駄菓子屋じいちゃんエビス

第18話 新たな課題

※この小説にはプロモーションが含まれています。

常連である隼人の祖母の来店を機に始めたお茶会。
ぶっつけ本番ではあるがこちらがやろうとしている意図を隼人の祖母は理解してくれた。
このまま順調に進むと思われたが気になる点を隼人の祖母は見つけたようである。
今後の新たな課題となるが気になる点とはなんだろうか


隼人の祖母「え~とそうですね…」
理貴「全然何言っても構いません!」
エビスじいちゃん「はい!何に言ってもいいですよ」
隼人の祖母は首を傾げながら言っていいのか悪いのかいろいろ考え込んでいるが
エビスじいちゃんと理貴にとっては耳が痛いものになってしまうが
厳しい指摘も駄菓子屋の発展のためなら大歓迎である。
隼人の祖母「私が気になっているのは子どもをメインとしていると思われますので」
隼人の祖母「子どもだけの時もこのような形で運営していくのでしょうか?」
理貴「え~と言いますと?」
隼人の祖母「今こうして私がお金を出して隼人とお菓子を食べたり飲み物を飲んだりしていますが」
隼人の祖母「子どもたちだけになるとちょっとお金の面で多分厳しいかなと思いました。」
隼人の祖母「その点はどうお考えなんですか?」
理貴「あ~はいはい」
隼人の祖母から言われた指摘は痛いほど理解している。
要するにお菓子の単価が子どもたちにとって釣り合わないということだ。
いろんな話し合いをした結果、正解に辿り着いたのが
この親子で店に来てもらうことであるのだ。
子どもたちの家庭の経済事情やお小遣いの金銭面について
目を背きできれば逃げ切りたいとすら思えたが
この問題は二人の背後に執拗に追いかけもはや無視できないところまできている。
隼人「翔吉兄ちゃんも大変だったよね」
エビスじいちゃん「じゃからわしはあの時この220円のグニャボヨを100円で売ったんじゃ」
隼人の祖母「それはちょっとやり過ぎですよ。でも流石は健ちゃんですね…」
エビスじいちゃん「とほほ…」
商売上手だと言ってくれる常連の隼人の祖母もその値下げ具合には引いてしまうほどである。
隼人の好物である「グニャボヨ」は220円であるが他の店でも同じような価格で売られている。
「グニャボヨ」のようにハードグミを実現するための製造過程での素材や技術によって
コストがかかっているため高めな価格設定がされている。
お菓子の全体の平均価格は120円くらいだが子どものお小遣いには、
限界もあり複数購入したり何度もお菓子を買いにいけないと思われる。
価格を安くすれば子どもたちは嬉しいがそれだと利益にならないし
そのままの価格で提供しても高いと子どもたちは寄り付かなくなってしまうため
このようなジレンマが発生してしまう。
理貴「こっちも商売だから仕方ないけど、客さんも第一に考えないといけませんからね…」
理貴「親父にもいろいろそれ言ってきましたが私もちょっと言い過ぎちゃったかなと思います」
エビスじいちゃん「別にわしはそんなこと気にしておらんぞ」
エビスじいちゃん「じゃがどうすればいいもんかのう」
子どもたちに安くお菓子を提供したことに対して利益にならないと
説教がましくエビスじいちゃんに言ってきた理貴も
実際の駄菓子屋経営を通してエビスじいちゃんの苦悩を改めて知り申し訳なく感じている。
安く仕入れて高く売る策略も陰りを見せている。
やっと安く大量に仕入れができる店を見つけたがいかに子どもたちに適正な価格で提供できるかが
今後の駄菓子屋エビスの発展のカギになるだろう。
隼人の祖母「子どもたちが何度もこの駄菓子屋に来れるような仕組みがあるといいですね」
隼人の祖母「また余裕がある時に隼人と一緒にお菓子を買いに来ようと思います。」
理貴「ありがとうございます」
隼人の祖母「来月は年金も入ってきますので」
エビスじいちゃん「ははは!はいはい!」
また来店してくるそうで浜田家族は駄菓子屋エビスでも常連になってくれそうである。
いつ来店する予定は具体的に聞かなかったが年金の話もあったので
遅くても来月から来店してくれるはずである。
お菓子と飲み物を嗜んだ後、少しして浜田家族は駄菓子屋を後にした。



