イエイリ

第38話 フェイク

※この小説にはプロモーションが含まれています。

午前10時、アミュ真仙教の犯行計画【幽界に彷徨うものよ!神域へと還らん!】が行われる。
赤城と信者たちはロビーに集まり、大型のテレビに映し出された画面には人質として拘束された丸山たちの姿が。
彼らは布などで顔を覆い隠され表情が見えず、体はさなぎみたいにピクリともしない。
その姿はミイラとでも呼ぶべきか。
人質誰一人声や悲鳴を上げずただじっと死を待っているかのようで不気味だった。
今回の犯行計画を実行するメンバーたちは黒い恰好をしていてコンバットシャツに
身バレしない様に顔は黒いマスクにおまけにゴーグルまでつけていて身長165cm以上で体格は少しばらつきがある。
この中に猿江と竹原がいるのだろう。
電波ジャックによってテレビの画面はこれに差し替えられ視聴者はアミュ真仙教の恐ろしさを映像を通して思い知らされることになる。
きっと黒いマスクの裏で自分たちの力を誇示できたと喜びに浸っているはずだ。
家入たちはテレビでその映像をただ見ているだけしかできない。
川代は跪き床に強く拳で殴りつけた。
林も何もできない無力感に言葉を失い深い絶望と悲しみが宿る。
水色の防災服を着ているがそれが川代の神泉町消防隊員のユニフォームであることがわかる。
それが血しぶきをあげて赤く染まろうとしている。
被災した人々を救出するために血と汗を涙で染みついた彼らの勲章であるユニフォームがこんな形で血塗られるのはあまりにも残酷だ。
赤城「さあ!刮目せよ!魂が還る時が来た!」
そう言うが家入は強く目を閉じて顔を覆い隠した。
家入には直視できない惨劇が始まろうとしている。
赤城の声が聞こえたのか、それに応えるかのごとく組織のメンバーたちは銃を構え人質に一斉掃射されていく。
バンバンと銃声が鳴り響き人質の体から赤い液体が噴き出した。
千葉のアジトの実行現場は赤い血の海となり見るも無残な光景となった。
川代「うああああああ!」
川代の叫びも虚しく仲間たちの最後を見届けることになった。
川代の脳内に仲間たちと苦楽を共にした思い出がフラッシュバックして蘇り、それが鏡のように音を立てて割れていく。
どうしてこうなってしまったのか、なぜこんな仕打ちを受けなければいけないのか、なぜ仲間は殺されなければいけなかったのか
このような結果を招いた林と花、そして任務に失敗した長沼に怒りを覚える。
だが振り返る家入の住む道玄坂のアパートで渋谷事件の神泉町の消防隊員が瓦礫撤去をしている情報を川代は滝川と花に伝えてしまっている。
川代自身非があるとすれば情報漏洩の観点で自分たちが渋谷で瓦礫撤去をしていることを話したのが良くなかったのだろうか。
しかしそこまで詳細に話していた訳でもないし、世間一般にも広まった事件にただ関わっていたということだけしか言っていない。
おそらく決め手だったのは林と川代の二人を通じて警察と消防が連携を取っていることを知られてしまったからではないだろうか。
改めて今回の犯行計画と照らし合わせると渋谷事件で起きたサリン被害と爆撃による被害、その後始末として消防隊員たちが担い
行方不明者の捜索兼人命救助そして事件の手掛かりになるものを探し警察に提供することを
任務として動く彼らが幽界に彷徨うものとして当てはまり、神域へと還らんは千葉のアジトで人質にして処刑することが
この犯行計画の全貌だったのだ。
道玄坂のアパートで当時、林と川代は花と滝川に何を話したのかもう覚えてないが二人の正体をもっと気づいていたらと後悔するばかりだ。
並行して東京各地で斬り付け事件が起きてJアラートによる緊急外出禁止令が出されていた。
渋谷で作業している川代たちは政府から撤退の命令はなく作業を続行する意向だった。
渋谷はすでに襲撃されたので二度も襲ってこないだろうと考えていたかもしれない。
セキュリティの脆弱性と油断を突き無駄のない情報収集と巧みに計算され尽くして完成した舞台はまさに彼らにとって最高傑作になったのだろう。
赤城「ふふよくやった!猿江殿!竹原殿!」
信者たち「バンザイ!バンザイ!」
川代「くっ!」
静かに赤城に鋭い視線を向けながら川代はこの男を殺す計画を考えようとしていた。
事の発端はこの組織の計画によるものであり、全てはアミュ真仙教のリーダー赤城が元凶なのだ。
食堂では会話が少し弾み親しみやすかったが自分のしていることに対して罪悪感のかけられもない悪の権化そのものだ。
赤城「そしてこの計画に協力してくれた土屋殿、滝川殿、山本殿、そして家入殿もよくやった。」
家入「あ…」
犯行計画を成功したことに対して赤城はそれに携わったメンバーに感謝の言葉を送った。家入にも。
家入もあの犯行計画に加担していた人物である。
滝川「あり難き幸せです…」
花「アミュ様ありがとうございます。」
花(どうしてこうなったのよ…)
花は赤城の感謝を素直に受け入れていたが心境は複雑だった。
赤城に感謝された家入、犯行計画の協力者としてみなされたが彼は悪いことなど何一つもしていない。
林は家入に肩に手を置いた。
何も語らなかったがお前は何も悪くないと話しかけるようなまなざしで家入の顔を見た。
林の手の感触と暖かさに少し心が和らぎ、林に顔を合わせる家入だが今後のことが不安でいっぱいだった。
作戦の成功に余韻に浸る赤城たちの中、テレビの画面に映る悲惨な映像を見ないように家入は下を向き表情は暗いままだ。
しかしそれよりも川代の精神状態が心配である。
テレビの映像だが目の前で自分の仲間が殺されるのを黙って見ることしかできなかったのだ。
怒りと憎しみが積もりに積もっていつか破裂し暴走するかもしれない。
ただ本当に気がかりなのは長沼は任務に失敗し組織の情報を警察に届けることができなかったことである。
花が裏切って決死の覚悟で組織の情報を長沼に託し、家入も機転を利かせて
脱出の手助けをしたのにそれが水の泡となり、なんの成果もあげられなかった。
見落としが悪い黒い道でもたとえ遭難しても仲間の命のために奮闘し絶対に警察に資料を届けると思っていた。
道の途中で迷子になって時間内に辿り着けなかったのか、自分の命が助かれば他はどうなっていいとあの男はそう考える薄情者だったのか。
無作為に勝手に決めていたが花は長沼に任せたのが間違っていたと後悔しそうである。
しかし消防隊員である長沼が仲間を見捨てるのだろうか、それが本当に疑わしい。
もし仮にメンバーの誰かが長沼の脱走に気づき彼を捕まえることができたのなら
竹原が花にメールで報告してくるはずだ。
タイムリミットは午前10時もあり、天気も良いため朝になれば見通しも良くなる。
あのアジトは千葉の我孫子市にあり森の奥地にあるほうだが遭難するほど険しい道ではない。
舗装された道路さえ見つかれば交番の場所がわからなくても人里には辿り着けたはずだ。
そう考えると決してゼロではないが長沼が失敗するケースはあまりないように思われる。


