駄菓子屋じいちゃんエビス

第13話 好きなように

※この小説にはプロモーションが含まれています。

駄菓子屋エビスに来店した本多親子。
大人のお客さんについて話し合っていたエビスじいちゃんと理貴だが
一本の電話により本多が協力してくれるそうで知り合いながら大人のお客さんの来店がかなった。
そして今、過去と未来が交差するこの駄菓子屋エビスに大人と子どものそれぞれの評価が下されようとしている。
子どもである翔吉の評価は品揃えが豊富になったと高評価を与えた。
翔吉にしか見えない駄菓子屋の改善や変化が実際に見えていて
3度目の来店ということもあって純粋な目線から見た評価である。
一方で翔吉の父である本多は初めての来店である。
大人の目線のみならず現役として小売業界の前線に立つ本多は駄菓子屋エビスにどのような評価を下すのだろうか


エビスじいちゃん「どうじゃ本多?」
駄菓子屋の内装やお菓子を眺めている本多を見つめてエビスじいちゃんは固唾を飲む。
どんな評価でも受ける覚悟であるが深い関係もあるためかなり踏み込んで言ってくるだろう。
かつての部下ではあるが上司が部下の前で頭を下げるのは少々情けないのかもしれない。
これを受けて商売魂を燃やす潤滑剤言わば糧とすべきである。
さらに鋼のメンタルにするべくエビスじいちゃんの胸のハートの色を光沢で艶のあるグレーに染めた。
ついに本多は口を開いた。
翔吉の父「おそらく子どもをメインターゲットにしていると思われますので」
翔吉の父「息子の目線から見た場合は及第点かもしれません。」
翔吉の父「昨日、準備中であったと聞いておりますのでそこを考慮すると流石元店長といったところでしょう。」
エビスじいちゃん「ほ…そうか」
本多から高評価を得られたということでほっと一安心したエビスじいちゃん。
事前から本多も息子の翔吉からこの駄菓子屋のことについて聞いていて把握している。
2回目まで子どもの目でもわかるほどの低評価を押されていたということも知っている。
それが今回子どもから高評価を押してくれたことだからそこが大きな進歩だと言える。
メインターゲット層を子どもとしているならばニーズにも応えることができている。
まずは昨日の夜から今日の午後までの短期間でこれほどのお菓子を揃えて装飾を整えていたという点も評価に値する。
翔吉の父「ですがもっとお菓子の種類や数を増やしておくべきでしょうね。」
エビスじいちゃん「まあそうじゃな」
いろいろ言いたそうだったがまずは品数についてもっと増やしてほしいとの指摘をした。
翔吉の父「でもスペースが問題ですよね。」
エビスじいちゃん「う~んそこじゃよ」
指摘するだけでなくエビスじいちゃんに寄り添い同じ視点となり課題点を見つめてくれた。
指摘について深堀してその要因となっているのがスペースの問題だ。
入口から石畳みが2畳ぐらいのスペースになっていてその先が襖がない開放的な和室の畳部屋になっていて6畳ぐらいのスペースになっている。
この2畳ぐらいの石畳みのスペースが客の立ち入り用になっていてそこから見て右側に2階へと上がる階段の裏側が見える
そして肝心のお菓子の陳列だが客の立ち入りスペースの両サイドにカラーボックスが置いてあってその中にお菓子が積まれている。
手前にも和室畳の上になるがカラーボックスが数台置いてあり同じようにお菓子が積まれている。
それと合わせて小さなテーブルも置いてあってその上にお菓子が置いてある。
左側は会計用スペースとなっていてお菓子を陳列するためのカラーボックスとテーブルは右側に寄せられている。
会計用スペースの隣がテーブルとなっているためこのような配置にすることで
客の立ち入り用スペースから畳に上がれる隙間が確保されている。



