第20話 宣伝活動に向けて
※この小説にはプロモーションが含まれています。
いいアイデアが思い浮かんだ理貴は忘れないように復唱していて
すぐに父に伝えたいのかちょっと車のアクセルを強めに踏んでいた。
午後16時、帰宅した理貴はまだ駄菓子屋は開いていると思い店内の様子を見に行った。
入ってみると案の定店内に父がいた。
しかし父は嬉しそうな表情をしていて理貴の帰りを待っていたようだ。
理貴「ただいま親父」
エビスじいちゃん「おう!おかえり!」
エビスじいちゃん「聞いていくれ理貴!玉井の息子の颯太君が友達を連れて来店してくれたんじゃよ!」
理貴「やっぱりそうか、玉井店長から話は聞いているぜ!」
玉井が息子の颯太にお金を持たせてこの駄菓子屋を支援するようにと頼んでいたことを理貴は知っている。
あの表情を見るに何かしら成果を得られたのではないかと思われる。
理貴「なにかいいのが浮かんだのかな?」
エビスじいちゃん「グフフ…まあのう~」
不敵な笑みを浮かべるエビスじいちゃんだが商売人としての血が騒いでいるようだ。
今にでも思いついたアイデアを口に出しそうになっている父から先にアイデアを出すことにした。
理貴自身も思いついたアイデアがあるがかぶってしまったら可哀想かなと思ってそうした。
エビスじいちゃんはある飴菓子の袋を取り出した。
「フルーツキャンディー」という飴菓子だがその袋はすでに開封されていた。
エビスじいちゃんは畳の上にあぐらをかき、理貴もあぐらをかき
「フルーツキャンディ」の袋をひっくり返して中の飴を全部出して畳の上に置いた。
エビスじいちゃん「これを1個ずつ売って10円で売ろうと思うのじゃ」
理貴「あ~バラ売りか!」
エビスじいちゃん「そうそれじゃ!」
1袋単位で売るのではなく中身のお菓子を1個ずつ売り出すのがエビスじいちゃんの思いついたアイデアだが
理貴はバラ売りと言った。
バラ売りとは、まとめて販売されている商品を1つずつに分けて販売するやり方である。
つまりエビスじいちゃんの思いついたアイデアはお菓子をバラ売りしてお菓子の価格を安くするやり方だ。
「フルーツキャンディ」は1袋180円で20個飴が入っている。
全て売れれば200円となる計算だ。
もとの単価が飴1個9円のため仕入れ値より高く売ることができるため
大量に安く仕入れて高く売るといった理想的な経営が実現できている。
理貴はそのバラ売りという販売方法に思わずハッとなる。
理貴「あ~その手があったか!思いつかなかった!」
現役で「オリーブ」で働いている理貴であるがそのような発想は思いつかなかった。
エビスじいちゃん「颯太君らがアイデアを出してくれたおかげなんじゃ」
流石「オリーブ」の元店長だが、颯太たちがアイデアを出し合っていた中で触発され思いついたそうだ。
次は颯太たちが考えたアイデアが何なのか理貴に伝えた。
エビスじいちゃん「ゲームとかおもちゃとか売ってみてはとアドバイスしてくれたんじゃよ」
理貴「はは!子どもらしいね」
ゲームとおもちゃを売るといったアイデアは子どもたちの純粋さが伝わる。
それを聞いた理貴は心がほっこりして自分が子どもだった時の頃を懐かしむ。
理貴も子どもの頃はゲームやおもちゃが好きな普通の男の子だった。
理貴「う~んでもゲームを売るっての難しいな」
エビスじいちゃん「理貴もか、わしも本人らにゲームを売るのはちょっと無理と言っといたわい」
理貴も同じくゲームを売ることはできないとの考えだった。
お菓子よりも倍以上の単価がかかるしゲームを売り出したら
お菓子を売る駄菓子屋のイメージからかけ離れてしまう恐れがある。
コスト面からゲームを売るのは難しいということだが、一方でおもちゃを売るのは可能だと理貴は考えている。
理貴「おもちゃは安いのが売っているからいいんじゃないかな」
理貴「きっと子どもも喜ぶと思うよ。」
理由は安いからという考えで理貴は駄菓子屋でおもちゃを売ることについては良しと考えている。
反対に首を横に振りエビスじいちゃんは違う考えを持っている。
これも颯太たちから出された案らしいがそれについても理貴に伝えた。
エビスじいちゃん「おもちゃは売るんじゃなくて置いてといてそのまま子どもが遊べるようにしたいのじゃ」
エビスじいちゃん「颯太君たちがな輪投げとか射的とか1回10円で遊べるようにして」
エビスじいちゃん「景品でお菓子を出してみればって言ってくれたんじゃ」