一体長沼の身に何があったのかだろうか。
実は長沼は千葉のアジトを脱出してその距離から近い交番を見つけ組織の資料を警察に届けることに成功していた。
そこから千葉県警に届きそして警視庁にまで共有された。
そしてしすぐに我孫子市にある組織のアジトに突入したったの3分でメンバー全員を逮捕したのであった。
しかしあの映像は何なのか、時を戻しこれから警察の動向によって明らかとなる。
猿江と竹原、その他メンバーの逮捕後、安田たちは警視庁に戻り休憩を挟んで捜査は午前5時に再開される。
組織の情報が手元にありメンバー数人を逮捕したことでまた新たな情報を入手することができる。
だが油断は禁物で丸山の話だと人質二人と林が他のアジトに移されてしまい
それが家入と川代であり、林も傀儡のように操られてしまっている。
安田「林の行動を制限するためにあの二人を人質にとり他のアジトに移させたんだな」
安田「あの例の取引のために」
吉永「しかも人質が友人ともなれば拘束力は計り知れませんね。」
例の取引とは東京タワーで行われる身代金50兆円と渡すということである。
もし約束を守らなかった場合、組織側は人質を殺害すると脅迫している。
安田「さてこちらも作戦を考えないとな」
安田はある一枚の紙をテーブルに置いてコートの内側のポケットからペンを取り出した。
その紙は長沼が提出してくれたアミュ真仙教の内部資料の一部を抜粋してコピーしたもので
安田は組織の犯行計画らしき内容のものを読んでいた。
安田「う〜ん如何にも中二病みたいな文章だな。」
室内には吉永しかいないため恥ずかしながらその文章を音読した。
安田「幽界に彷徨うものよ!神域へと還らん!」
安田「偽りの知を放せし赤き塔、神の裁きにより眠りし死者の魂、解せよ!」
安田「憤りを隠せし信者たちよ!司に仕えし愚者に裁きを下だせ!」
吉永「クスッ!」
安田「おい!笑うな!」
吉永は仕事とは言え安田が痛すぎる中二病言葉を言ってるのがたまらず吹き出してしまった。
安田「何言っているのかさっぱりわからねえな…」
吉永「あははははははは!そうですね!自分でそれ言っておいてわからないんですね!あはははは!」
安田「ああああ!もう!こんなもん読まなきゃよかったぜ!」
吉永の笑い声に安田は赤面する。
安田「だが赤き塔って言うのは多分東京タワーで合っていると思うな」
安田「今回の取引の待合場所と合致している。」
安田も連想して犯行計画が行われる場所を具体的に導き出している。
東京タワーが関与する計画の前後の計画が人質の殺害計画と当てはまるのだろう。
ここに至るまで組織のメンバーは着々と準備を進めており花が林と接触し彼が彼女に恋に堕ちてから火蓋が切られた。
あちらはきっと計画がスムーズに進んでいると喜びに浸っているだろう。
吉永「その赤き塔が東京タワーだとすれば手前の文章が人質殺害のことであり、これを同時進行で行うことでしょう」
【幽界に彷徨うものよ!神域へと還らん!】と【偽りの知を放せし赤き塔、神の裁きにより眠りし死者の魂、解せよ!】
の2つの犯行計画が同時に進行されると吉永は推測している。
電波ジャックによって発信した林の言葉を鵜呑みにすれば午前10時に林と東京タワー付近で取引を行いを
約束を守らなければ人質を殺害するということになる。
安田「奴らがあらかじめ計画として組み込んでいたのなら、彷徨うものは消防隊員たちのことを言っているのか?」
安田「頑張って救助活動している彼らを侮辱するとは許さねえな!」
安田「あと林の正義感まで弄びやがって!絶対に奴らを逮捕してやる!」