翔吉の父「なにかしら言わないといけないかなと思って品数について指摘しましたが」
翔吉の父「ここだけを切り取ってみれば種類も量も十分足りていると見えます。」
翔吉の父「奥のスペースを有効活用できたらなと思いまして…」
エビスじいちゃん「うむ。わかるこれをどうするかじゃな」
ここだけ切り取ればとは客の立ち入りスペースのことで子ども視点も合わせて品揃えは充実していると言えてしまう。
奥の6畳のスペースを持て余していて本多の視点から見るとハリボテ感が出てきてしまうのだ。
翔吉の父「昨日お菓子を買いだしてこの時点でこの置き方は妥当だと思います。」
翔吉の父「客と商品の距離は大事ですからね」
翔吉の父「もし下手に奥のスペースを使ってしまうと今度は客と商品との距離を遠ざけてしまい購買意欲を低下させる恐れがあります。」
翔吉の父「また入口(外)から商品が見えなくなってしまいます。」
翔吉の父「入ってやっと両隣にもお菓子があるのに気づきましたからね」
エビスじいちゃん「うむ、理貴と考えたかいがあったわい」
遠過ぎず近づき過ぎず展示品やサンプルのようにお客が手に取って確認できるような距離を保たなければいけない。
課題点として挙げられた空きスペースとお菓子の収納問題だが
無理にこれを意識してしまうと客と商品の間にちぐはぐ感を出してしまう恐れがある。
百歩譲って広く使って靴を脱いで畳の上に上がらせることもよしとしよう。
仮に客が駄菓子屋全体とお菓子が見たいがために靴を脱いで畳の上がってしまうと買わなければいけないという心理が働く。
商売人としては都合の良い状況が生まれやすいが印象がよくなければ次回その客に敬遠されてしまうだろう。
比較的小さな駄菓子屋であるが広く使わず敢えて狭くして客とお菓子を近づけさせる
構造上の問題を逆手に取った発想に目を見張るものがある。
昨晩エビスじいちゃんと理貴がお菓子の配置にいろいろ考えて深く悩んいたと思われるが
「オリーブ」での仕事の経験が生かされている。
エビスじいちゃんの商売魂は健全と見た。
また本人もお菓子の種類や量には満足していないそうである。
空いている奥のスペースを活用できればさらにこの駄菓子屋エビスは発展できそうだ。
翔吉の父「より大きな収納棚を使ってみたり問屋やネットなどを活用して安く多く仕入れて箱買いしてみたりするのもいいですね。」
翔吉の父「空いたスペースを在庫管理用にして今のような状態でも商品棚の後ろに置いておけば見た目も損なうこともありません。」
エビスじいちゃん「うむいい考えじゃな」
指摘だけじゃなく具体的な改善案を示してくれた。
特に活用できていないスペースを在庫に置くという案は参考になりそうである。
無い知恵を絞って理貴と編み出した商品の見出しを無理に改変しないように考えてくれたのも良い点であり
もっと種類と数を増やすべきといった意見も筋が通っている。
今はカラーボックスが商品棚の役割となっているがこの後ろに段ボールの状態のまま在庫として置いても見た目も損なわないというが
それだけでなくメリットもあり正面に立つ客は商品棚で在庫を隠すことができ
エビスじいちゃん側は横で在庫を確認にすることができる。
これにより例えばお客が商品の在庫の有無を確認するため声をかけてくれれば客とのコミュニケーションに繋がる。
翔吉「へえ~」
エビスじいちゃんと父の専門的な話をしているが翔吉はポカンと口を開いたまま聞いていて
時折頭の中で友達とプレイしているゲームの映像が流れていた。