理貴「あ~なるほどそういうことか」
例えば輪投げを1回10円で遊べるようにして的棒に輪を入れることができたら景品としてお菓子をあげるというアイデアだ。
そのアイデアを受けてエビスじいちゃんはお菓子をバラ売りする発想が浮かんだんだと理貴は理解する。
おもちゃは売るのではなく子どもたち遊び道具として取り入れて
飽くまでお菓子を売ることに趣を置くことエビスじいちゃんは徹したいそうだ。
これをお茶会と組み合わせることができれば子どもたちに充実した憩いの場を提供することができるはずだ。
「フルーツキャンディ」の飴菓子を袋の中に戻すエビスじいちゃんと理貴。
理貴「バラ売りするならこういう個包装のものじゃないとね」
エビスじいちゃん「そうじゃな」
店内のお菓子を無作為に手に取る理貴だがポテトチップスはこれじゃないと陳列棚に戻し
あるお菓子に目がいき探し求めたのはこれだと言わんばかりに手にとって父の前にそれを見せて開封した。
理貴が開封したお菓子は「キューブチョコ」である。
「キューブチョコ」はすごろくやボードゲームなどに使われるサイコロの形をした一口サイズのチョコレートである。
「キューブチョコ」のパッケージである袋を開封して中身を取り出すと
さらに本体のチョコレートを包装する透明のプラスチックが包まれている。
理貴がポテトチップスではなく「キューブチョコ」を選んだのはこのお菓子が個包装だからである。
個包装とは「キューブチョコ」のように商品を1個ずつフィルムやプラスチックなど別々に包装することである。
特にキャンディやチョコレートは熱に影響されやすく溶けてしまうと
品質を損なうだけでなく衛生面でのリスクが生じる恐れがある。
だから二人は一貫して空調管理に気を配り今日までエアコンの設置の重要性について話してきていたのだ。
1つ1つ独立して包装することによって衛生面と品質を保持することができ
もしこの「キューブチョコ」が溶けてしまっても商品全体の影響を最小限に抑えある程度形を保つことができる。
エビスじいちゃんのお菓子のバラ売りアイデアは個包装されたお菓子に限られるが
子ども目線での価格設定の悩みや子どもたちの資金面での悩みもこれである程度解消されるかもしれない。
エビスじいちゃんが思いついたアイデアを満足に出し尽くすことができたので今度は理貴が発表する番である。
理貴「よし!俺もいいのを思いついているから今からそれを紹介するぜ!」
エビスじいちゃん「お!理貴も考えてくれたのか!」
エビスじいちゃん「うんなんじゃ?このチラシ?」
まず理貴が父に見せたのはスポーツジムのチラシである。
理貴「これだよ!これ」
理貴はスポーツジムのチラシのある箇所を指で円を描くように指し示した。
指で指し示したの月額会員制である。
エビスじいちゃん「なんじゃ~理貴、スポーツでもするんか?」
理貴「いや違うって!」
理解していないのかわざとなのかわからないがエビスじいちゃんのボケに理貴は腰に力が抜けて膝がガクっとなった。
改めてスポーツジムのチラシに記されている月額会員制を強調するように指し示した。
理貴「これこれ!月額会員制みたいなのをこの駄菓子屋でやってみないか?」
スポーツジムのように理貴は駄菓子屋エビスで月額会員制を導入することを提案する。
月額会員制は月単位で定額の料金を支払い、会員になればサービスや商品を期間内だけ無制限に利用できることである。
エビスじいちゃん「どういうことじゃ?」
顎の髭を手でなでながら当てるエビスじいちゃんは理貴のアイデアをまだ理解できていないようである。
理貴「これをさ、例えば月額300円にして会員制になればここのサービスを利用できるようにすればいいんじゃなかって思うんだ」
理貴「お茶会とかさっき言ってた輪投げとか射的とか店内のおもちゃを自由に遊べるようにしてさ」
理貴「これだったらお菓子買わなきゃいけないみたいな気持ちもなくなるんじゃないかな」
理貴「あと何度もここに来店することもできるんじゅないかな?」
エビスじいちゃん「ほうほうなるほど!」
理貴の説明を聞いて深く頷き理解した。
月額会員制なら理貴が言うようにお菓子を買わなければいけない心理を払拭し
資金面に限界がある子どもたちも何度も駄菓子屋に来店できる仕組みが自然に成り立ちそうである。
会員制になった時、受けられるサービスは最初に考えたお茶会で茶の間のように無料でお茶が飲めるサービスと