浜田家族の来店によって見えてきた課題は大きく分けて二つ
お菓子の単価の見直しと何度も来店できる仕組み作りである。
お茶会で使ったテーブルをリビングに戻して今後のことを話し合いながら
エビスじいちゃんと理貴は夕飯の支度を始めた。
理貴「ひとまず今日は成功ってことでいいんじゃない?」
エビスじいちゃん「隼人君も気に入ってくれたんじゃからな~」
試しにやってみたお茶会だが今回は家族で来てくれたこともあり
売上もあるため結果は良好と言っていいと理貴は思っているようだ。
さらに新規顧客も獲得できているので新たな課題はできたにしろ喜んでも罰は当たらないはずだ。
エビスじいちゃん「じゃが子どもたちだけが来た時のことも考えんといけんな」
一喜一憂しない姿勢を見せエビスじいちゃんは次のことを考えている。
エビスじいちゃん「子どもたちのためお菓子の値段を高過ぎず安過ぎないようにしないとな」
エビスじいちゃん「うぬ~」
しかしなかなかいいアイデアが浮かんでこない。
理貴「う~ん俺思ったんだけどそれは問題ないんじゃないかな?」
エビスじいちゃん「え?なんでじゃ?」
子どもたちは来店することに対してお金の面は問題ないと言う理貴。
理貴「こっちに来るってことはお菓子を買いに来たのが目的なんだから」
理貴「ある程度まとまったお金を持っていると思うんだよね。」
エビスじいちゃん「あ~そうじゃな結局お金がなくちゃ来ないもんな」
お金がなければ店に寄らないのは当然の考えである。
店に行って買い物するならお金が入った財布を持って出かけるはずである。
エビスじいちゃん「それでものう~お金がなくたって店に入ってきて商品を見るだけならタダじゃろ?」
理貴「あ~それもあるか」
店に入ったとしても目当ての商品がなかったり何も買わずに店を出る人もいる。
理貴も「オリーブ」で何も買わずに店を出る人を毎日のように見掛けている。
店を出た人は財布忘れていたりとかそもそも買うつもりもなく視察しに来ていたりとか理由は様々である。
例えば目当ての商品が売っていても所持金が足りなければ
一旦店を出て買うための資金を貯めてから再度来店しにくる人もいるし
例をもう1つ上げると家計のことを考えてできるだけ価格の安いを牛乳を探して
何件か店を見て価格を比較しに来るような人もいる。
ある商品を買うために資金を貯めてからにするか安くなるまで待つかのいずれかのどちらかで
理貴の考えは前者のような考えでエビスじいちゃんの場合はどちらかというと後者に近い考え方である。
お菓子の単価の見直しよりもまずは何度も来店できる仕組みを作りを考えたほうがいいかもしれない。
どんなお菓子が売っているのか見ないと始まらないからだ。
理貴「お菓子の値段が高いって浜田さん言ってたけどさあ~」
理貴「なんだろう…こういうお菓子を買わなきゃいけない感じになっているのが問題なんじゃないかな?」
理貴「お茶会も親父のサービス精神とかも」
エビスじいちゃん「う~んそうかのう」
