思っていませんでした!」
店員は若い男性がビンゴになったということでベルを鳴らしたがもう一人ビンゴの人がでてきて驚いているようだ。
景品の「ファイティングガルー」は1つしか在庫がなくこの抽選会のイベントのためだけに用意されたものなのである。
同時にビンゴが二人出るのは想定外の出来事ではなく珍しい話でもない。
そうなってしまった場合の対処も考えているはずである。
ビンゴになった者同士でジャンケンして勝敗を決めるのもありだし延長戦をするのもありだしいくらでもある。
店員「それでは二人同時ビンゴになったということで延長戦になります!」
順子ちゃん「延長戦!」
店員が取った対応は延長戦である。
延長戦は順子ちゃんが望んていたものであり彼らが所持しているビンゴカードに引いてはいけない地雷数字があるからである。
延長戦の内容にもよるが地雷数字が全て取り除かれ更地になってゲームが再開されることを願いたい。
店員「先に2ビンゴになった人が勝者となります。」
勝利条件は2ビンゴになることに変更された。
店員「他の参加者もまだ逆転できるチャンスがあります。」
逆転できるチャンスがあるという店員の発言も順子ちゃんたちにとって待ち望んでいた言葉である。
絶望的な状況からの大逆転勝利は誰もが好む展開で全身のアドレナリンを放出させる。
さらに延長戦の内容を聞いて望んでいたものと近い展開となる。
2ビンゴで勝利するということは綺奈と若い男性の2つ目のビンゴとなる数字以外は実質取り除かれるということになる。
しかし振り出しに戻ったわけではなくビンゴカードはそのまま持ち込まされているため
数字によっては引いてはいけない数字群は1回限りとなる場合もありそれが年配の男性が目当てとする数字がよい例である。
年配の男性の目当ての数字は「4」、「43」、「52」のいずれかを2つ引いてはいけないということになる。
薫「よかった~まだ続くのか~」
油断はできないが安堵になった薫である。
友ちゃん「薫って本当は運がいいんじゃないの?」
幸助「あのドッチボール大会で2組チームに勝ったのは薫の引きでもあったからな」
順子ちゃん「私もそう思うな~運がないとか言ってるけどさ」
薫「そっそうかな~」
運がないと自分から言っている薫だが順子ちゃんが望む引きではないにしろ絶望的な状況からひっくり返したのは紛れもなく薫であり
そんな彼は強運の持ち主ではないかと言われている。
薫自身が気づかないところで彼本人の強運が働いているのかもしれない。


ここから延長戦がスタートし薫の次は女子高生三人組のフェーズに入る。
29回目の数字を女子高生Aが引く。
女子高生Aが引いた数字は「73」である。
「73」を引いた結果幸助のビンゴマスは2つになった。
幸助「よし!リーチもう1つ獲得したぜ!」
「73」は他の参加者にもあったが幸助のような新たなリーチマスは出てこなかった。
順子ちゃん、友ちゃん、幸助、薫の四人のうちの誰かがビンゴになればいいので
まずは幸助がビンゴになって勝利するプランが1つ出来上がった。
薫の引きと綺奈がビンゴになった奇跡を糧にして「ファイティングガルー」ゲットという勝利を掴みたい。
先に1つビンゴになった綺奈と私服の若い男だが
まず綺奈の場合はビンゴカードが端の方に偏って開いていて真ん中の数字が開いていない。
今後の展開によるが端の数字を狙って2ビンゴを狙うのがいいかもしれない。
できれば綺奈は未知のビンゴになる数字を狙って2ビンゴ目を狙うよりも
順子ちゃんたちのように勝ち筋がある傍らの人に託した方がよく母のビンゴカードに期待するのが現実的だ。
綺奈の母のビンゴカードは「10」、「56」の数字で2つのビンゴが狙える。
ちなみに幸助のは「27」、「53」で2つのビンゴが狙える。
そして単独で参加している若い男性は「12」、「31」のどちらかが出れば
2行目(横)でリーチマスが出るのだが2ビンゴの道のりは遠のいたと言える。
順子ちゃんが「12」の数字で1ビンゴを狙っているので例えば「31」が先に出てしまった時など最悪な結末になるのだけは避けたい。
30回目に突入し引くのは女子高生Bである。