感情的になる安田だが職務を全うする消防隊員たちを人質に取り
警察としての志を持つ林を組織の計画の歯車にして利用していることは非常に腹立たしいのだ。
いつもなら安田の怒りを静める役を担う相方の吉永も安田の怒りに共感し深く頷く。
安田と吉永の二人の怒りが組織の野望を打ち砕くであろう。 一条「あの取引、やっぱり受けるつもりなのか?」
捜査会議室に一条が入ってきた。
二人の熱い思いに応えるが如くの佇まいだ。
安田と吉永が座っている席から斜め前の席に足を組んで座りテーブルに肘をつけ安田の方に顔を向けた。
現在捜査会議室は安田と吉永と一条の三人だけしかいない。
安田「もちろん受けるつもりさ。林は俺の大事な後輩なんだからよ!」
一条の例の取引に応じるのかの問に安田は応じると素直に答えた。
一条「フッそれしか他に選択肢はないよな」
この前とは違い一条の表示はどこか余裕そうな笑みを浮かべていた。
その笑みには表裏はなく絶対的な勝算がこちらにはあるからだ。
まずは殺害予定だった人質は全員救出されていること、
さらに対策も練っておりある程度形になってきているのだ。
一条はこの身代金取引にも予想を立てていてそれが的中すると自信を持っている。
一条「身代金受取の立会人は林で間違いないはずだ」
安田「ああ…」
身代金の立会人が林であることは安田も共通の認識である。
一条「代わりに人質を使えば林の負担が減るだけじゃねえ、交渉材料を自ら減らすことになる」
一条「多分捕まるってわかっているだろうから奴らもそんなに馬鹿じゃねえだろうな。」
一条「奴らの狙いは絶対、安田と林をそして俺たち警察を道連れにして痛手を負わせることだ。」
警察と接触することがリスクであり林が取引の立会人であると結論として述べた。
何回か爆破テロがあったことからそれが経験則として基づいており安田と林が接触した末に自爆すると一条は予想している。
千葉のアジトに爆弾をつくるための材料や火薬が置いてあったのがそれを伺えられる。
どのような手段、どのような方法で、どのようなタイミングで引き金を引くかは定かではないが
爆破かサリンの双方に対策を施すべきであろう。
一条「5課の松葉らに寝る間を惜しんで対策を考えてくれているから安田は例の取引に集中してくれ」
組織犯罪対策課5課の松葉たちに爆破とサリンの対策を任せているらしい。
千葉のアジトで見つかった材料や火薬を基に実験と対策を行っているだろう。
夜分遅くまで彼らには本当にお疲れ様である。
組織側は人質がいるからこそ強気でいられることができ
約束を守っても守らなくても組織は予定通り人質の殺害計画を実行しまとめて安田と林を排除して
おまけに東京タワーの周辺にも被害を加えようとの魂胆だろう。
だが千葉のアジトの人質はすでに救出済みであり、組織の計画は大きく狂い始める。
それが一条の余裕そうな顔を見せている最大の理由だ。