エビスじいちゃん「さて本多や、お茶でも飲まぬか?」
翔吉の父「ありがとうございます。」
アドバイスをいただき一息ついたところでエビスじいちゃんは自分の家に招いてお茶を淹れるそうだ。
しかしその時、駄菓子屋にお客が二人来店してきた。
エビスじいちゃん「おお!玉井じゃないか!」
玉井「星川店長、本多さんお疲れ様です。」
翔吉の父「玉井店長お疲れ様です。」
エビスじいちゃん「玉井も仕事休みじゃったんか?」
玉井「いえ普通に仕事でした。」
玉井「理貴くんにここの住所を教えてもらいまして本多さんが子連れで来店すると聞きましたので私も真似てきました。」
玉井「息子の颯太です。」
颯太「よろしくお願いします。」
本日も玉井は通常通り勤務していたがこの時間帯に来店してきたということはシフトは前(午前7時から午後15時)である。
理貴のシフトが後(午後15時から午後23時)なので交代する形となりそこで話を聞いたことがきっかけとなったのだろう。
さらに玉井は本多が見習うように息子を連れてきたようだ。
その子の名前が颯太であり、桜林小学校の6年生である。
翔吉は颯太が来たことを知り慌てて頭を下げて縮こまった。
まさかの自分より学年が上で6年生という最高学年の子が来たことで翔吉は驚いている。
駄菓子屋紹介のためほかの学年に声をかけたいところだが上の学年に声をかけるのに抵抗があって翔吉たちは悩んでいた。
こちらが頑張らなくてもエビスじいちゃん自ら味方を引き付けているのがわかる。
エビスじいちゃんは仕事を通して多くの関わりを持っている。
父とエビスじいちゃんの話は難しくてわからなかったが思いもよらない巡り合わせに翔吉に強い印象に残る出来事となった。
玉井から颯太の父に変えてお互い挨拶を交わす。
翔吉の父「学校ではいつも翔吉がお世話になっております。」
颯太「いや~別にそんな面倒見ている訳じゃないんですけど」
颯太の父「いやいやこういうのは社交辞令ってやつなんだよ。」
そう言って玉井は息子の肩に手を置いた。
これが彼なりの子育てなのだろうとエビスじいちゃんは「オリーブ」の現店長である玉井の姿を見ていた。
社交辞令とは人間関係を円滑に進めるために使われるためのものである。
同じ学校内でも翔吉と颯太は違う学年も違い関わる時間も少なく距離感もあるはずだ。
だからこうして大人が翔吉と颯太の距離を縮めるために推し量っているのだ。
玉井が息子を連れてきたのは単なるお菓子を買うことだけでなく社会勉強の一環として連れてこさせたのだろう。
そしてこのように下の学年と繋がりを持たせるねらいでもあったはずだ。
エビスじいちゃん「ではお二人分もあわせてお茶を淹れてあげますかのう」
エビスじいちゃん「わしの家はこの後ろじゃ、案内するぞい」
一度駄菓子屋を出て反対側に回ると立派な瓦屋根の家が建っていた。
翔吉「エビスじいちゃんの家ってここだったの?」
駄菓子屋に来店するのが3回目である翔吉だったがエビスじいちゃんの実家がどこにあるのか今まで知らなかった。
家の表札に星川と書いてある。
颯太の父「立派な家ですね」
翔吉の父「流石星川店長のお家、威厳と風格がありますね~」
エビスじいちゃん「こらこらそんなこといってもつまらんものしか出せんぞい!」
エビスじいちゃんの実家にお邪魔する本多親子と玉井親子。
親子二人組は和室のリビングの座布団に座り台所でお茶を淹れてエビスじいちゃんの様子を見ていた。
颯太「あのおじいさんがよく父ちゃんが言っている星川店長なんだね」
颯太の父「今俺が店長の跡を継いでやっているんだけど大変なんだよ。」
翔吉の父「星川店長を支持している客がいっぱいいて店長のことだけで対応に負われてたこともあったんだよ。」
颯太の父「オリーブに戻ってきてほしいのが本音なんだ~」
翔吉の父「そうですな~」
玉井と本多の話を聞いてちょっと顔をしかめるが湯呑に茶を淹れて彼らに提供した。
エビスじいちゃん「まったく最近のお前さんらはそればっかり言いおって」
エビスじいちゃん「わしがおらなくたって立派に経営できておるのに」
エビスじいちゃん「もしかしておぬしらどさくさに紛れてわしを店長に戻そうとしておるな~」
翔吉の父「そんなまさか~」
颯太の父「バレちゃいましたか~」
ハハハハハっと笑いながら大人たちが冗談を交えて会話していて翔吉と颯太はそれぞれ父の意外な一面を見ることができた。
駄菓子屋を始めた理由を聞いてエビスじいちゃんの人柄を知れた颯太である。