店内に置かれているおもちゃを自由に使って遊べるサービスが相当するだろう。
例として理貴が挙げたが月額料金300円で設定した場合、今まで来店した子どもは合計で十六人で
全員会員になってくれれば4800円が月の収益として見込まれる。
お菓子を景品として、お金を支払って遊ぶことができるゲームを取り入れたり
大人のお客さんである玉井と本多、そして「オリーブ」の常連である浜田がこの駄菓子屋でも常連になってくれれば
こちらはお菓子を適正な価格で売ることができるのでさらに収益を伸ばすことができる。
家に戻って台所の冷蔵庫に冷やしておいた「スイカメロンミックスソーダ」を二人は飲んでみた。
エビスじいちゃん「あんまりおいしくないの~」
理貴「う~ん」
新たな仕入先として見つけたディスカウントスーパー「ヤスモリ」で投売りされていた
「スイカメロンミックスソーダ」だが評判どおりお世辞にもおいしいと言えるものではなかった。
赤い液体をした炭酸飲料だが色から見るにメロンよりもスイカのほうが比率が上で
思ったとおりスイカの味だがほんのりメロンの味がした。
さらに余計に砂糖やハーブのようなものが入ってさらに味を悪くしている。
この「スイカメロンミックスソーダ」のようなそれぞれの素材の持ち味を活かすことができず互いに引っ張り合ってしまわないように
エビスじいちゃんと理貴、そして子どもたちが出してくれたアイデアをうまくまとめて理想の駄菓子屋を実現したいところである。
エビスじいちゃん「よくこのチラシをみつけたのう」
理貴「あ~これ磯島がスポーツジムやってるらしくてそのチラシを見せてくれたんだ。」
エビスじいちゃん「あ~あやつか~若いのに太ってたあの男か」
理貴「でも今はそれ(スポーツジム)に通ってからは痩せて見違えているよ」
月額会員制を思いついた経緯を話す理貴だが
エビスじいちゃんはスポーツジムのチラシをじっくり眺めて考え込んだ。
エビスじいちゃん「わしらこういった宣伝活動をするべきなんじゃろうな」
理貴「宣伝か!うんうん!やるべきだと思うね!」
宣伝活動もマーケティングをする上で重要な要素である。
チラシの内容を読んで月額会員制というアイデアを思いついた理貴とは反対に
エビスじいちゃんはチラシによってもたらす宣伝効果の可能性を見通している。
今まではたまたま通りかかって見つけて来店してくれたがもっと駄菓子屋を発展させていきたいのなら
これからは自ら客を増やすように宣伝活動が必要になってくるだろう。
宣伝方法はさまざまだがまずはチラシを配るやり方で始めることにした。
早速チラシ作りに取り組むことなり不要になった紙の裏面を使ってチラシの構図を書いてみた。
大まかに3分割するように線を引いてタイトル、内容、営業時間の項目に分けた。
タイトルの項目は「駄菓子屋エビス」と大々的に書いて
内容は先ほど二人が話し合っていたように月の定額料金を支払い会員になれば無料でお茶が飲めるお茶会に参加できたり
店内に置いてあるおもちゃを自由に遊ぶことができたりなどのサービスを受けられるとい趣旨を伝える文章を書いた。
そして営業時間は仮ではあるが午前9時から午後17時にして定休日を水曜日に設定した。
定休日をチラシに書いておけば客側も日程を合わせて来店してくれるだろう。
理貴は表も裏も真っ白なA4用紙に清書した。
間違えないように鉛筆で薄く書いてその上からネームペンで書いて駄菓子屋エビスのチラシの全体像を書き上げた。
理貴「こんな感じでどうだ親父?」
エビスじいちゃん「う~字だけじゃとなんか地味じゃのう~」
エビスじいちゃん「絵でも描いたほうがいいかもしれんな」
理貴「絵心ないからちょっと絵を描くのは無理かも」
文字だけでは味気ないと感じたエビスじいちゃんは絵を付け足してみればと提案するが
理貴は絵心がないらしく人に見せるものなので恥ずかしながら申し訳なく感じている。
チラシを読んだ人が魅力を感じて来店したくなるような
人が目が引くデザイン性を考えなければいけないと考えてしまうとハードルが高くなってしまいがちだ。
理貴は絵心がないと言っているが学生時代の美術はこれといった特筆するものがない無難な成績だった。
学生時代以来、絵を描く機会はほとんどなくなり「オリーブ」の仕事でも
イベントや企画立案のため絵を描く機会はありそうだがそれは他の人に任せてしまっている。
自信がないなら無理強いはさせたくないのだがエビスじいちゃんも自信がない。