心置きなく女子高生Bは抽選箱から包み紙を取り出す。
女子高生Bが引いた数字は「4」である。
年配の男性「よし!まずは1ビンゴだ!」
幸助「ゲ!」
薫「マジか!?」
スーツ姿の年配の男性の目当ての「4」の数字が出てしまい一足先にリーチになってしまった。
順子ちゃん「でも危なかったわね…」
幸助「ああ…でも終わってねえ!」
「4」の数字は他の参加者の中で唯一、年配の男性がビンゴマスとして所有していた。
もし28回目の薫の引きで「26」ではなく「4」を引いていたらそこで試合終了となり
憎たらしくも愛らしい年配の男性が笑顔で「ファイティングガルー」を手に取っていただろう。
再び「43」と「52」が引いてはいけない地雷数字と化した。
奇跡を起こしたのに安全と思われた平地は早々に地雷が2か所埋め込まれてしまった。
この埋め込まれた地雷にはたっぷりと火薬が詰め込まれている。
踏めばたちまち大きく起爆し、地雷数字を引いた者の精神を深くえぐるだろう。
残りの1桁台の数字は「2」、「7」だけになった。
「2」を引くことができれば順子ちゃんのビンゴカードの「17」がビンゴマスとなり1行目(横)がリーチとなり
3行目(横)の「12」とで2ビンゴとなり順子ちゃんにも勝ち筋が生まれる。
女子高生Bの1列目(縦)で「2」と「7」が出れば1ビンゴとなるがまだそれが脅威にはなっていない。
女子高生Ⅽが31回目の数字を引く。
女子高生Cが引いた数字は「56」である。
綺奈の母「待ってました!56!!斜めビンゴよ!」
綺奈「やったね!!ママ!」
綺奈の母「後は10が出れば勝ちよ!」
綺奈の母が目当てする「10」の数字がまた引いてはいけない地雷数字として浮上した。
連続してビンゴマスの数字が開かれてしまったので本当に薫の引きは命を繋いだことになる。
「56」の数字が出たことで幸助の真ん中のFREEマスの横でリーチとなり「11」が出ればビンゴになる。
幸助は3つのビンゴを狙えるが、早いところ1つでもビンゴを取りたい。
32回目の数字を引く私服の若い男性である。
1ビンゴ達成したが現在リーチ状態ではなくなってしまっているため苦しい局面になっている。
せめて地雷数字だけは引かないことだけを祈りたい。
若い男性自身も負けてはいられないはずだからここでまず「12」か「31」を引いて
2行目(横)でリーチを獲得できるためそこを狙っているだろう。
32回目の数字は「44」である。
順子ちゃん「44!きた!これでリーチ2つ目よ!」
順子ちゃんと幸助と薫と女子高生Bが真ん中のFREEのマスのある縦列で偶然一致している「44」だが
ここで順子ちゃんが2つビンゴマスを獲得した。
狙うべき数字は「12」、「42」である。
33回目の数字を引くのは年配の男性である。
この抽選会は最初から年配の男性が全て仕組んだシナリオだったのか、いやそんなはずはなく全て抽選箱に引き当てられた数字が運命を導くのである。
年配の男性が抽選箱に手を入れた瞬間、他の参加者たちはブーイングするかのようにそれぞれが求めている数字を言ってくる。
順子ちゃん「12!42!」
幸助「11!27!53!」
綺奈「10!10!」
綺奈の母「10でお願いします!」
年配の男性「はい、かしこまりました。43と52ですね!」
それに対し年配の男性は満面の笑みで自分の目当ての数字で言い返す。
年配の男性の発言を聞いて順子ちゃんたちは顔をしかめたり歪めたりしていた。
誰も彼を止めることはできず彼の引きに委ねるしかない。
このような駆け引きを及ぼすゲームを通じることによってそれぞれの譲れない思いがぶつかり合い盛り上がっていくのである。
抽選会の主催者である店員はこのようなことを望んで延長戦にしたのかもしれない。
年配の男性「何が出るかな~それ!!」
順子ちゃん「アカン!」
幸助「うっせえわ!」
意地悪く引く年配の男性に順子ちゃんはまた反応し幸助はそれにツッコミを入れた。
33回目、年配の男性が引いた数字は「60」である。
順子ちゃん「60!ん?これって?…」
順子ちゃんは60の数字のマスが開いて何かに気付く。
幸助と薫が順子ちゃんのビンゴカードを見た。
薫「お!これはもしかしてダブルリーチじゃね!」