お茶を飲んでちょっとしたらあと、また駄菓子屋に戻って改めて中の様子を確認する。
そしてこれから今後の駄菓子屋エビスについて議論することになる。
先に本多親子と話していたスペースの問題について玉井親子に共有させた。
本多の評価を聞いておおむね賛同したそうでスーパーマーケット「オリーブ」の現店長が太鼓判を押してくれたので一安心である。
颯太の父「現時点でやるべきことやできることを全てやってきたと思われますし」
颯太の父「忖度なしで厳しめに評価しても今はこれが正解と言わざるを得ません。」
限られたリソースの中で最大限に活用できているところが評価になっているが課題点も多くあるのも事実である。
空きスペースをどのように活用していくかだがまずは玉井の意見も聞きたい。
颯太の父「この前検討されたショーケースの件を視野に入れても畳ですので」
颯太の父「運んで移動する際は傷がつかないようにと水漏れにも注意しないといけませんね。」
エビスじいちゃん「そうじゃが電気代とかコストは気になって売れるのかもわからんくて保留にしておる」 エビスじいちゃん「時間が経ったら忘れてまた白紙に戻っているかもしれん」
前々から冷蔵ショーケースの設置について考えているが現実的ではないということで一旦保留にしている。
颯太「そもそも飲み物必要なの?」
颯太の父「必要かどうかは経営者の判断によるね」
翔吉「俺がジュースはないのかって言っちゃったんだよね…」
エビスじいちゃん「翔吉君が言ったのがきっかけにはなっておる。」
冷蔵ショーケースについて考えるきっかけになったのは翔吉の意見からではあるが
子どもをメインとしているからこそこの意見は無視できないものとなっているのだ。
保留の意向であるということは翔吉本人も理解している。
しかし翔吉と同じように他の子が指摘してくる可能性はなくないということだ。
開き直ってきっぱり飲み物はないと言っていいし、気さくに話せるエビスじいちゃんならやって退けることができるはずだ。
颯太の父「値段についてはどのような基準で設定していますか?」
今度はお菓子の価格設定の話になった。
値札を見ると平均で130円から140円ぐらいがであり一番やすくて50円ぐらいの価格のお菓子がある。
エビスじいちゃんはお菓子は昨日息子の理貴とコンビニを3店舗はしごして買い集めたといいレシートを取り出した。
レシートの記載されている値段から仕入れ値を見せて、合わせてネットでの価格を見ながら中間ぐらいの価格で決めたという。
それに対し本多と玉井はあまりよくない反応だった。
颯太の父「仮にこれが全部売れたとしても実際の仕入れ値を超えないと純粋な利益になりません。」
翔吉の父「私も同意見です。先ほど言いました通り問屋などを利用して安く大量に仕入れたほうがいいと思います。」
問屋とは製造業者と小売業者の中間に位置して商品の流通全般を担う業者のことである。
エビスじいちゃん「問屋か~考えておるが今は個人営業というか趣味でやっているみたいなところでちょっとやりにくいんじゃよ」
翔吉の父「あ~そうでしたね。問屋は利用しにくいかもですね。」
エビスじいちゃんが利用するのが難しいと言ったのは問屋はBtoB(企業間取引)であり、一般消費者向けではないからだ。
スーパーマーケット「オリーブ」は株式会社ススメグルメフーズが運営していてその会社が多くのメーカーと取引して商品を大量に仕入れているのだ。
過去にエビスじいちゃんは冷蔵ショーケースは余っていたら譲ってくれないかと店長である玉井に交渉したが会社の権限があり見送られたが
この会社の権限とは冷蔵ショーケースのメーカーが関与しているということだ。
颯太の父「問屋を利用したいなら起業して法人を設立するしかないですね。」
翔吉の父「株式会社エビスじいちゃんですかね?」
エビスじいちゃん「あ~からかうのはやめい!もうこの年じゃからそれする体力なんてないぞい!」
翔吉の父と颯太の父「ハハハハハ!」
年齢的にも起業して本格的に駄菓子屋を経営する体力はエビスじいちゃんにはないかもしれない。
颯太の父「開業届は提出したらどうですか?」
翔吉の父「それを提出して認めてもらえれば個人事業主でも問屋を利用できます。」
個人事業主でも開業届を提出し問屋から認めてもらえれば利用することが可能である。
駄菓子屋は個人事業主での経営がほとんどなのかもしれない。
ちょっとしたおふざけもあるが本多も玉井も駄菓子屋のことを真剣に考えていて
つまるところエビスじいちゃんが本格的に駄菓子屋を経営するかどうかが問題なのである。
颯太の父「一応検討はされているのですか?」
エビスじいちゃん「まだじゃ、今言われて気づいたばかりじゃ。」
エビスじいちゃん「会社を建てるとか流石に無理じゃが正式に店を開くことについては考えておくかのう」
エビスじいちゃん「それにはまず土台を整えておかんとな」
颯太の父「はい、まずは土台作りからですね。」
会社を建てるとまでは言わずとも正式に駄菓子屋を開くことは検討し始めている。
土台作りからというが今まで挙げられてきた課題をクリアしていくことである。
まずはデザイン性について、石畳の2畳スペースが客立ち入り用として、
その正面にお菓子を陳列させて客と商品の距離を近づけさせるスタイルが現在の完成形ではあるが後ろのスペースを持て余している。
持て余した6畳のスペースを活用して駄菓子屋らしいデザインにしていくかである。
前までここは木造2階建ての倉庫小屋だったがそれをリフォームして今に至るが2階には妻の恵美須の仏壇があってその名残があり。
亡き妻の思いによって建てられた駄菓子屋エビスは十分価値あるものであるが
第三者目線から見る駄菓子屋を建てたという意味とそれが利益となるのか今一度考えるべきなのかもしれない。