手を止めないように理貴は自分でも描ける絵はないかスマホで検索して参考になるデザインやイラストを探した。
エビスじいちゃん「お菓子の絵でも掛ければいいんじゃがな」
理貴「じゃあこういうのはどうかな?」
もう一枚の白紙に理貴は簡単なリボンを描くような包み紙に包まれた飴玉の絵を描いてみた。
エビスじいちゃん「ほうほう!飴玉か!さてこの飴玉の絵をどこに入れようかのう~」
エビスじいちゃん「あ!エビスのビってところ濁点を飴玉にするのはどうじゃ?」
理貴「それいいね!」
エビスのビの文字の濁点を飴玉にして見せた。
エビスじいちゃん「うん!いい感じじゃ!」
理貴「だったらもっと全体的にポップな感じにしようぜ!」
エビスじいちゃん「うむ!カラフルな感じにしてな」
ここからさらに「駄菓子屋エビス」のタイトルロゴを考えるところへと発展した。
これを考えることで壁面看板のデザインに流用することも視野に入れられる。
まずは鉛筆で駄菓子屋エビスと書いてそこから大きく縁取るように大きく文字を書いて
色で塗りつぶせるように白抜き文字にした。
また親しみやすくなるよう文字全体を丸みのあるフォントにした。
理貴「配色はどうする?」
エビスじいちゃん「駄菓子屋エビスで7文字じゃから〜あ!ちょうど虹の色も7色じゃったな!虹でどうじゃ?」
理貴「それにしてみるか」
駄菓子屋エビスを1文字ずつ左から赤、橙、黃、緑、青、藍、紫の順番で虹のようなカラフルな配色に決まった。
エビスじいちゃん「順番に塗っていくとエビスのビの文字は藍色になるようじゃな」
エビスのビの文字の色が藍色になり寒色のため濁点の飴玉の色をどうするかである。
エビスじいちゃん「何色にするんじゃ?」
虹の配色を起用したのでデザインを損なわずできれば溶け込むような感じの色を採用したい。
理貴「飴玉の色はピンク色にしてみようか」
エビスじいちゃん「う〜んピンクね〜なるほど〜う〜ん、うん!ありじゃな!」
実際に色を塗って判断した訳ではないが頭でイメージした結果濁点の飴玉の色はピンクにした。
ピンクの色は虹の配色に入っていないこともあり選ばれたのかもしれないが
寒色である藍色に対し暖色であるピンクを使うそうだが相性は良いほうである。
色は真反対のほうが相性がいいという傾向がある。
包み紙の色をピンクにするということだがピンクの飴玉の絵は可愛らしくオシャレで女児に対して受けがいいかもしれない。
色鉛筆で色を塗ろうとした理貴だが何かに気づいたのか赤色鉛筆を置いて待ったをかけた。
理貴「いや…ちょっと待って!」
エビスじいちゃん「うん?どうしたんじゃ?」
理貴は駄の文字を赤で塗ろうとしてエビスじいちゃんはスの文字を紫で塗ろうとしていたところだった。
理貴に言われてエビスじいちゃんも手を止めた。
理貴「これみんなに配るんでしょ?だったら色を塗るのは何部か刷ってからにしない?」
エビスじいちゃん「なんでじゃ?色を塗ってからのほうが絶対いいじゃろ!」
色を塗る前の白黒の状態でコピーしたい理貴だがエビスじいちゃんは色を塗ってからでいいと言う。
効率的にエビスじいちゃんが言ってたように色を塗ってからのほうがいいと思われる。
理貴「いやほらカラー印刷って白黒印刷より高いんだよ」
エビスじいちゃん「あ!そうじゃったか!」
インクやトナーの使用量が多くなるためカラー印刷は白黒印刷よりもコストがかかる。
星川家にはコピー機がないためコンビニのコピー機を頼らざるを得ない。
理貴が寄るコンビニでのカラー印刷が1枚50円である。
何部刷るか決まっていないがカラー印刷を使うとなれば費用負担は相当高くなってしまう。
だから理貴は色を塗らないで先に白黒印刷で安く費用を抑えたいのだ。
白黒印刷なら1枚10円なのでカラー印刷よりも5分の1でありとても安い。
桜林小学校の子どもたちに向けてチラシを配っていきたいので余裕を持って100枚刷ることにした。
理貴はコンビニに行ってチラシを100枚コピーしてきた。
印刷代は1000円だったかもしカラー印刷だったら5倍の5000円になっていた。
エビスじいちゃん「おかえり理貴、しかしこれを全部塗るのは結構大変じゃのう〜」
理貴「仕方ないね…」
こうして途方もないチラシの色塗り作業が始まった。
宣伝活動に向けてエビスじいちゃんと理貴は地道に一歩ずつ進むのであった。
続く
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