お菓子を買わなければいけないという心理が働いてしまいお菓子を買おうにも
子どもたちだけでは価格が高じさせてしまっているのが常連の浜田の見解なのではと理貴は思っている。
お茶会を誘導し無料でお茶をお茶を提供したのはお菓子を購入した後だったためそう感じさせてしまったのかもしれない。
また飲み食いできるのは駄菓子屋内で購入したものだけと理貴が言ったのも余計に拍車をかけてしまっているはずだ。
エビスじいちゃん「なんでこうなるんじゃろうな~」
理貴「1つ言えるとしたら距離が近すぎなんじゃないかな?」
理貴「やってみたけどなんか結構隼人君にぐいぐいお菓子を勧めていた感じがしたけど」
エビスじいちゃん「あ~まさにそれじゃな!」
理貴「けど親父の目指している駄菓子屋を考えたらこれが一番なんだよね。」
理貴「ここは小さいからさ。」
スペースの問題についてどう解消するか模索中だがこの駄菓子屋エビスは比較的小さな店で
自然とお客さんとの距離が近くなってしまう。
そこがお菓子を買わなければいけないという心理を働かせてしまっているのだろう。
お菓子を購入しなくてもまずは駄菓子屋に来てもらえるような雰囲気作りが必要だ。
その問題を乗り越えた先にまた問題点も起こるだろう。
どんな問題点が起きるあらかじめ考えておくべきだ。
お茶会をすることは浜田家以外まだ誰も知らない。
隼人が広めてくれれば有難いし宣伝効果にもなりそうだ。
理貴「仮にさ、お菓子を買わなくてもお茶会に参加できて無料でお茶が飲めることを知ったら」
理貴「お茶を飲むだけでお菓子を買わない子ばかりが店に来てしまうこともあり得そうだけど」
理貴「そうなっちゃったらどうする?」
お茶が無料で飲めることに味を占めてお菓子を買わずお茶会目当てで来る子どもが増えるのではないかと理貴は懸念している。
エビスじいちゃん「そうか~どうなるかわからんがその子ら受け入れてみようかのう」
エビスじいちゃんはお茶会目当ての子どもも受け入れる方針だ。
理貴「お菓子を買ってくれる子と揉めなけきゃいいけどな」
エビスじいちゃん「そこは気をつけんとな」
お菓子を買う子とお茶だけを楽しむ子の間で不公平感がでないような仕組み作りも必要だ。
理貴「でもやっぱり利益に繋げないと」
エビスじいちゃん「うんそこじゃよな。なにかいいアイデアはないか?理貴」
理貴「なんにも浮かんでこないな~」
理貴「ずっと朝から駄菓子屋のことばかり考えていたから疲れたよ」
理貴「明日仕事だから玉井店長にアドバイスもらうよ」
エビスじいちゃん「それはいい考えじゃな」
ちなみに仕事仲間で「オリーブ」の現店長である玉井は今日理貴と同じく休みであった。
理貴は明日玉井からアドバイスを聞くそうだ。
エビスじいちゃん「明日は明日の風が吹くってもんじゃな。今日はゆっくり休むかのう」
いいアイデアが浮かんでこないなら下手に頭の中で絞らず誰かに助言をいただいたほうがいいはずだ。