颯太の父「颯太どう思う。店長の駄菓子屋は?いい考えはあるか?」
颯太「え?」
大人の話を聞いていた颯太だが何言っているのかわからず置いてけぼりをくらっていただろうし
翔吉と同じく頭の中は違うことを考えていただろう。
子どもの意見も大事でそれを聞くべくまずは6年生である颯太の見解も聞きたいところである。
颯太の父「店長の駄菓子屋助けてやってくれないか?」
しかし颯太は腕を組んで下を向き体を揺らした。
颯太「う~んなんか面倒くさいな~」
颯太の父「ハハハ!こらこら何言ってんだよ~」
父は颯太の尻を軽く叩いた。
エビスじいちゃん「ハハハ!わしも同じ気持ちじゃ!実はわしも面倒くさいんじゃよ!」
多分颯太はエビスじいちゃんに寄り添っていったのではなく自分の本音で面倒くさいと言ったが
あれこれ駄菓子屋のことについて考えなければいけないエビスじいちゃんの気持ちを代弁している。
翔吉の父「うちの息子の翔吉と同じく近くに駄菓子屋があるのは子どもにとって嬉しいんじゃないかな?」
颯太「はい、近くに駄菓子屋があるのは嬉しいです。」
颯太「しかし近くにあるからって以外で敢えてここを選ぶって強みも必要じゃないかな?」
颯太の父「おーー!聞きましたか?店長!これは鋭い指摘ですよ!」
エビスじいちゃん「う~ん強みか~面倒くさいのう~」
颯太の父「ハハハ!」
エビスじいちゃん「ここの強みはなんじゃろうな~わかるかのう?翔吉君やい」
翔吉「え?俺っすか?」
面倒くさいと本音が出てしまったのか翔吉に救いを求めている。
さて今度は翔吉の見解を聞きたいところである。
学校の通学路の範囲内にあって利便性がるのは強みになるし駄菓子屋があるというだけでも子ども嬉しいが
颯太が言うように敢えてこの駄菓子屋を選ぶという理由や他の強みもほしい。
翔吉「父ちゃんが聞いたけど気前のよさかな?」
翔吉「2回目行ったとき、友達と下の子を呼んで十人くらいでここ来たんだけど1000円しか持ってなかったんだけど」
翔吉「エビスじいちゃんが1000円でまとめて全員分のお菓子を買っていいって言ってくれたし飲み物も奢ってくれたんだ。」
翔吉の父「そうだな」
夜、翔吉が父とエビスじいちゃんのことについて話していた時のことをそのまま話した。
それ聞いた玉井は笑いながら頭に手を乗せた。
颯太の父「仕事がうまくいかなくて悩んでいた時、星川店長が支えてくれましたね。」
颯太の父「焼肉をごちそうしてもらった時のことまだ覚えております。」
エビスじいちゃん「そうか、なら玉井もわしに恩返ししてやらんとな」
颯太の父「いや~ハードルが高いな~」
気前のよさという言葉に深く共感を持ったようだ。
エビスじいちゃんのサービス精神旺盛なところがきっと子どもたちのハートを掴んでいそうである。
ある意味これが強みなのかもしれない。
颯太の父「なんだが思うに星川店長の好きなようにやったほうがいいかなと思います。」
颯太の父「売れるか売れないかに関わらずどんな駄菓子屋にしていくかですね」
エビスじいちゃん「好きなようにか…」
翔吉の父「私も星川店長の自由にやっていいかもしれませんね」
やるべきことがあって大変だし、思いついたら思いついた分だけやらなきゃいけないことが増えてしまう。
いくつかアドバイスをしたが結論を言うとエビスじいちゃんの好きなようにやるの一番ということだ。
大企業が運営していて全国に店舗を広げているスーパーマーケット「オリーブ」で
エビスじいちゃんは店長を務め玉井や本多など数多くの部下を育て一時代を築いた一人でもあり小売業界の前線で戦ってきたのだ。
この駄菓子屋エビスがエビスじいちゃんの第2の人生そのものである。
どんな形でも息子の理貴もみんなも受け入れてくれるだろうが
できれば最後まで悔いのないように頑張ってほしいし、周りも時間を惜しまずきっとサポートしてくれるはずだ。