順子ちゃん「ダブルリーチ!?」
幸助「42が出れば勝ちだな!!」
友ちゃん「そうなの?」
店員も順子ちゃんのビンゴカードを確認した。
店員「はい!横と縦が同時に揃うので2ビンゴになります」
店員の説明を聞いて順子ちゃんは飛び上がって喜ぶ。
順子ちゃん「よしっ!よしっ!よし!やったーー!!ダブルリーチ!ありがとうおじいちゃん!!」
敵に塩を送る形の引きとなってしまい、年配の男性はちょっとしょんぼりしてしまっている。
「42」の数字を引けば順子ちゃんのビンゴカードでFREEマスがある真ん中の縦列と横の5行目で2ビンゴになる。
順子ちゃんは年配の男性に向けて2ビンゴの意味のピースサインを送る。
まだ勝ってもいないのに勝ち誇っている。
年配の男性に向けて送ったピースサインはおそらくダブルリーチの意味かもしれないが
ギリシャでは「くたばれ」という意味なので今すぐ順子ちゃんはその手を引っ込めるべきである。
息子のためとはいえ年配の男性もそして順子ちゃんたちにも桂里奈のため譲れない思いがある。
ここから順子ちゃんの快進撃となるのか。
4週目に突入し綺奈が再び抽選箱を引く。
薫の引きによって奇跡を見せた綺奈のビンゴカード、もう彼女のビンゴカードがまた奇跡を起こしてくれるかもしれないが
今は順子ちゃんたちが逆転する勝利の数字「42」を引いてほしいと綺奈の小さな手に委ねるのであった。
34回目、綺奈の引いた数字は「74」である。
順子ちゃん「う~ん、74はないわね」
友ちゃん「私もないわ」
幸助「俺もねえ」
薫「しょうがねえ次だ」
従来通り出てきた数字に対して順子ちゃんたちは一喜一憂していた。
34回目の数字である「74」の数字は順子ちゃんたちのビンゴカードにはなかったようであり
次に35回目の数字に期待を寄せて気持ちを切り替える。
しかしその「74」の数字はこの抽選会イベントを終わりを告げる終焉の数字だった。
若い男性「ビンゴです」
順子ちゃん「えーーーーー!うそ!!」
突然の若い男性のビンゴに順子ちゃんたちは訳も分からず困惑する。
順子ちゃん「なんで!?」
若い男性のビンゴカードを確認すると2ビンゴ達成されている。
順子ちゃんたちは2ビンゴになって喜んでいたがそれに気を取られて若い男性のリーチ宣言を聞いていなかったのだ。
真ん中のFREEの横で33回目の「60」の数字が開かれ、その隣の「74」の数字が34回目で開いてビンゴになったということである。
28回目の薫の引きのように誰かがビンゴになってまた延長戦を切望したが
「74」の数字が他の参加者たちの中でビンゴになる人もリーチになる人も皆無であり
寧ろ2ビンゴ達成する人がいないため若い男性がこの参加者の中で圧倒的な強運の持ち主だったということだ。
幸助「マジかよ…」
ここで完全に試合終了となり若い男性の2ビンゴで幕を閉じるのであった。


店員がベルを鳴らし若い男性に向けて「おめでとうございます」っと言って景品の「ファイティングガルー」をプレゼントした。
綺奈「ごめんママ…」
引いてはいけない数字を引いてしまい綺奈は自分を責めてしまっているようだ。
綺奈の母「しょうがないわよ。こういう時だってあるから。よくやったわ」
綺奈の母「他のぬいぐるみを買ってあげるから泣かないのよ」
綺奈「うん!」
慰めるように母は綺奈に他のぬいぐるみを買ってあげるそうである。
きっと「ファイティングガルー」のぬいぐるみに負けず劣らず魅力的なぬいぐるみを母と一緒に見つけられるだろう。
女子高生三人組はビンゴカードを捨ててゲームコーナーへ行き、年配の男性も違うコーナーへ行き
それぞれ「ファイティングガルー」を諦め違うものに関心を寄せている。
そして順子ちゃんも桂里奈の退院祝いのプレゼントの他の案を考えなければいけなくなったが
延長戦まで持ち込んだのに桂里奈への思いが届かなかったのが悔しくてたまらない。
ダメで元々だが順子ちゃんは若い男性に「ファイティングガルー」を譲ってくれないか懇願する。
順子ちゃん「あの~お兄さん、そのぬいぐるみ譲ってくれないかな?」
幸助「よせよ順子!」
薫「諦めようぜ」