大体の道筋が見えてきたところで一条はある提案をする。
一条「1時間後の会議で話すがお前らに事前に話しておく」
一条「こっちとしては二人の人質を安全かつ迅速に救出を行いたい。」
一条「だから俺たち警察が情報を持っていることを悟られてはいけない。」
安田「なるほどそういうことか」
長年、多くの事件に携わってきたからこそ一条の言っていることがわかっており
組織に情報を漏らさないこと秘密保持の重要性を理解している。
悟られれば人質の安否に関わり組織側が計画の変更あるいは予定を早めて実行してくる可能性がある。
吉永「しかしもう人質はすでに救出しています。」
吉永「彼らがその違和感に気づくのかもしれません。」
吉永の指摘はもっともであり組織に気づかれるのも時間の問題で
遅くても午前10時に計画を実行するためその時に気づかれてしまう。
そうなってしまうと警察側は何らかの形で情報得ていると悟られる恐れがある。
一条「そうならねえようにこっちも作戦を立てている。もう仕込みも始めている。」
安田「一体何をする気だ?」
一条「フェイク映像を流すのさ」
組織に情報を持っていることと人質が救出されていることを悟らせないため
組織犯罪対策課4課の一条たちはフェイク映像を流す作戦を考えているそうだ。
一条はある携帯電話をポケットから出してテーブルに置いた。
安田「なんだこれは!?」
その携帯電話はシールやステッカーがとことどころに貼ってあって
如何にも一条らしくない今どきの若者がやりそうな代物だ。
一条「これは捕まえた奴らの貴重品だ。」
安田「ほっそうか…」
この携帯電話は一条のものではないと知り少しだけ安堵する安田。
どうやらこれは逮捕した組織のメンバーから押収したものだった。
しかしその携帯電話で一条は何をする気なのだろうか。
一条「この携帯を使ってあの例の土屋花って女とやり取りしていたのさ」
一条が使っている携帯は竹原のものでメール機能を使って花とやり取りしていた。
まず一条は竹原に成りすまして花に午前10時の犯行計画の内容を一部変更することを報告した。
送信したメールの内容だが人質の顔を覆い隠して殺害すると言った文言を竹原の口調に合わせた若者言葉で送った。
それに対して花からは勝手にやっていいと返事で来たのだ。
花だけでなく他のメンバーも人質の顔を把握していると思われるので顔を隠してしまえばわからなくなる。
これでフェイク映像を制作する基盤も出来上がったも同然という訳だ。
吉永「いや~一条さんの行動力には脱帽します。」
安田「俺もメール使いこなせるようにしないとな~」
平成初期の時代から携帯電話の機能が発達していきメールの機能も搭載されている。
文明の利器を制する者は事件も制するのだろうか。
安田「でもまあよくあの女からあっさりと許可を得られたな。」
一条「理解してくれたかどうかはわからないが警察に協力してくれるそうだな。」
メールの内容の意図を花は読み取ることができたのかどうかわからないが警察に協力する意思があるように見られる。
一条が率いる組織犯罪対策課4課の作戦であるフェイク映像の詳細は作戦会議で明らかになる。
早朝午前6時作成会議が開始され捜査会議室に職員たちで全席が埋まり警察庁長官の鬼頭も会議に参加している。
今回の取り扱うのは警察としても深くかかわる重要な事件であり残された二人の人質も何としてでも救わなければならない。
会議では組織犯罪対策課4課の一条らが中心に進んでいく。
最重要事項は以下の2つ。
午前10時に行われる身代金の取引にてこれを断固として拒否し林秀人を拘束すること
そしてもう1つが人質殺害の映像をフェイク映像に差し替えることだ。
組織の情報をあちらに悟られないように秘密保持を徹底することを念頭に置き
情報発信を担うメディアとのやり取りで現在捜査中と表では報じるように命じながらも
裏では協力体制を敷くことを方針として固めていく。
皮肉だが組織を欺くためメディアと裏で糸を引く構図になる。
一条「フェイク映像についてだが人質の代わりにこれを使う」
運び込まれた大きなダンボール箱からマネキンと赤い液体の入ったビニール袋が出てきた。
一条「このマネキンの中にこの赤い液体の入った袋を入れる。」
鬼頭「そうすることによってリアリティーのある演出が再現できるということだな。」
一条「民間の映像業界とタッグを組んでド派手にやりますんで奴らはあれが本物と勘違いするでしょう」
鬼頭「フッ盛大に血祭りにあげてやれ」
鬼頭「面白い策だが実行役の方も抜かりないか?」
一条「もちろんです。彼らが来ている服を流用します。」
一条「顔を隠すマスクもちゃんと奴らは持っておりました。」
一条「実行役はこれに変装すればバッチリです。」
鬼頭「完璧だな。奴らは顔を知られるのはリスクになるだろうから」
鬼頭「実行役が警察だったなんてことは知られることはないな。」
猿江と竹原、そしてその他のメンバーから押収した服と顔を隠すマスクを流用し
体格や身長も把握しているため人員もそれと合わせて揃えるようにすれば
組織の実行メンバーたちと何ら遜色ない格好に仕上がる。
組織側も計画の成功のため情報を悟られないようにすることはもちろん
特に身元は明かしてはいけないはずだから
その心理をうまく利用した組織犯罪対策課4課の一条たちの作戦に鬼頭は称賛した。