翔吉の父「じゃあ翔吉、なんでもお菓子を買っていいぞ!」
翔吉「よっしゃ!」
颯太の父「颯太もお菓子を買ってやろう」
颯太「お、俺はいいよ翔吉君にあげて」
颯太の父「そうだな。6年生だから下の学年の子にかっこいいとか見せないとな」
翔吉「いいの?」
颯太「うん」
翔吉の父「ありがとう颯太君」
エビスじいちゃん「颯太君もいい子じゃのう~」
きっとこれで翔吉と颯太の距離が縮まったはずだ。
エビスじいちゃん(そうじゃこれがわしが思い描いた駄菓子屋なのかもしれん!)
駄菓子屋を建てた意味とどのような駄菓子屋にしていくかという答えが鮮明に見えてきている。
思い浮かんできたが今は心にとめてまとまったら後ほど公表していくだろう。
翔吉の父「玉井店長、私の家庭はお小遣い制なんですよ」
颯太の父「そうですか。実は私、妻に内緒でへそくり貯めているんですよ」
エビスじいちゃん「ほほ~おもしろいのう~んで使い道は?」
颯太の父「ゴルフがやりたくてゴルフクラブセットを買おうかなと思っています。」
翔吉の父「奥様にバレてしまうのでは?」
颯太の父「はい、置くところをどうするか考えているのですが困っているんです」
エビスじいちゃん「じゃったらわしが預かってやるぞい」
颯太の父「それは助かりますね。」
これから玉井は元店長であるエビスじいちゃんと長い付き合いになりそうだ。
多めにお菓子を買っていただいきなんと売り上げは過去最高の5000円である。
お菓子を買うという形ではあるがそれに付随してエビスじいちゃんの駄菓子屋の成功を願う資金提供となっている。
エビスじいちゃん「また来てくれ~ありがとう~!」
翔吉「はい!」
翔吉の父「お疲れさまでした店長!」
颯太の父「また次の機会にお会いしましょう!」
颯太「ありがとうございました!」
こうして本多親子と玉井親子は駄菓子屋エビスを後にするのであった。

続く

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