流石に往生際が悪るいし、一番辛かったかもしれないが潔く諦めた綺奈の方がよっぽど順子ちゃんよりもいい子で立派だ。
そんなことは本人もわかっているが勢い任せで全て上手くいってきた順子ちゃんにとっては
延長戦まで行って勝利を信じていただけにこの結果には納得いかず年相応の我儘を言いたくなってしまったのである。
ここでまた一つ順子ちゃんは現実の厳しさを思い知り学んだのである。
若い男性「悪いけど、勝負は勝負だから勝ったのは俺だし譲る気はないよ。」
薫「はい!ですよね!」
ズルもイカサマもせず若い男性は正々堂々運試しの勝負で勝ったのである。
だから正当な理由があり順子ちゃんたちに「ファイティングガルー」を譲れないのである。
友ちゃん「実は私の上の学年のお姉ちゃんが退院するからそのプレゼントを渡したいんです」
友ちゃんが正直に若い男性に事情を話してしまう。
薫「あ~すいません!えっと~俺たちのクラスメイトなんですけど…その7月に大怪我しちゃって入院しちゃって~」
薫「その~退院が近いからプレゼントを~」
慌てて取り繕う薫だがあたふたしてしまい上手く言葉をまとめられない。
若い男性「退院祝いのプレゼントのことか?偶然だが俺の妹ももうすぐ退院なんだ。」
幸助「そうなんですか」
若い男性も妹がいてその彼の妹も病院で療養していてもうすぐ退院ということであり境遇が似ているが
順子ちゃんよりも思いよりそれ以上だった。
なおさら若い男性自身、妹のために「ファイティングガルー」の抽選会に参加したなら譲る気はないだろう。
若い男性は順子ちゃんたち、特に薫と幸助を見て自分の妹と同じ年頃だと感じがして彼らに尋ねる。
若い男性「君たち小学生かい?俺の妹も小学生で来年は中学生になるんだ。」
薫(ん?…待ってよ…もしかして?)
退院だけでなくその若い男性の妹は来年から中学生だと言っているから現在は小学6年生ということで
あまりにも桂里奈と当てはまり過ぎている。
薫「あの~学校は水戸東小学校ですか?」
若い男性「俺の妹のこと?そうだけど」
薫「え!あの俺たちも同じ水戸東小学校の生徒なんですよ!」
幸助「じゃあ…もしかして…」
幸助も若い男性の妹が誰なのか気付く。
水戸市東小学校の生徒で6年生で現在入院している人は桂里奈しかいない。
薫「あの~間違っていたら申し訳ないのですが浅見桂里奈のお兄さんですか?」
間違っているかもしれないが勇気を持って桂里奈の兄であるか尋ねた薫。
桂里奈の兄「ああ!その通りだよ!桂里奈の兄さ。」
順子ちゃん「本当なのーーーー!」
これで合点がいった、抽選会に参加した若い男性は桂里奈の兄なのである。
桂里奈本人から6つ上の兄がいることは幸助と薫も聞いていてまさに彼が彼女の兄なのだ。
桂里奈の兄「そうだ!あの妹が薫君とクラスメイトなんだけど確か彼はもう退院したと聞いているんだけど」
薫「はい!はい!はい!俺が薫です!杉原薫です!」
桂里奈の兄「君が薫君か!もしかして友子ちゃんもいるの?」
友ちゃん「はい!私が友子です。萱場友子です。」
桂里奈の兄「薫君!友子ちゃん!無事に二人も退院できてよかった!」
桂里奈の兄「本当にごめん!うちの親から聞いたよ、桂里奈のこといろいろ迷惑かけてしまって!」
友ちゃん「桂里奈お姉ちゃんが助けてくれたから私…うう」
薫「桂里奈は俺と友ちゃんの命の恩人なんです!」
桂里奈の兄「フッ…桂里奈やつ無茶しやがって、でもよかったな…」
桂里奈の兄と薫と友ちゃんの三人は抱き合った。
薫と友ちゃんのことを知っているのも桂里奈の兄の両親から話を聞いたからである。
まるで感動の再開をしたかのようであり何も言わずだがその様子を見た順子ちゃんと幸助は感動して涙もろくなっている。
桂里奈の兄は千葉の大学に在学していて、地元の茨城に戻ってきて桂里奈の退院祝いのため
おもちゃ屋に寄ったら「ファイティングガルー」にちょうど目に入ったので参加した次第なのである。
順子ちゃんの思いは思わぬところで桂里奈に届いていたようだ。
実質「ファイティングガルー」の抽選枠は5枠でありもしかすると順子ちゃんたちが参加したからこそ
「ファイティングガルー」を入手する確率を上げたのかもしれないし必然だったのかもしない。
おもちゃ屋を後に病院へ、桂里奈の病室にて