こうして午前10時の人質殺害の映像は一条たちが画策したフェイクであることが明らかとなり
丸山たちは救出され人質の代わりにマネキンが使用されていたのだ。
同時並行で行われる身代金取引に向けての作戦も着実に進んでいる。
その任務を担うのは当然安田巡査部長である。
松葉「我々組織犯罪対策課5課の名に懸けて様々な経験と培った技術と知恵を結集させた防衛策で」
松葉「必ずや自爆テロを防いで見せます!」
松葉「しかし…サリンが出てくる可能性も否定できません…ですからこれを」
安田「ありがとう」
松葉は安田にガスマスクを2つ渡した。
強い意気込みで組織犯罪対策課5課の誇りをもって自爆テロを未然に防ぐと揚言したが
それでも慎重にサリン放出を視野に入れていた。
ガスマスクが2つあるのは林の分だろう。
鬼頭「もうこれ以上奴らの好きにはさせん!」
鬼頭「安田、絶対に林を救出し警察の魂の火を再び灯すのだ!」
安田「はい!」
安田は鬼頭に深く敬礼した。
きっと林は組織に拘束され人質を守るためとはいえ計画の進行の踏み台にされている。
彼は奈落の底へと突き落とされ深い苦しみと絶望を味わっているのだろう。
警察本部の指揮は高まり総力を結集し
林と家入と川代を絶望の淵から救い出しアミュ真仙教の野望を打ち砕くため動き出した。
約束の時間が近づき安田は東京タワーの付近で林が来るのを待っていた。
そして見えないところで警察と自衛隊、そして5課の松葉たちが待機しており
テロ行為を最前線で防ぐ準備が整い逃走してもすぐにルートを封鎖する体制も万全だ。
安田「さあ来い!林!」
懐に隠してあるガスマスクを握り心臓が脈打ちながら覚悟を決める。
しかし、約束の時間は過ぎ10分、20分と、どんどん時間が過ぎても一向に来る気配を感じない。
安田「どういうことだ!?なぜ来ない!」
身代金取引の約束はどうしたのか。
予想外の局面に安田たちの胸中がざわつき始めるのであった。


続く

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