明日の朝、理貴は仕事へ行った。
シフトは前(午前7時から午後15時)なので午前6時に家を出た。
そしてエビスじいちゃんが起床したのが午前8時である。
テレビをつけると子ども向けのアニメが放送されている。
気づけば今日は日曜日であった。
最近、駄菓子屋のことばかりなのでこの頃曜日の感覚がわからなくなっている。
明後日エビスじいちゃんは歯の治療がある。
いろいろやらなければいけないことがあって憂鬱である。
エビスじいちゃん「あ~火曜日は歯の治療じゃ~いやじゃ~」
チャンネルを切り替えようと思ったが現実逃避したいエビスじいちゃんはチャンネルを変えずリビングでアニメを見ていた。
また何かいいアイデアが浮かぶかもしれないと。
子どもたちとの会話のネタになるかもしれないと。
戦隊モノや魔法少女、カードゲームなどを題材にしたいろんなジャンルのアニメが放送されている。
エビスじいちゃん「隼人君はこういうのを見ているじゃろうな」
エビスじいちゃん「これを知っておくのもありかもしれんな」
午前10時過ぎぐらいになり家の玄関がインターホンが鳴った。
エビスじいちゃん「はい~」
すぐにテレビの電源を消して玄関に向かった。
玄関の戸を開けると来たのはなんと玉井の息子の颯太だった。
しかも友達を三人も連れてきている。
颯太の友達「こんにちは」
颯太「こんにちは、え~とすみません、もしかして今日お休みでしたか?」
エビスじいちゃん「あ~すまんすまん、今駄菓子屋開けるぞい!」
エビスじいちゃんは鹿が店内に突き破っていくかの勢いで駄菓子屋を営業を開始した。
突然ではあるが颯太たちの来店を歓迎した。
いつも客が来るのは午後からだったので午前中はのんびりしていてなにも準備していなかった。
颯太は2回目の来店となるが友達を連れてきている。
駄菓子屋に来店した経緯を聞いたら玉井の計らいだったらしい。
颯太「昨日父から1000円を渡されて」
颯太「お菓子とか買って支援してやれって言われました。」
エビスじいちゃん(いや~玉井助かるのう~)
エビスじいちゃん「え~たったの1000円か~ケチじゃなお前さんの親父は!」
お小遣いの事情でいろいろ文句はでるが玉井を心の中で感謝している。
颯太「そうっすよこれじゃゲームも買えないっス」
颯太もこの前、父と駄菓子屋に来ていたこともあって打ち解けたかのようにエビスじいちゃんと会話している。
それから自然に連れてきた友達を紹介した。
小松崎直紀、徳谷莉久、桑田樹(いつき)である。
全員桜林小学校の6年生である。
エビスじいちゃんは名前を覚えるため顧客リストに彼らの名前を書いてもらった。
莉久「なんだが店のおじいさんと仲いいみたいだな」
莉久はエビスじいちゃんと颯太の二人の会話を聞いてそう感じている。
颯太「この前、父ちゃんと一緒にここでお菓子を買いに来たんだけど」
颯太「この人が父ちゃんの働いているショッピングセンターAOZORAのオリーブの店長なんだよ」
颯太「客からよく健ちゃんって呼ばれているんだって」
樹「え?らっしゃい!らっしゃい言ってる?」
エビスじいちゃん「そうじゃ!!」
エビスじいちゃん「へいらっしゃい!らっしゃい!お野菜安いよ!」
樹「あ!!思い出した!よくオリーブで見かけました!」
直紀「この人か~」
おそらくこの地域の子どもたちは家族と「オリーブ」で買い物に行っていると思われるので
話を聞いてエビスじいちゃんが店長していたことを思い出すかもしれない。
それから駄菓子屋店内の様子を見る颯太たち。
颯太「なんか前と比べて配置が変わってますね。座布団も置いてある。」
他の友達は初見だが颯太は1回父と来ているため内装の変化に気づいている。
エビスじいちゃん「子どもたちがお菓子や飲み物を買って食べたり飲んだりわいわいするようなお茶会をしようかなと思っとるんじゃ
エビスじいちゃん「実は多分おぬしらと同じ学校かもしれんが1年生の隼人君が家族と一緒に来てお茶会みたいのをやったんじゃ」
エビスじいちゃん「その隼人君は昨日ので2回目になるんじゃが最初3年生の翔吉君がここを紹介してくれたんじゃよ」
颯太「翔吉君の紹介からならうち学校の生徒で合ってますよ」
昨日浜田家とお茶会を実践して、テーブルは台所に戻したが座布団は置いたままだった。
颯太たちに駄菓子屋で子どもたちを楽しませる企画を考えている旨を伝えた。
直紀「お茶会ですか、買ったお菓子をその場で食べられるってことはコンビニのイートインみたいな感じでしょうか?」
エビスじいちゃん「まあそんな感じじゃな」
エビスじいちゃん「この駄菓子屋を通じて子どもたちと交流を深める憩いの場にしたいんじゃ!」
樹「いいじゃないですか!応援してます!」
エビスじいちゃん「ありがとう!じゃがわしの理想の駄菓子屋を築くために協力してほしいんじゃ!」
樹「なるほどそういうことですか!わかりました」
莉久「できる限りことはしていこうかなと思います。」
颯太「まあ俺は父ちゃんから言われているんで」
颯太も友達も協力してくれそうだ。
昨日お茶会をしてみてそこからいろいろな課題が出てきた。
解決案を理貴と考えているがいいアイデアが浮かばない現状で
颯太たちの子どもながらの等身大的な考えや柔軟な発想に救いを求める。
エビスじいちゃん「どうじゃお菓子高くないか?」
お菓子の価格についての懸念がエビスじいちゃんの心の中にまでこびりついている。
まずはここの駄菓子屋のお菓子の価格設定は子どもたちの適正な価格として提供できているか颯太たちに伺うことにした。
颯太たちは店内のお菓子の価格帯を目をしかめ眺めている。
友達は初めてだし颯太もまだ2回目なのでお菓子の価格が高いか安いかは判断しかねる様子だが
子どもたちの目線からどのような意見が飛び交うのだろうか。

続く

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