桂里奈「お兄ちゃん!久しぶり!でも夏休みは一回くらいお見舞いに来てよね!見捨てられたかと思った!」
桂里奈の兄「ごめん!ごめん!悪い!どうもいろいろ予定があってな」
桂里奈の兄は夏休みに妹のお見舞いに1度も来れなかったことを頭を搔きながら申し訳なさそうにしていた。
しかし手ぶらでお見舞いに来たのではなくちゃんと退院祝いのプレゼントを持ってきている。
桂里奈「わあ~このカンガルー、道着を着ていてとてもかわいい!」
桂里奈の兄「桂里奈にぴったりだと思ってな」
まさにその通りであり、桂里奈にぴったりだからこそ「ファイティングガルー」抽選会に挑んだのである。
桂里奈の兄「おもちゃ屋でそれを見つけてビンゴゲームの当選の景品だったんだ」
桂里奈「へえ~すごいじゃん!」
桂里奈の兄「そのイベントに参加したらお前の友達が偶然参加してたみたいなんだよ」
薫「いや~本当に順子が声掛けなかったらわからなかったぜ」
友ちゃん「でもよかったちゃんと桂里奈お姉ちゃんにカンガルーのぬいぐるみを渡せて」
順子ちゃん「私たちの思いは桂里奈お姉ちゃんに届いていたのね」
桂里奈の兄「俺の妹のために協力してくれてありがとうね」
桂里奈の兄が「ファイティングガルー」をゲットしたことは結果的に桂里奈に思いが届いたことになる。
幸助「薫のあの引きで既に決まっていたことになるのかもな」
薫「うんうん!あの引きは確かにな!俺が言うのもあれだけどさ!」
振り返ってみれば確かに28回目の薫の引きで決着はついていた。
しかしそれでも延長戦という奇跡のような展開になったのは薫たちも桂里奈に対する譲れない思いがあったからだろう。
薫(うん~けどこれでいいのかな~)
いろんな思いや奇跡が詰まったこの「ファイティングガルー」はかけがえのない思い出の品になったが
どうやら薫は自分の力がまだ及んでいないと感じているようでどこか物足りなさをみたいなのが拭えきれていないようだ。
薫「あの…桂里奈はゲームするのか?」
おそらく薫は最初のプレゼントの案に上がった「ドラゴンアドベンチャー」に持ち込んで誘おうとしているのだろう。
桂里奈「うん私もゲームやるわよ」
桂里奈の兄「GVDはそっちの家にもあったな」
ゲーム機本体であるGVDが桂里奈の家に置いてあるのは良い情報である。
幸助「お!じゃあドラゴンアドベンチャーだな」
順子ちゃん「ドラゴンアドベンチャーって面白いわよ!桂里奈お姉ちゃんもやろう!」
桂里奈の兄「ドラゴンアドベンチャーか、全クリしたしまた開いた日にあげようか?」
桂里奈「いいの?ありがとう」
桂里奈の兄が「ドラゴンアドベンチャー」のゲームソフト本体を持っていてやり尽くしたそうだから妹にあげるみたいである。
ゲームをする土台ですら揃っていたようである。
これ以上余計にもてなす必要はないだろう。
これからは桂里奈とみんなで楽しい思い出を作っていくことが大切なのである。
桂里奈は退院し後日再び学校生活に戻りクラスメイトと勉学を励み10月の運動会の準備に取り組むのであった。
そしてゲームのお誘いだがまず薫の家で桂里奈と友ちゃんで三人で「ドラゴンアドベンチャー」のマルチプレイをすることになった。
友ちゃんは親に「ドラゴンアドベンチャー」を買ってもらい今ではプレイヤーとして活躍し
桂里奈も来週に兄から「ドラゴンアドベンチャー」のソフトいただくため薫の家で今回が初プレイとなる。
三人で楽しくプレイしていると思いきや
友ちゃん「薫!何やってるの?こうするんだよ!こう!」
桂里奈「遅いわよ!反応が!」
薫「はい…すみません…」
薫「あ!ミスったごめん!!」
桂里奈「仕方ないわね!ほら!」
薫「おお!ナイス…」
友ちゃん「しっかりして!」
薫「はい…すみません…」
薫の母「まったく、だらしないわね」
薫「う~」
薫はゲームがすこぶる下手だった。
幸助や他の友達からも指摘されているがそんな薫は「下手の横好き」と言われる。
友ちゃんと桂里奈はゲームが上手く薫を説教しながらカバーしている。
しかも薫がクリアできなかったステージもあっさり友ちゃんと桂里奈に攻略されてしまった。
その薫の姿に彼の母は呆れつつ笑って見守っている。